映画「コルドロン」
the blck cauldron 1985年 アメリカ |
極めてマイナーなディズニー作品です。日本ではTDLの「シンデレラ城ミステリツアー」のベースになった作品にも関わらず、このマイナーっぷり。以前からどんな作品なのか気になってました。
舞台はイギリス。主人公ターランは師匠ダルベンのもとで働きながら、いつか勇者として戦うことを夢みている。そんな折、ターランはダルベンの飼っている豚のヘン・ウェンに、魔法の力があり、悪の王ホーンド・キングがその力を利用し、伝説の釜コルドロンを探していることを知る。それを使うと、死者たちを不死身の兵士として蘇らせることができるのだ。師匠からヘン・ウェンを守るように言われたターランだが、そこにホーンド・キングの魔の手がのびて・・・。という物語。やがて、出会う勝気な姫や吟遊詩人、妖精たちとともに旅に出て、悪の野望を阻止するというRPG風ファンタジー。
うーん、人気がない理由はずばり、「暗い」、「怖い」、「不気味」だからでしょう。だってディズニーなのにアメリカではPG指定で子供に見せるときには注意しろといわれてるくらいですから。大量の骸骨が出てくるし、画面ひたすらどんよりした暗い色彩だし。
しかも、雰囲気だけではなく、テーマに自己犠牲までつめてくるストーリーの暗さまで。あげくのはてに、このストーリー、かなりの長編原作を90分に詰め込んだためと思われ、非常に内容が薄い。
ま、でも、そこまで悪い作品でもない気がしましたけどね。惜しむらくは、ティム・バートンがディズニー時代にこの作品のコンセプト作りに参加していたものの、あまりにディズニーカラーじゃないからボツにされてしまったこと。どうせ失敗作だったんだし、結局、こんな不気味な作品なんだから、バートン案を採用すればもっとカルト人気が出ただろうになぁと。
<ここが微妙だコルドロン>
・タイトル
コルドロンって、映画の中でもずっと「コルドロン」て字幕が使われてるんだけどさ、固有名詞じゃなくて「大釜」って意味なんだよね。なので原題は「黒い釜」。それを、日本人になじみのない単語だからってことで、カタカナをそのまま固有名詞的に使うのはちょっと・・・。
・主人公
これは微妙ともとれるし、良いともとれるんだけど、主人公がひたすら普通の少年なんだよね。何もしない。ていうか、できない。単に流されてるだけなんです。魔法の剣を手に入れても、使いこなせないし。ここで、「普通の少年が大冒険!」というのを感じさせてくれればいいんだけど、それにしても活躍しないので、主人公としての役割が・・・。
ちなみに他の旅の仲間も、持ってる能力が微妙・・・。結局、君らは一体何をしたの?っていう。全く目立たない姫も・・・。
・ストーリー
上記のキャラクタの微妙さの最大の原因はこれ。原作はかなり長大なファンタジーらしいのに、90分でまとめるんだからね。それなのにエピソードつめこみすぎだし、キャラクター多いし。3部作とかにしてじっくり作れば良かったのに。むしろ、アニメじゃなくて実写化とかね。あ、これ、今ちょうどファンジターブームなんだから、ディズニーさん、実写で再映画化してみればいいんじゃない?
あと上記の自己犠牲の扱いが中途半端。やっぱりD社の限界かな。ふっきれなかったんだろうなぁと。まぁ、ふっきれたらそれこそ暗い作品なんだけど。
・対象年齢不明
とにかくオドロオドロしい画面ばかりで、悪役の造詣も不気味なだけだし、釜から血が流れるしで、子供がみたら怖いだけだと思うんですよね。実際、これを幼少の頃に見てトラウマになったという話を聞いたことあるし。さらに、中盤に出てくる魔女も微妙に子供向きじゃないお色気(?)ギリギリの展開。だからといって、全体のストーリーが大人向きなわけじゃない。結局、どの年齢が見てもそこまでのめりこめない。中学生くらいが見ると面白いのかなぁ。
・シンデレラ城は一体・・・
ミステリーツアーの元ネタだったので、最後の大きな釜も出てくるし、みんなの憧れだった魔法の剣も出てくるんだけど、あのアトラクションは都合よく作ってて、映画のストーリーと全く違う。TDLのオープンがこの作品の公開と同時期だったからできたアトラクションなんだろうけど、アトラクションのクライマックスを映画と変えるのはどうなのかなと。アトラクションから期待して映画を見ると、がっかりもいいところだっただろうなぁと。そして、あのメダルほしかったなぁと。あ、最後は個人的な思い出ね。
<ここが良かったよコルドロン>
・暗さ、怖さ、不気味さ
「ディズニー」ブランドの中にあってこういう冒険をするのは大歓迎。この勇気は買うべきでしょう。大体、皆さん、ディズニーに夢と魔法のレッテルを貼ってますけど、意外とブラックな方向の作品もあるわけで、その辺の誤解がいつも気になるわけです。
そして、この作品の妥協しない不気味さは、やはりディズニーのプロ意識が生み出した産物なんだろうと思うわけです。10年の歳月と莫大な予算をつぎこんで、こういう大冒険をして、失敗するところに、当時の、いかあに低迷から脱却するかという意気込みさえ感じます。「リトルマーメイド」がヒットしてよかったね!
ディズニーはミュージカルアニメ路線を外れるとヒットしないんだということに早く気づくべきでしょ。今もそうだし。
・ファタンジー
当時も実は「ネバーエンディングストーリー」や「ラビリンス」がヒットしたりして、ファンタジーブームだったんだろうけど、この作品のファンタジーっぷりは割と、近年の人気映画に近い傾向だと思うんだよね。そして、この路線のファタンジー(英国系とでもいいますか)はディズニーでは意外と珍しい。他には「王様の剣」くらいじゃない?
・映像
荒いとか美しくないとか聞くけど、暗いだけであって映像としてはそこまで悪くない気がする。当時のディズニーはこの画風だよね。主人公達のタッチがやや安っぽいアニメの雰囲気ではあるものの、やはりあの不気味さの表現はうまいなぁと思うわけです。
あんま良いところが良いところっぽくないけど、でも不人気の理由も分かるけど、そこまで駄作というわけでもない気がします。なんども言うけど惜しむらくはティム・バートン案をボツにしたことだろうなぁ。
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