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2007年7月17日 (火)

「グラスホッパー」 伊坂幸太郎

グラスホッパー

伊坂幸太郎

角川文庫 2007.6.

伊坂作品が2ヶ月連続で文庫化ってのは文庫で追いかけてる読者としては嬉しいですねー。そんなわけでさっそく読んでみましたよー。

物語は鈴木、鯨、蝉の3人の視点で書かれたものが交互に現れながら展開していくという伊坂作品ではおなじみの形式。妻を事故で亡くした鈴木は、復讐を企て轢き逃げ犯の寺原の父親が経営する「令嬢」と呼ばれる会社に就職。ところがそんなある日、鈴木は自分の目の前で復讐相手の寺原が事故に会う現場に遭遇する。寺原の事故は「押し屋」と呼ばれる男による他殺だということになり、鈴木は現場から逃げ去った一人の男の後を追う。やがて、自殺をさせる殺し屋の鯨と非情でクールな殺し屋の蝉もまた、この事件に巻き込まれ、3人の物語が一点に向かって走り出すという物語。

殺し屋達が活躍する物語というのがコンセプトのようで、様々なタイプの殺し屋が登場するのがなかなか面白い作品です。登場人物たちの粋な台詞に彩られたいつもの伊坂節も健在だし、最後までグイグイと読ませるエンターテイメント性もさすが!でも、これまでの作品と比べるとちょっとぱっとしない印象かなぁ。殺し屋ってことで人がたくさん死ぬしなぁ。

殺し屋たちがそれぞれに個性的で、味わい深くて、饒舌なところが伊坂ファンには嬉しいところ。ただ、鯨のとある設定がくどい印象があったのと、物語の展開に都合よく使われすぎてるような印象もあったかなぁと。

物語としてはやはり、鈴木の視点が一番面白くて、読みながら一緒になってハラハラドキドキできて、非常に楽しめたなぁと思います。逆に他の2人のストーリーはちょっと精神的に重い内容なんですよね。殺し屋だし。鈴木の物語に比べて、残り2人の視点の物語にそこまではまれなかったので、全体的にはちょっとぱっとしなかったのかも。

どうやら伊坂氏の作品には過度の期待をかけすぎる傾向にあるようなので、ぱっとしない印象ではあったんですが、普通に標準以上の面白さは十分すぎるほどにあった作品だと思います。一部の重い雰囲気や、非情さとは裏腹に、爽やかな読後感のあるラストシーンは良かったし。

ちなみに、僕は朝食のバイキングで結構山盛りにしちゃう派です。

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コメント

>非情さとは裏腹に、爽やかな読後感のあるラストシーン
私は全く逆で、ラスト一行が非常に怖かったんです……
電車はいつまでたっても通り過ぎなかったんだよね?

初期の伊坂さんの作品て、「敵」とか「悪」とかいう存在を抜けて、嫌悪感を感じる「毒」にあたる存在や現象を必ず仕込んでくる印象があったんですが、この作品はそれが最も出てた感があるです。で、そこで突き抜けたのか、その後の「死神の精度」からはその「毒」が割と抜けるんだよね。「砂漠」なんて青春モノです、完全に。

投稿: | 2007年8月 5日 (日) 03時36分

>名無し様

コメントどうもありがとうございます。

単行本と文庫、どちらで読まれましたか?
このコメントを読んで、気になったので、さきほど
書店にて単行本を立ち読みしてきたところ、
ラストシーンの加筆修正が結構多かったですね。
単行本版のほうが、ラストに重さを引きずってる印象でした。

逆に文庫版では、ラストシーンから
それまでの出来事に関与するキーワードをごっそりとカットしてる印象で
新しいスタートというのをもっと強調してる印象です。

どちらにせよ、電車がずっと走ってるのは一緒ですが・・・。

恐らく電車が通り過ぎたあとは、快速電車が来てしまって
結局、子供達の姿を再び見ることはないのだとは思うのですが、
それでも、「劇団」の子供達の素の部分を確信できる
ラストシーンはそれまでにない爽やかさを感じました。

まぁ、そんな鈴木や僕に対して向けられた言葉が
「バッカジャナイノー」なのかもしれないんですが・・・。


投稿: ANDRE | 2007年8月 5日 (日) 21時46分

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