「スターダスト」ニール・ゲイマン
スターダスト ニール・ゲイマン Neil Gaiman 角川文庫 2007.9. |
今月末から映画が公開されるということで、文庫で原作が出版されました。映画の予告を見て、ちょっと面白そうだなぁと思ったので原作を読んでみることにしました。原作者の方は「もののけ姫」英語版の脚本なども手がける、英米では絶大なる人気を誇るらしいファンタジー作家。
イギリスにあるウォールという町から物語は始まる。町には古くから壁があり、その壁の向こうには妖精の国が広がっているが、出入り口となっている小さな穴の前には常に見張りがつき、そこを抜けないようにしていた。
妖精と人間との間に生まれた青年トリストランは恋心を寄せるヴィクトリアに思いを告げるが、そのとき、流れ星を見た彼女は、その星を拾ってきたら結婚してもよいと答えてしまう。こうしてトリストランは流れ星を探しに壁の穴を抜け、妖精の国へと旅立つことに。同じ頃、永遠の若さを得るために星を探す魔女たちと王位継承を争う兄弟達もまた同じ星を目指して旅にでる・・・。という物語。
なんて書いてみても、やっぱり映画にしたら面白そうな感じの原作なんですが、原作読んだら、映画観る意欲がちょっと下がっちゃいました・・・。
いや、決してつまならくなはないんですが、なんか、原作なのにノベライズ本みたいな感じなんだよね。文学的描写がほとんどなくて、機械的にエピソードだけが淡々と述べられる感じ。なので、テンポは非常に良いんだけど、深みがない。
しかも、それが理由なのか1つ1つのエピソードの描き方が浅い気がしました。それだけで1章使っても良いような内容が1ページくらいでパパっとまとめられちゃってるんですよね。あれよあれよと物語が進んでしまって、エピソードの発想自体の面白さが活かされきれてない感じです。
あと、「何故だか分からないけれど、自分には分かる」みたいな場面がやたらと多くて、ご都合主義とも取られかねない物語展開もちょっと目立ってました。しかも、最終的にそれが上手く説明されたとはいえないのがね・・・。
ちなみに、この作品、ファンタジーなんだけど、決して子供向きじゃない。あからさまなラブシーンがあるし。あと、容赦なく、キャラクターを使い捨てて行く展開もブラックな感じで面白い。しかし、その一方で、物語そのものに大人の鑑賞に堪えうる要素が少ない。やっぱり全体的に「深さ」が足りないのだと思います。
と、そもそも現代のファンタジー作品をあまり読まない自分なので、特に思い入れがあるわけでもなく、かなり辛口コメントになってしまいましたが、空飛ぶ海賊船とかそれだけでワクワクできるようなものも登場して(これもまた、あっさりとした登場なんだけど・・・)、映像向きの作品だと思うので、機会があったら映画のほうも見てみようかなぁとおもいます。映画化にあたって、多少は改変されてるだろうし。多分、映像的に大スクリーンで見たほうが面白いんじゃないかなぁと思うんだけど、どうしようかな・・・。
この作者、調べてみたら、他の作品に面白そうなのがチラホラあるので、また機会を見て読んでみようかなぁと思います。
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