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2007年9月11日 (火)

「カラフル」 森絵都

カラフル (文春文庫 も 20-1)

カラフル

森絵都

文春文庫 2007.9.

森絵都の出世作として名高いYA文学の傑作といわれる作品が待望の文庫化。ずっと読みたかった作品なので、かなり嬉しいですね☆

前世の記憶を失い、死後の世界にいた「ぼく」は、突然、「抽選にあたりました」と告げられる。彼は前世で罪を犯し、本来ならば輪廻の輪から外れることになるのだが、ラストチャンスが与えられることになったらしい。そんなわけで、彼は、自殺して亡くなったばかりの中学生、小林真の体内に入り、修行することに。知らない人物の体を借りているという自由さから、のびのびと生活を楽しむ「ぼく」だったが、やがて、小林真をとりまく様々な事情が明らかになり・・・。という物語。

確かに面白い作品でした。ちょっとだけ読もうと思って読み始めたのに、一気に最後まで読んじゃったし。

YAということで、中高生が主なターゲットだと思うんですが、メッセージ性があるのに、それが押し付けがましくないし、読みやすいし、これは確かにオススメできますね。でも、そのターゲットにしては、一部、教育的ではないネタがチラホラする上に、それが作中で特に否定されるわけでもないのはちょっとどうかなとは思いましたが。

この作品、ラストのオチは、もう最初の数ページで読めてしまうんですが、それでも、最後まで読みたいと思わせるのは、この作品が、ただ単にラストのオチにこめられたメッセージを伝えるだけの作品ではないからではないかと。

まさにタイトルの「カラフル」ということを全編を通して、とても丁寧に描いているなぁという印象でした。人生生きてれば、色々なことがあるし、ものごとだって色々な見方がある。絶望の縁に立っていたって、周りには色鮮やかな世界が広がっているわけですよ。

小林真という少年が何故自殺したのかということを丁寧に丁寧に描いていく作品で、ともすれば、全体をどよ~んとした暗い雰囲気が取り巻きかねないところを、「ぼく」がのんびり明るく過ごすので、全体のトーンも決して暗くない。

過去に戻ることは決してできないけれど、前に進むことはできる。世界の見方を少し変えるだけで、その勇気が得られる。当たり前のことだけれど、こんなメッセージを人に伝えようとするとどうしても説教くさくなったり、おしつけがましくなったりするんだけど、そういうのを感じさせないのがこの作品の魅力だろうね。

あと、プラプラって天使のキャラもいい味だしてます。全般にキャラ設定が絶妙で分かりやすいのもよかったなぁと。少年が主人公だけれど、女性作者なので、登場する女性キャラの描き方がとてもよかったなぁと思いましたね。

ま、でも、自分の人生はやっぱり自分のものなので、ホームステイしてると思って生きるよりかは、世界は「カラフル」なんだよってところを僕は押したいなぁと。

さらりと軽いタッチで、エンターテイメントの中でしっかりと心に何かを残してくれる宝箱のような1冊でしたね。期待通りで満足。

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コメント

最近、児童書がどんどん文庫化されているので嬉しいです。
扱っているテーマは重いのに、カラリとした明るさがありますよね。
読み終えた後、「カラフル」というタイトルにしみじみ納得。

この記事と関係ないのですが、ANDREさんと好みが似ていて一人でにんまりしてしまいました。
重松清さんとか、「素晴らしき哉人生」とか・・・。あ、「カラフル」はこの映画と通じるものがありますね。

投稿: ぐら | 2007年9月12日 (水) 22時06分

>ぐらさん

コメントどうもありがとうございます。

ここ数年、YA分野出身の作家の活躍が目立ってますからね。
良質の作品が読めるのはなんとも嬉しいものです。
この作品もずっと読みたかったので今回の文庫化が本当に嬉しかった!
(基本文庫派なのです)

重松清作品は、一時、文庫化されるたびに読んでたのですが、
あまりに重松漬けになってしまったので、
ちょっと距離を置いてみようとした結果、
最近、すっかり離れてしまいました。
気になる作品も増えてきたので、
また重松ワールドに浸ってみようかなと思ってるところです。

「素晴らしき哉人生」は暇つぶしで大学の図書館のAVルームで
なんとなく観始めたんですが、
人生でもっとも価値ある暇つぶしの1つとなりました。
本当に良い映画ですよね。

あ、自分も元記事から離れた話題が長くなってしまった・・・。

投稿: ANDRE | 2007年9月13日 (木) 01時14分

こんにちは。
きっとANDREさんはお読みになってると思ってお邪魔したら、
やっぱりオススメの作品でしたね。
本当は、アニメ映画だけを観るつもりだったのに、
観た後すぐに小説が読みたくなって、ほとんど衝動買いで一気読みになってしまいました。

仰る通り、重いテーマであろうことが、「所詮、他人だし」という主人公の立ち位置で描かれてゆくことや、
プラプラとの関係も巧く作用して、重さと軽さがいいバランスだったことが、
泣き笑いしながらも、気持ちよく一気読みできた理由だったんでしょう。
映画は、プラプラはじめ、多少の設定の変更や削除、追加などはあるものの、
小説の本質を見間違うことなく、アニメーションならではの効果も魅力も充分な作品になっていたので、
お時間があったら是非ご覧になってくださいね。

投稿: 悠雅 | 2010年8月29日 (日) 10時17分

>悠雅さん

コメントどうもありがとうございます。

アニメ映画が上映中なんですよね~。
ちょっと気になってました。

これはロングセラーなだけあって、
非常によくできていて、
本当に気持ち良く一気読みできる作品でした。

映画は劇場で観ようかどうか迷っていたのですが、
小説も読まれた上でのオススメと言うことで、
俄然観たい気持ちが膨らんできました。
時間を見つけて観に行ってきたいと思います!!

投稿: ANDRE | 2010年8月31日 (火) 01時09分

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