「村田エフェンディ滞土録」 梨木香歩
村田エフェンディ滞土録 梨木香歩 角川文庫 2007.5. |
単行本が出たときから読んでみたいなぁと思っていた作品です。以前は梨木作品はどちらかというと苦手だったんですが、「家守綺譚」が面白かったので、最近は気になる作家の1人です。
舞台は1899年のトルコ、スタンブール。主人公の村田はトルコ政府からの招聘でトルコの文化を学ぶために留学してきた青年。下宿先のイギリス人ディクソン夫人の家には下宿仲間のドイツ人やギリシア人の青年たち、トルコ人の使用人、そして、いつも絶妙なタイミングで言葉を発する鸚鵡といった愉快な仲間たちが一緒に暮らしている。主人公村田の異文化交流と、トルコでの少し不思議な体験の日々をつづる物語。ちなみに、エフェンディはトルコ語で学問を修める人のことを指す言葉とのこと。
これまた非常に面白い1冊でした。
読んでいるときから、作品の雰囲気が「家守~」に似てるなぁと思ったんですけど、最後まで読んでなるほど納得、同じ世界の話でした。で、改めて「家守~」を見てみると、そちらのほうにも、トルコに留学中の友人の村田君というのが登場してるじゃないですか。こういう物語のリンクは面白いですねー。
トルコの滞在記という内容になんですが、この作品の面白さはやはり、村田氏が遭遇するちょっと不思議なできごとの数々です。「家守~」のトルコ版でもいった感じで、どこか優しく、暖かい雰囲気のする不思議体験が、淡々となりがちな滞在記にほどよい刺激を与えてくれてました。
また、トルコという舞台と各国から集まっている登場人物たちの会話から、異文化交流、20世紀前夜の世界、遺跡発掘の楽しみ、宗教観の違いなど様々なテーマが小気味好く語られて、非常に読みやすい小説ではあるものの、色々と考えさせる部分も多くて、良い意味で「お子様ランチ」的に色々と楽しめる作品でした。
あと、なんと言っても、この作品のベストキャラクターは鸚鵡。数種類しか言葉のパターンがないのにもかかわらず、その絶妙な発話のタイミングの良さで常に物語を盛り立てていました。時にはクスリと笑わせてくれ、時には、意味深な発言をズバっと言い、そして、ここぞという場面で感動を呼ぶ鸚鵡がとにかく良い!!
そんなわけで、非常に大満足の作品でした♪
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コメント
こんばんは。
先日はこの作品のお勧め、ありがとうございました。
もう1冊、この梨木さんの作品を読みたいと思っていたので、
迷わずこれにして、大正解でした。
仰る通り、『家守綺譚』の土耳古版姉妹編。
いろんな題材が、ちょうどいいバランスで盛り込まれていて、
とても楽しめる1作でした。
『家守~』では犬が、こちらでは鸚鵡がいい役どころに納まっていて、
そのあたりの匙加減もまたまたいい具合で、大満足です。
ただ、終盤は予想しなかった展開でした。
いずれ、京都の綿貫が登場するとは思ったけれど、
あんなふうに収束するとは思わず、最終章は涙ぼろぼろでした。
やはり、『西の魔女~』はお口に合わなかったですか。
わたしも最初はあの語り口調に蹴躓いた感じでしたが、
大昔、女の子だったこともあるからか、次第に気にならなくなり、
登場する植物を楽しみ、祖母の目線で主人公を見守る感じでした。
『家守綺譚』とこの『村田~』にTBも何度か送ったのですが、
どうやら反映されないようでごめんなさい。
またお邪魔しますね。
投稿: 悠雅 | 2008年4月24日 (木) 19時03分
>悠雅さん
TB&コメントどうもありがとうございます。
オススメした本を気に入っていただけたようで
こちらも嬉しいです。
自分ははじめ、姉妹版とは露知らずに読み始めたので、
(村田君の存在さえ忘れてました・・・)
それが明らかになったときはなんとも嬉しい気分になりました。
そうなんですよね。
終盤は時代背景から思わぬ展開になり
単なる旅行記風の小説では終わらない作品でした。
『西の魔女』は残念ながら
読み通せませんでしたね。
映画化が決まり、それを見てもやはり
面白そうな話だなと思ってしまうので、
機会があれば再チャレンジしてみたいと思います。
投稿: ANDRE | 2008年4月25日 (金) 01時31分