映画「灯台守の恋」
l'equipier 2004年 フランス |
以前に劇場で公開されていて、気になっていた作品が近頃ようやくDVD化したので見てみました。見事なまでに、フランスフランスしたハリウッド映画には見られないテイストの作品でしたねー。
両親が亡くなり、ブルターニュ地方の小さな島にある実家を売りに出すことにしたカミーユ。買い手が決まった知らせを受け、島を訪れた彼女は、実家の郵便受けに入っていた手紙の中に1冊の本を見つける。表紙に描かれた灯台がかつて父が灯台守をしていた島の灯台とよく似ていることから興味を持ったカミーユはその本を読み始めるのだが・・・。
舞台は1963年。灯台守のリーダー的存在のイヴォンが妻や村人たちとともに、一緒に灯台守をしてきた義父の葬儀を終え集まっているところに、新たな灯台守の男がやってくる。新しく灯台守として派遣されたアントワーヌは、アルジェリアでの戦争で負傷した帰還兵。閉鎖的な小さな島の住人たちは、よそものに厳しく、アントワーヌもなかなか村人に受け入れてもらえなかったのだが、ともに灯台守でペアを組むことになったイヴォンは彼の人柄を認め、次第に心を開いていく。そんな中、アントワーヌは、美しいイヴォンの妻に心惹かれるようになって・・・。
と、書くと、単なる3角関係映画かよ!という感じなんですが、いや、実際、それ以上のストーリーはないんですけど、この映画、かなりの秀作だと思いました。見せ方が上手い!静かに淡々と見せていく心理描写、無駄のない小物使い、そして、迫力ある灯台のシーンと、見所の多い作品でした。
この作品でまず一番印象に残ったのは、なんといっても、灯台守の仕事の過酷さを描く場面。この作品に出てくる灯台は、海の真ん中に立っていて、船で移動するのだけれど、周りを海に囲まれているので、暴風雨がこようものなら、その影響はかなりもの。さらに、灯台での仕事の内容なども、丁寧に描かれていて、これまで知らなかった世界を知ることができるという面白さのある映画でした。
そして、やっぱりこの映画の魅力は、心理描写の巧さ。2人が恋に落ちる様子を視線だけで描く。無駄な台詞が一切ない。1つ1つの場面の、登場人物たちの表情、小さな小物のやりとり、何気なく映す映像、自然描写など「台詞」以外の要素が静かながらにとても饒舌な作品で、ささいな映像から、登場人物たちの心情がひしひしと伝わってきて、どの場面も非常に見ごたえがある作品でした。
クライマックスの場面なんて、台詞で語られる部分はほとんどないのに、もはや灯台と自然描写、そしてわずかな人物描写だけで全てが語られるような緊張感がすごいのさ。なんかハラハラしちゃいましたよ。
そんなわけで、映像使いが非常に巧くて、「映画」として非常によくできているなぁという印象です。余計なおしゃべりが多いハリウッド映画とは一線を画す、ヨーロッパ映画ならではの魅力を感じさせる作品でした。
あと、人物設定も良かったなぁ。アントワーヌの過去の重さとか、イヴォンの性格とか、随所に深みがあった。
ストーリー的なことで、ふと思ったんだけど、(ネタバレあるので反転させてどうぞ)今さら本を送ってきて彼は一体何をしようと思ったのか?とちょっと思ってしまいました。2人が亡くなったということは恐らく知らないだろうし・・・。
まぁ、そんなことを疑問に思いつつも、映画全体としては、かなりよかったなぁと思います。主要人物たちの俳優さんが皆、味わい深い美男美女だったし。
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