映画「インド夜想曲」
nocturne Indien 1988年 フランス |
かなり前に読んだアントニオ・タブッキの原作がかなり良かった記憶のある作品。その映画版であるこの作品も割りと良い評判をよく聞くので以前から気になっていた1本です。確かに原作の雰囲気を壊すことなく見事に映像化していましたねー。
主人公ロシニョルはインドで消息をたった友人グザヴィエを探しにボンベイにやってくる。唯一の手がかりである1通の手紙を足がかりに、彼の足跡を辿りながら、ボンベイ→マドラス→ゴアとインドを巡る主人公は様々な人々と出会い、語る。その対話の中で、自らのアイデンティティと向き合っていく主人公の姿を描くロードムービー。
うん、原作よりも、「対話」が濃くなってて、そこに、「インド」を生で感じられる映像の数々が挿入されて、これはなかなか面白い作品に仕上がってましたねー。一つ一つのエピソードに、うーむと考えさせられる哲学的なテーマが潜んでいて、見終わったあとも色々と思いを巡らせられる作品ですね。
あの原作を映像化するなんて、上手くいくのか?と思ったけれど、これは大成功ですね。傾向の似たオースターのNY3部作なんかもこういう感じで上手く映像化されないかなぁ。
そう、この「インド夜想曲」、原作を読んだときの第1印象が、オースターと似てる!だったんですね。こちらのほうが哲学色が強いですが。
で、この映画、上にも書いたように、原作には無い場面まで出てきて、とにかく対話、対話、対話なのです。それぞれの対話の中に色々と考えさせる台詞もちらほら登場しなかなか見ごたえのある作品なんだけれど、それ以上のストーリーはあってないようなものなので、そういう意味ではやや退屈な印象も。でもそれぞれの対話がどれもかなり聞かせるものになっていて、脚本が素晴らしいなぁと。
タイトルの「夜想曲」、本だとそこまで感じられないけれど、こうして映像で見ると、夜の場面が多くて、ビジュアル的に「夜想曲」っていうのがダイレクトに伝わってきますね。あとは、本では想像の限界があったインド各地の情景が映像で見られたのも嬉しかったです。
そんなわけで、本来ならばどうもすっきりしないラストなんだけれど、主人公の旅を一緒に眺めてきた我々も、なんともいえない恍惚感を得られる不思議な作品でした。
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コメント
あら、この作品が映画化されてるだなんて知らなかったわ。
私も今度観てみよう。情報有難うございます♪
投稿: 中村眞希 | 2007年8月20日 (月) 21時40分
>中村さん
そうなんですよ、しかも20年も前に!
題材が題材なので古さを感じさせない映画でしたね。
原作好きでもそこまで裏切られない作品で
なかなか上手く映像化してるなぁと思いました。
投稿: ANDRE | 2007年8月21日 (火) 01時09分