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2007年11月19日 (月)

「フィンガーボウルの話のつづき」 吉田篤弘

フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫 よ 29-1)

フィンガーボウルの話のつづき

吉田篤弘

新潮文庫 2007.8. 

僕はクラフト・エヴィング商會の著作が大好きなんですが、その文章を担当している吉田篤弘氏の書いた連作短編。

全部で16話+あとがき代わりの1話が収録されていて、全体を通してビートルズのホワイトアルバムが小物として小気味よく使われている作品集。不思議な博物館とか、孤島のラジオ局とか、閑人
カフェとか、出てくるもののセンスがあまりにもツボすぎて、1話1話を大切に読みたい1冊でした。

各物語は、1人の小説家が狂言回し的に登場することで、上手い具合につながれていて、見方によっては全体で1つの長編ともとれるような不思議な構成になってるんですが、そこがまた吉田氏らしいところ。

この人の書く文って、優しさと温かさに溢れてるんだよね。どの話も読んでいてとても心地が良い。この世界観の構築と、そこに引き込む力にはいつも感心させられっぱなしです。

そんなわけで以下、気に入った作品にちょっとずつコメント。

『「彼ら」の静かなテーブル』
世界の果て食堂ってのが出てくるんですが、これを読んで「つむじ風食堂」(レビュー)を思い出したのは僕だけではないはず。

『閑人カフェ』
とある博物館の話が出てくる話。閑人カフェっていう発想み見事なのに、そこに畳み掛けるように、博物館の話題がでるのがたまらないですね。こういう発想力が本当にすごいと思う。同じ博物館が舞台の話も収録されてて、そっちは、ほんわかした感じがたまらない。

『私は殺し屋ではない』
7ページという短い作品なんだけど、この人の書く文章の温かみとセンスが凝縮されてる作品で、なかなか好き。

『その静かな声』
孤島のラジオ局から発せられる電波を拾った世界を放浪する旅人の話。30ページ弱とこの作品集の中ではやや長めの1篇なんですが、「出会い」の素晴らしさを感じさせるキラキラとした傑作だと思う。

『ピザを水平に持って帰った話』
少年がピザとビートルズに出会った日を描くエッセイ調の話で、設定の持つ発想の面白さはないものの、心に残る良い話でした。

うーん、他のも面白かったんだけど、あげてるときりがないですね。友人の思い出をふりかえる「ろくろく」も好きだったなぁ。音が良い。

あとは、連作短編をつなげる役を担っているエピソードに出てくる、「小さな冬の博物館」も良いよねぇ。この辺りは、クラフト・エヴィング的にミニチュアっぽい写真とかが欲しくなってしまいます。

この人の文章はその発想もさることながら、どれもこれもテンポが良いですよね。読んでいて、丁度良い具合にコロコロと転がっていくのが心地よかったです。その中にはっとするような一文がさらりと書かれてるのがたまらないのですよ。あと、読書のBGMにビートルズのホワイトアルバムを用意できれば最高ですね。

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