「パレード」川上弘美
(書籍画像がありませんでした) | パレード 川上弘美 新潮文庫 2007.9. |
川上弘美の代表作といっても過言ではない「センセイの鞄」(レビューはこちら)のサイドストーリーです。川上弘美ファンとしては見逃せない1冊ということで、文庫化を待っていた作品の1つ。
「センセイの鞄」のツキコさんとセンセイのある日の会話から物語は始まる。夕食を食べているときに「昔の話をしてください」とセンセイに頼まれたツキコさんは、小学生時代の思い出を語り始める。それは、ある朝起きたら、2匹の天狗が部屋にいたという話。果てさて、ツキコさんと天狗たちの物語とは・・・。
という感じの物語なので、「センセイの鞄」の「続編」というよりかは、サイドストーリー的な要素の方が強いのではないかと思います。自分は川上弘美が初期によく書いていた、うそばなしがとても好きだったので、「センセイの鞄」とうそばなしがコラボしたような内容で、これはもうたまらない1冊でした!
てか、そんなのをのかしても、普通に作品が良すぎ。
あと、センセイとツキコさんの場面は相変わらず、食事が美味しそうだったのもポイント高し。
川上さん、こういう話を書くと本当に上手いですよね。不思議な話なのに、ホンワカとあたたかい語り口調でとても自然な感じ。この人の書く日本語、とても好きです。
天狗の物語も、非常に面白い。
子供達がつれている妖怪たちは、「自分自身」なんだろうね。「自分でも気づいていない自分の気持ち」。幼年期から思春期の間に「自分自身」を発見するというような意味がこめられているのかなぁなんて思いました。そう思うと、ラストの「パレード」は切ないよね。
ゆう子ちゃんは、その潔い姿から、もしかしたら、記憶に残っていないくらい遠い昔にすでに妖怪たちが見えなくなってしまったのかなぁなんて思ってみたり。あと、彼女の「グッバイ」がなんだかとても心に染み入りますよね。その姿もまたとても切ない。(←自分、語彙が無いなぁ・・・)
あと、イジメが扱われているんだけど、重松清のリアリスティックな切り口とはまるで違う手法なのに、同じかそれ以上に心に響くものがある作品だったと思います。意外とズバッというところはズバっと書いてるし。「感じることをわざとやめる」は、重いなぁ・・・。
もっと「センセイの鞄」の続編的なものを期待して手に取ったんですが、良い方向に期待を裏切られました。しかも、単なるうそばなしにとどまらない、とんでもないうそばなしだったのもまた嬉しかったなぁと。
あ、イラストが挿入されてるんですが、それもまた、良い感じでしたよ。
この作品が好きな人で未読でしたら、是非是非川上さんの傑作短編集「神様」(レビューはこちら)もオススメします!
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