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2007年10月22日 (月)

映画「ヘアスプレー」

映画「ヘアスプレー」オリジナル・サウンドトラック

  サントラCD画像

hairspray

2007年

ミュージカル映画ファンとしてはこの秋絶対に外せない1本です。ブロードウェーの大ヒットミュージカルの映画化。88年のオリジナル版も見たし、夏の舞台版来日公演も見ているので、今回の映画版、とても楽しみにしてました!!

(88年オリジナル版レビュー コチラ / 舞台版レビュー コチラ )※別ウィンドウ開きます。

ストーリーは大まかには舞台版がベース。

主人公トレイシーはダンスが大好きなちょっと太った女子高生。彼女は、地元TV局の素人参加型のダンスショーを見ては、いつもTVの前で踊り、同じ高校に通う番組の人気者であるイケメン少年リンクに憧れていた。そんなある日、レギュラー出演者に空きが出たということで、オーディションが開催され、トレイシーも参加したのだが、その見た目を理由に門前払いされてしまう。

その後、トレイシーは学校の居残り授業で知り合った黒人のグループと親しくなり、彼らから新しいダンスを教えてもらい、ダンスパーティーの夜、そのダンスで一躍スターとなり、レギュラー入りが決定するのだが・・・。

1960年代、黒人差別が根強く残っていたボルチモアを舞台に、新時代の幕開けを、とにかく歌って踊って、ノリノリに駆け抜けていくミュージカル映画。

いやぁ、ものすごく良かったです!舞台を観にいったときに、ダンスレッスンなんてものがあったものだから、ラストは映画館なのについつい体が動いちゃいました・・・。しかも、舞台を観終わって以降、サントラ相当聞き込んでるので、歌の度に、声は出ずとも口動かしちゃったりして、怪しい観客と化していたのは間違いありません。

でも、一緒に歌いたくなるミュージカル映画なんて一体何年ぶり!?ここのところ、たくさんミュージカル映画はあったけれど、一緒に歌いたいと思わせるような曲をここまで詰め込むのは本当に久々。「シカゴ」とか「ドリームガールズ」とか一緒に歌うって感じじゃないもんね。「オペラ座」の曲はよく口ずさむけど、親しみやすいって感じじゃない。このミュージカル、音楽担当が「天使にラブソングを」と同じマーク・シャイマン。なんか納得です。

ここ最近のミュージカル映画の中では間違いなくダントツの仕上がりで同じタイトルの、オリジナル版、舞台版で曖昧だったストーリー的な問題点が全て解消されて、「ヘアスプレー」という作品としては、恐らくこれが決定版になるのではないでしょうか。

ただ、舞台版にも多少残っていた、オリジナルにあったB級的空気や毒が完全に抜け落ちて、単なるノリノリエンターテイメント映画になっていて、そこにメッセージ性がダイレクトに演出されてしまっていたので、オリジナルのファンには物足りなさも残る作品だと思います。ラストも微妙にメッセージ性を打ち出すように改変されてるし。オリジナルの深みがごっそりそぎ落とされてる印象です。

以下、オリジナル、舞台、と今回の映画版を比較しつつ感想を。なんか、過去2つのレビューが前提みたいになって、分かりづらくなってるんですが、その点はご了承ください・・・。ストーリー的な感想は過去に十分してるので、今回はあまり触れてません。

キャスティングの話

キャスティングなんですが、トラボルタは良かったんだけど、オリジナルの毒が完全になくなってたよね。舞台もCD聞く限りオリジナルキャストでは結構それが残されてたのにねぇ(来日のツアーキャストもあんま毒のない人だった)。単なる「お茶目なママ」になってたのがやや残念。男が演じることに必然もなくなってる。

これを含めて、全体に「マイノリティへの愛」みたいなものがすっかり消えちゃってましたよね。

一方で、主人公の父の役割が今回の映画ではググッとアップ。そもそも、おもちゃ屋って設定も今回の映画オリジナルだよね。結構笑わせていただきました。クリストファー・ウォーケン、もはやスリーピーホロウの騎士のイメージばっかりだけど良い役者さんです。

ミシェル・ファイファー、久々に観たよー。結構好きな女優さんなんだよね。この人、こんなにセクシーだったっけ??悪役を熱演してくれてました。ここで1つ大不満。字幕です。字幕。彼女が歌う曲で、私は昔「ミス・ボルチモア」に選ばれたってのがあるんだけど、これ、歌詞のままだと、「ミス・ボルチモアの蟹」。舞台だと、カニのハサミを真似たダンスついてたし。あんなに自慢してるのに、「ミス蟹娘」みたいなローカルさが面白い場面なのに、この字幕では何も伝わってない!!!!!!!!!!!

