映画「善き人のためのソナタ」
das leben der anderen 2006年 ドイツ |
今年のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した作品です。近年、ドイツ映画がかなり好きなので、今回もかなり期待しつつ観てみました。
1980年代前半。社会主義体制をとる東ドイツでは国家保安省シュタージが職員による監視や、一般密告者たちの情報のもとで、思想や人民の活動を厳しく統率していた。シュタージの職員である主人公ヴィースラー大尉は、ある日、劇作家ドライマンを監視することになり、彼のアパートの盗聴を始める。ドライマンとその恋人である女優のクリスタの監視を続けるうちに、次第にヴィースラー大尉の心境に変化が訪れ・・・。という物語。
邦題の「善き人のためのソナタ」は作中に登場するピアノ曲のタイトルで、この作品でもかなりキーになっているんですが、予告を見て、勝手に、この曲が何度も印象的に使われるものだとばかり思ってたんですが、劇中で流れるのは1回だけなんですね。でも、下手に押し売りするんじゃなくて、その1回がとても深く使われてましたね。それを含めて、全体にとても丁寧な映画だったように思います。
扱っている題材からして、「面白い」という感想はもてない作品ですが、「良い作品」であることには間違いないです。わずか20年ちょっと前のドイツでまだこんなことが行われていたというのが、分かってはいても衝撃です。ドイツ映画の面白さは、ドイツの持つ近代史の重みが反映されてるんだろうね。
あとは、上記ストーリーの作品をハリウッドで映画化したらそれこそ、ドラマチックなエピソードを畳み掛けるように持ってきて、タイトルのソナタもこれみよがしに使うんだろうけど、この作品はやはりヨーロッパ映画、落ち着いた静かな演出が、主人公達の心情を静かに、だけど、的確にとらえて、絶妙の緊張感を生んでいたように思います。
わずか20年前かぁ。人類の歴史なんてそんなものか。
てのを強く感じる映画です。そしてこれに似たようなことをしている国が今もまだ存在している。自分は育つときに学校で人権の大切さなどを散々社会科の授業で習ったんですが、それとは全く違う価値観の国家体制の存在を改めて強く認識できる作品でもありました。
あとは、自分が同じ立場になったとき、果たして、どのような行動をとるのだろうかなんてことも考えながら見るのも面白いですね。
この映画、ラストがさりげないんだけど、とても良い。2時間、ずーっと重いんだけど、最後の最後の台詞がそれまでの重さをすーっと晴らして、とてもすがすがしい気分にさせてくれました。もうね、あまりの絶妙さに、ムムムとうなっちゃうくらいですよ。
こういう余韻が素晴らしい映画って良いですよね☆
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コメント
こんにちは。
お邪魔するのがまた遅くなってしまいました。
仰るように、ホントにホントに「いい作品」でした。
この作品を言い表わす言葉を探すのですが、
それ以外にどうしても思いつかないことが歯痒いです。
最後の台詞と表情に、張り詰めた緊張が解かれ、
同時に深い余韻を受け取った感じ。
今年もいろいろ印象的な映画を観ましたが、
わたしの中ではこれはかなりの高得点です。
1984年というと、わが息子の生まれた年。
ドイツとはその当時、こんな国だったことなど何も知らずに、
赤ん坊相手に暮らしていたな…と
20年という年月の流れと、その意味をあれこれ考えます。
投稿: 悠雅 | 2007年9月 6日 (木) 11時48分
>悠雅さん
TBとコメントどうもありがとうございます!!
本当に、上手く言葉では表現できない歯痒さがありますよね。
間違いなく言えるのは「良い作品」だってことなんですが。
言葉では表せないようなものをここまで表現してくれるところに
映画の魅力があるなぁと思います。
ドイツというと、ヨーロッパでも割りと身近なイメージがありますが
そこでさえ20年前にはまだまだあのような状況があったというのが
色々と考えさせられてしまいますね。
ドイツ映画、
掘り出し物が非常に多いので、是非是非色々とご覧になられることを
オススメしますよ!!!!
投稿: ANDRE | 2007年9月 8日 (土) 01時09分