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2007年8月22日 (水)

「パラレル」長嶋有

パラレル

パラレル

長嶋有

文春文庫 2007.6.

芥川賞のみならず、先日、大江健三郎の文学賞まで受賞し、注目度が上がっている長嶋氏の最新文庫化作品です。これまで読んだ中では「タンノイのエジンバラ」が抜群に面白かったんですが、果てさて今回は・・・。

主人公の七郎はバツイチ失業中の元ゲームデイザイナー。元妻とは今でもメル友だが、それ以上の関係ではない。七郎は大学時代からの友人の、女好きIT社長の津田とともに、キャバクラを巡ったりしつつ日々を送っていた。「なべてこの世はラブとジョブ」をキーワードに、30代の男の生き様を様々な時間軸を交錯させながら描いていく作品。

雰囲気としては「ジャージの二人」系の作品だけれど、こちらのほうが、登場人物に味があります。どうってことのない軽い話なんだけど、ところどころに名台詞が多いの印象的な作品です。特に、結婚式スピーチのネタは「なるほど!」と思ってしまいました。

これまで読んできた長嶋作品の中では一番地味な印象ではあるんだけど、それは多分、自分がまだまだ主人公世代にさしかかってないから。なんか、この作品の本当の味を味わえないでいる自分が感じられてもどかしかったです。この作品はもっと人生の酸いも甘いもそれなりに経験した30代後半くらいになってから読んだ方が面白いんだと思います。そんなわけで、10年後に読み直そう!!

長嶋氏、固有名詞を使ってくるんだけど、その使い方が絶妙だよね。ちゃんと、使う場面をわきまえてるように思います。無駄に固有名詞を連発する作品は好きじゃないんだけど、こういうふうにさりげなく、使えるのって良いなぁと思う。まぁ、後年になったり、海外読者のためには注釈つけなきゃダメなんだろうけど。

複数の時間軸を平行に描く作品なんですが、まぁ、ドラマなんかの回想シーンの雰囲気だね。面白いし、メリハリを生んでるんだけど、もうちょっと面白い使い方をしてくれると嬉しいなぁ。とかなんとか上から目線の感想を言ってみる。

タイトルの「パラレル」。主人公と友人津田、主人公と妻、そもそもの主人公と世の中の関係、全てが「平行」な感じなので、絶妙なタイトル。時間軸を平行して描くのもうまくかかってるし。

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