ザック・エフロン。彼、すっかりミュージカル俳優だね。「ハイスクール・ミュージカル」のときよりもこっちのほうが良かった気がします。「I'm Link」っていうときのマヌケそうな感じがツボ。「without love」を歌うときの「I look good!」と言ってウィンクするマヌケさも良い。ちなみに僕は「ハイスクール・ミュージカル」を含め彼のかっこよさが理解できません。

クイーン・ラティファ。彼女の役はもともと良い役なんだけど、今回の映画では、それをかなり際立たせてましたね。「シカゴ」のときよりもずっとずっと魅力的だったと思います。

他のキャストも大体良かったんですが、ちょいと物足りなかったのは、シーウィードの妹アイネス役の子。彼女の役の設定に比べて、演じてた子はかなり力不足だったのではないかと思います。

キャラクターでいえば、舞台ではあっさりしてたペニーの母が、再びオリジナル同様の狂信的な怪しげな人物にもどってのは素直に嬉しい!

この作品で一番好きなキャラはペニーなんですが、今回の映画では、割と最初からかわいい女の子だったので、最後に大変身!という舞台版の驚きが感じられなかったかなぁ。物語を通して一番変化してるのは彼女かもしれないんだよね。

* * *

歌の話。この辺、もはやどうでもいいマニアックな感想をタラタラ書くだけなので適当に流してください。

このミュージカル、とにかく歌が良い。一緒に口ずさみたくなるような曲が多いんですよ。「一緒に歌える歌」という点でいえば、21世紀に作られたミュージカル映画としては、屈指の傑作だと思います。過去30年くらいで観ても、こんな作品は本当に久々。

オープニングの曲が映画ならではでやや豪華アレンジでしたね。でも、コーラス部分が、天の声コーラスになってしまって、実際の町の人々とのかけあいコーラスじゃなかったのが残念だったかなぁ。

その後の展開、大体オリジナル&映画どおりなんだけど、いきなり曲が1つカット!結構好きな曲だっただけに肩透かしをくらいました。しかも、エンディングテーマとして使われるし・・・。

その曲は「Mama, I'm A Big Girl Now 」。この曲、主人公のトレイシーとその親友ペニーそして、ライバルのアンバーがそれぞれの母親におねだりするも断れるのを歌う曲なんだけど、境遇の違う3人が全く同じ気持ちでアンサンブルして歌う曲で、立場は違っても3人がまだまだ10代の娘なんだってのが表現される外せない1曲だと思うんだよね。これカットするんだったら、「I can hear the bell」とかをカットしたほうが良いと思う。この歌、入る場面も変わった上に演出も微妙だったよね。

(追記:パンフ見たら、この曲はあえてカットしたんだそうです。3人が同じ気持ちっていう風にしたくなかったんだそうで。)

あと、曲がいくつか順番が入れ替わってましたね。今回の映画は、過去作の脚本の甘さをかなり修正しているので、それに合わせて色々と変更がある感じでした。そのおかげか、ミュージカル映画にありがちな、「あぁ、舞台版はここでインタミが入るのか」的な中盤の妙な盛り上がりがなかったのも印象的。

さて、このミュージカルの「without love」て曲が僕はメチャメチャ好きで、舞台版サントラで何回聞いたか分からないくらい聞き込んでるので、今回もとても楽しみにしてましたが、ザック・エフロンらキャスト陣の無難な歌唱によって無難な仕上がりになってました。ちょっとつまらない。

これ、来日公演の舞台ではペニーとシーウィードの2人を演じる役者さんがとにかく上手くて、鳥肌ものの圧巻な場面だったんだよね。しかもこのシーンの舞台版の演出がかなり好きだっただけに、映画では実現不可能と分かってはいるんだけど、物足りなかったなぁ・・・。

あと、歌といえば、オリジナルでアンバーが歌うゴキブリソングが舞台版に続き今回もカット!しかも今回はこの場面でアンバーは歌いもしない。この辺の毒は残してほしかったなぁ。

* * *

その他感想というかぼやき。

ドッジボールの場面がなくなった・・・。居残り授業っていう設定になったから仕方ないか。でもこの場面は、リンクとトレイシーの仲を深める上で重要だったと思うんだよね。今回の映画、リンクとトレイシーの盛り上がりが舞台よりもあっさりしてたと思います。

デモの場面の演出が蓋をしたくなるような感じだった・・・。歌をデモ場面にかぶせたのは良かったと思うんだけど、あの演出はちょっと狙いすぎでしょ。デモに関して言えば、オリジナルのほうが好きだなー。

