映画「愛されるために、ここにいる」
je ne suis pa la pour etre aime 2005年 フランス |
秋にぴったりなちょっとしっとりとしたフランス映画を観てみようかということで、レンタルしてきました。
主人公ジャン=クロードは裁判所からの下請けで借金などの取立てをする司法執行官をしている50歳のバツイチ男。仕事でのストレスがたまり、自分の事務所に務めることになった息子とはギクシャクした関係が続き、毎週訪ねている施設にいる父親の気難しさに辟易していたある日、病院で何か軽い運動をすることを勧められ、事務所の窓から見え、ちょっと気になっていたタンゴ教室へ通うことになる。
一方、フランソワーズは近くに控えた自分の結婚式で踊るためにタンゴ教室へと来ていたのだが、一緒に来るはずの婚約者が仕事に追われていたため、一人で教室に参加していた。こうして、ジャン=クロードとフランソワーズの2人はタンゴ教室で出会い・・・。という物語。
ちょっと堅物な主人公がストレスのたまる生活の中で、ダンス教室に通い始めるなんていうと、嫌でも、「Shall we ~」が連想されてしまうのですが、もっともっとフレンチな感じの味わい深い作品でした。
いやー、これ、かなりいいよ。テーマとしては、「自分の本心」と「他人の気持ち」って感じなんだけど、もうね、全てのシーン、会話、登場人物に無駄がなくて、しっとりと大人の物語を描いてるんだよね。ちょっとした表情や2人が踊るタンゴだけで全てが語られる。そんな映画でした。うん、本当に良い映画だったぁ。
この作品、キャスティングがまずすごい良い。知ってる俳優さんはいなかったんだけど、でもどの人もちょっとした表情で台詞以上のことをちゃんと物語ってる。ジャン=クロード役のパトリック・シェネは、決して表情豊かではないんだけど、そのときの心境をものすごいオーラを発して表しているという感じ。そして、フランソワーズ役のアンヌ・コンシニー。彼女はちょっと軽く微笑むだけで、観ている我々までをもすっかり魅了してくれますね。そして、この2人が一緒に踊るタンゴシーンは、静かに淡々と踊るだけなのに、すごい官能的な場面なんだよね。うーん、フランス。
主演2人もさることながら、ジャン=クロードの父親や息子、秘書、フランソワーズの婚約者など、他の人物もみんなしっかりと見せ場があるし、ちょっとの出演なのに、それぞれが歩んできた人生の重みが一瞬の中にしっかりと描かれているんだよね。
父親とのエピソードも序盤から先が読めるものではあったけれど、とても良かったです。ここでも台詞では語られないことで、多くが語られて、グッと胸にせまってきましたねー。そして、ここから、次の場面につながっていくのも良い。全体に、それぞれのエピソードがちゃんと上手く絡み合ってるんだよね。
そんなわけで、ちょっとした拾い物映画でした。秋の夜長にしっとりと大人の映画を楽しみたい方にはぴったりです。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「天使の分け前」(2013.06.13)
- 映画「屋根裏部屋のマリアたち」(2013.05.29)
- 映画「ハッシュパピー バスタブ島の少女」(2013.05.27)
- 映画「リンカーン弁護士」(2013.05.06)
- 映画「偽りなき者」(2013.05.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント