「ヴェニスの商人」 シェイクスピア
ヴェニスの商人 W・シェイクスピア W・Shakespeare 光文社古典新訳文庫 2007.6. |
シェイクスピア好きと公言しているものの、実は今まで読んだことのなかった戯曲。こんなに有名作なのにね。子供頃ラムの「シェイクスピア物語」を読んだときに、あまり面白いと思わなかった印象が強くてそのままきてしまった感じです。
今回、古典新訳文庫で刊行されたので、ちょうど良い機会だと思い読んでみました。ところで、古典新訳文庫は非常に良い企画だと思ってるんですけど、この作品、なんと、本に挟まってるしおりに人物紹介が印刷されていました。戯曲って名前が覚えられなくて、久々に誰かが登場するとその都度冒頭ページの人物紹介を見ることが多いので、この仕様は非常に読者に優しいと思います。ますます好感度アップ。
さてでは作品紹介。
舞台はヴェニス。バサーニオは皆が憧れている富豪の娘ポーシャとの結婚を考え、友人の商人アントーニオに金を借りようとする。アントーニオの財産をのせた船は現在航海中だったのだが、友人のために彼はユダヤ人の高利貸しシャイロックのもとに行き、金を借りることになる。そこで、アントーニオは期日までに返済をしなければ、シャイロックに自らの肉を1ポンド与えるという取り決めを交わす。そんな中、アントーニオの財産をのせた船が難破したという知らせが届き・・・。という物語。
有名な話なので、今さら感もありますが、メインのストーリーと平行して、バサーニオたちの恋の物語も描かれていきます。
うーん、やっぱりこの作品、あまり良い印象じゃないんだよね・・・。
シャイロックがあまりにも可哀想。これに尽きます。そりゃ、評判の悪い男だったかもしれないけれど、ここまでみんなして寄ってたかって懲らしめなくても・・・。と思ってしまうんですよね。挙句の果てには娘にまでやりこめられてしまう姿は、「悪者が懲らしめられて痛快!」という域を越して、気の毒にさえなってしまうんですよね・・・。時代的な感覚の違いなんだろうなぁ。
裁判のシーンは確かに面白いんだけど、単に面白いだけじゃなくて、妙なしこりが残ります。
あとヒロイン的存在のポーシャ、結構、嫌な人な気が・・・。モテモテだけど、あんまり性格よくないんじゃないの!?とか思ってしまったり。そして、シェイクスピアおなじみの男装キャラだったことにビックリ。
この作品、「夏の夜の夢」と同時期に書かれてるんですけど、終盤のロマンチックな場面で、シスビーとピラマスの話が出てきて、普通に笑っちゃいました。これは反則技だろ、シェイクスピアさん。
と、なんかあまり良い印象のことを書けなかったんですが、割と楽しんで読めたのも事実。これで、原作を先に読んでからにしようと思って今まで見ていなかった映画版も観ることができるので、楽しみです♪
安西訳シェイクスピアは無難な印象ですが、詳しい解説ついでる一方で注とかがほとんどないので、やや不親切かなぁ。ちくまの松岡訳や岩波の野島訳は注が豊富だからね。
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