やっぱ舞台のペニーとシーウィードはうまかったなぁ。

コーニー・コリンズがオリジナル→舞台→今回とどんどん地味になってるなぁ。

エンディングのクレジットシーンがポップでかなり良かった☆

今回の映画もかなり良かったけど、別物として、オリジナルはオリジナルの良さがあると思う。オリジナルはちょっと苦手だけど。

舞台はとにかくノリで押して押して押しまくって、ストーリーの破綻なんか気にしないって感じだったんだけど、今回の映画はノリはそのままに、ストーリーが大きく改変・再構築されて、微妙なん点が解消されたのがとにかく嬉しかったということで、ひとまず終わり。

映画→舞台→再映画化てのは「プロデューサーズ」(レビューはコチラ)と同じなんだけど、基本的にどのバージョンも変化がなかった「プロデューサーズ」と比べて、こちらは、

オリジナル版:
B級感漂う作品だけど、この作品の持つ奥深さが一番表現されてる。ただし、アクが強すぎて見る人を選ぶ。

舞台版:
脚本が破綻ギリギリだけど、楽曲の良さを最大限に生かした見事な演出とダンスで一気に見せる。

2007年映画版:
1つの作品としてのまとまりはダントツで、極上のエンターテイメントとして楽しめるけど、作品が本来持っていたものがかなりそぎ落とされて、悪い言えば「無難にまとめた」印象も残る。

と、それぞれがかなりはっきりと個性が違うので、見比べる面白さがあると思います。あれ、こうやって書くとどれもあんましよくないみたいだね・・・。いえいえ、「ヘアスプレー」、傑作だと思ってますよ、本当に。

そんなわけでDVD買うの決定です。

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コメント

ANDREさん、こんばんは♪
舞台版、ちょっと気になりながらも、見送ってしまいましたが、
思い切って観に行ったらよかったかしら、と今頃後悔してます。
お話も歌も全部初めてで何も知らなかったけれど、
もう、最初の1曲めから、音楽と彼女の笑顔にすっかり魅了されました。
ジョン・トラボルタが女性になりきっていて、正直びっくりしたんですが、
わたしのお気に入りは、迫力とかっこよさのクィーン・ラティファでした。

わたしが『オペラ座の怪人』を最初に観た時は、
四季の日本語版の歌詞が頭に巡る中、
英語の曲と予想外のファントムに呆然としていたのですが、
あれは、一緒に歌いながら観ると、へとへとになります(笑)

投稿: 悠雅 | 2007年10月24日 (水) 23時07分

>悠雅さん

コメントどうもありがとうございます!

舞台版、とてもよかったんですよー。
来日公演はツアーキャストなので、キャストのハズレのときもあるんですが
今回は、キャストもかなり良かったので、映画の明るさのままの
楽しい舞台を堪能してしまいました。

今回のクイーン・ラティファ、舞台よりもオリジナルよりも
役が洗練されてるなぁと思いました。
彼女の魅力が最大限に生かされてましたね!

オペラ座は一緒に歌いだしたらキリがないですよね・・・。
2時間歌いっぱなしは確かにヘトヘトになりそうです。
個人的に映画版は「Point of no return」を一緒に歌うのがたまらないっす。

投稿: ANDRE | 2007年10月26日 (金) 01時51分

はじめまして!コメントありがとうございました。

舞台もご覧になってるのなら、もうこの世界ドハマリ中ですよね!?^^
Without Loveの場面、映画では額縁の中のトレーシーが歌ってる
っていう映画ならではの演出が映画版ではいいなぁと思いました。
"Mama I m a big girl"は母と娘の関係性はタイプは違えど同じっていうのを同時に見せる場面だった記憶があって、あれを映画でやると
画面分割かカットバンバン割り!みたいになるからナシに
したのかな~なんて思ったり。
そうそう「蟹」はやっぱり気になりましたか(笑)
自分、映画バージョンのエンディングに流れた"Cooties"なんかも
結構気に入ってます。
また伺いますね!

投稿: kazupon | 2007年10月31日 (水) 12時34分

>kazuponさん

コメントどうもありがとうございます。

御察しの通り、かなりの勢いではまってます!

舞台を観に行く前にサントラを買って予習しまくり、
その後もサントラを聞きまくったので、
今回は映画館でついつい口が一緒に動いてしまいました。

Mama I'm a big girl、自分はもう映画館の画面が
3分割する映像まで頭の中に浮かべて待ち構えていたので
本当に肩透かしでした・・・。

Cooties、一瞬、分からなかったんですけど
途中で、あ!と気づきました。
そういう点で、エンディング曲もかなり楽しめましたね。

まとまりのない無駄に長い感想ばかりのブログですが
よろしければ是非またお越しください。

投稿: ANDRE | 2007年10月31日 (水) 15時51分

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