「ぼくは悪党になりたい」 笹生陽子
ぼくは悪党になりたい 笹生陽子 角川文庫 2007.6. |
上質のヤングアダルト作品を多数発表している笹生さんの作品が文庫化ということで、早速購入。以前読んだ「楽園の作り方」が面白かったので、結構期待大でした。
主人公の高校生エイジはシングルマザーの母親と利の離れた父親の違う弟との3人暮らし。母が仕事で海外に長期出張することが多く、家事全般を任される日々。そんなある日、いつも通りに母が出張で家をあけ、エイジも明日から修学旅行に行くという時に、弟が病気で倒れてしまう。困ったエイジは母の電話帳を開き、その中にあった近くに住む男に電話をかけ、事情を説明し、きてもらうことになったのだが・・・。
エイジの家庭の物語とともに、イケメンでモテる親友の羊谷や羊谷のイケイケの恋人アヤらとの関係が描かれ、身の回りにいる自由人たちに振り回され続け、気づけばいつも貧乏くじをひいてしまうという良い子の殻を破ることができないエイジのモヤモヤした思いが描かれていく。
笹生作品だったら「楽園の作り方」のほうが好きかなぁ。今回も面白かったんだけど、自分の青春とはかけ離れてたからなぁ・・・。
うーん、エイジくん、自分らしさに気づくのがちょっと遅かったね。て感じでしょうか。もっと周りに彼のことを気にかけてくれる人がいれば良いのになぁと思ってしまうくらいに、頼る人がいなくて、そのせいで、自分の中で勝手に考えだけが空回りして、ドツボにはまってしまった感じ。終盤は、オイオイ、がんばれよ~と応援したくなっちゃいました。
あと、親友の羊谷くん。この物語において何よりも衝撃の展開は彼ですよ!コイツは驚いた。
そんなわけで、17歳、みんなたくさん悩んで生きてるんだね。
ちょっと悪くなってみようなんて思っちゃうんだね。
という青春物語でした。
この手の作品、自分が学生時代にチョイ悪な世界に全く持って憧れなんてなかったので、どうも最終的な部分で共感しかねるんですよねぇ。自分は自分、マイペースに生きてたので。エイジくん、流されちゃだめだよ~。その点、羊谷くんのマイペースっぷりは凄かったけどね。
あと、これまでの笹生作品の主人公は、ちょっと斜にかまえて世の中を見るような少年が多かったんだけど、今回は、どちらかというと、上から目線ができなくて、いつもいつも損をしてしまうような少年の話だったのでちょっと新鮮でした。
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