映画「パリ、ジュテーム」
Paris, Je T'aime 2006年 仏・独・リティテンシュタイン・スイス |
映画公開時から気になっていた1本です。豪華なオムニバス映画だということは知っていましたが、本当に豪華でした。
パリを舞台に、愛をテーマにした5分ほどの短編を18人の監督達が競作した作品。2時間弱の中に18話とかなり詰め込まれているんですが、どの作品も個性的で、なかなか楽しめる1本に仕上がっていました。あえて邦題をつけるなら「巴里恋愛図鑑」といったところでしょうか。
惜しむらくは、作品と作品の間がほとんどなく、次々と進んでいくので、各作品の余韻に浸る暇がなかった点。幸いにもDVDでの鑑賞だったので、一時停止とかできましたが、映画館だったら、なおさらもっと余韻に浸りたいと思ってしまうのではないでしょうか。
18話もあると、当然のごとく玉石混淆というか、好き嫌い入り混じるわけですが、この映画は、「玉」の率が高かったように思います。そんなわけで、以下18話全部にちょっとずつコメントを。
好きな作品には★をつけました。
モンマルトル
1話目からよく知らない監督さんです・・・。監督自身が主演もしてます。モンマルトルでは路駐するのが大変なんだなぁって思いました。はい。
セーヌ河岸 ★
1話目が個人的には微妙だったのですが、2話目はよかった!
「ベッカムに恋して」の女性監督の作品です。「ベッカム~」も好きな映画だしね。セーヌの河岸でナンパを楽しむ若い少年グループの1人が、近くにいたイスラム系の女性に恋をするという話。美男美女の爽やかな話で、それでいて、移民問題に揺れるフランスを思うと、奥深い作品。
マレ地区
近年では「エレファント」が印象深かったガス・ヴァン・サント監督の作品。言葉を扱った発想は好きなんですけどね・・・。
チュイルリー ★
コーエン兄弟の作品です。これは最高に面白かった!!
地下鉄の駅でガイドブックを見ていた旅行客がふと向いのホームに目をやると、そこにはラブラブカップルが・・・。いやぁ、主演のスティーヴ・ブシェミの魅力が最大限に引き出されてましたね!!スタイリッシュな映像とテンポの良い展開、ブシェミの顔と見所いっぱいでした!
16区から遠く離れて ★
18の中で、この作品が1番好きです。すげー!と思った。
監督は「セントラル・ステーション」(大好きな1本です)や「モーターサイクル・ダイアリーズ」のブラジル人監督ウォルター・サレス。高級住宅地16区にある家庭で働く若い女性の話。台詞はほとんどなくて、静かで淡々とした描写の中に、ぎゅっと登場人物の思いを凝縮させた1本だったと思います。悲哀、皮肉、愛といったものが全て詰まってる!
ジョワジー門
なんだか狙いすぎな感じのスタイリッシュな映像の作品なんだけど、分かりにくい・・・。
監督は撮影では数々の賞を受賞してきたクリストファー・ドイル。確かに彼が撮影した作品の映像は良いものが多いんですが、監督・脚本はまた別の才能ですからねぇ。中国人街にセールスにやってきた男の話。
バスティーユ
もうちょっと皮肉的オチがあると思ったのに、ストレートな作品で、個人的には物足りない。いや、良い話ではあったんですけどね・・・。
監督は「死ぬまでにしたい10のこと」のイサベル・コイシェ。若い客室乗務員と浮気する男が妻に離婚を告げようとするのだが・・・という話。全体にうまくまとめているなぁという印象です。
ヴィクトワール広場
日本人監督諏訪敦彦氏の作品。主演はジュリエット・ビノシュ。
なるほど日本人監督だなぁという印象の作品です。扱ってるテーマがね。
エッフェル塔 ★
なんとも愛らしい作品でした。監督はアニメ「ベルヴィル・ランデブー」のシルヴァン・ショメ。
パントマイム師の男の日常と恋を描く作品なんですが、終始微笑ましかったです。5分という長さも丁度良かった!「ベルヴィル~」は前から観たいと思ってた作品なんですが、この短編を観て、是が非とも観なければ!と思いました。
モンソー公園
割と好きな監督の1人であるアルフォンソ・キュアロン監督作品。
いやぁ、キュアロン監督は好きなんですが、彼の手法は5分という制約にはちょっと向いてないような気が。相変わらずの遠景長回しで撮られた作品で、パリの街の空気感はよく伝わってくるし、長回しなのに、完全に計算された映像は見事なんですが、肝心のストーリーが・・・。でもこの人の空気感の演出は相変わらずスゴイと思います。「大いなる遺産」、「リトル・プリンセス」、新しいとこだと、「アズカバン」や「トゥモロー・ワールド」と、どれも空気感が印象的な作品です。でも代表作の「天国の口~」は観てなかったりします。
そうそう、サニエさんは相変わらず綺麗ですね。遠まわしのせいで、彼女の魅力も遠くになってしまったのがちょっと残念。
デ・サンファン・ルージュ地区
映画撮影でパリにやってきた女優がドラッグを買うという話。ストーリーは分かりやすくて、なかなか面白かったですが、うーん、特にそれといった印象の残らない作品でした。
監督のオリヴィエ・アサヤス氏もよく知らないしなぁ。
お祭り広場 ★
瀕死の男性を救護する救急隊員の女性の話。胸キュンしちゃいました。
もう少し早く気づいてあげてれば・・・。
南アフリカ出身の監督さんで、黒人さんメインの話。移民の国フランスですが、意外にも黒人メインはこの話だけ。彼らがフランスで置かれている状況もさりげなく示されてました。
ピガール
ちょっとオシャレな作品。
監督は脚本出身のリチャード・ラグラヴェネーズ。「フィッシャー・キング」や「マディソン群の橋」など有名作品の脚本を描いている人です。そんなわけで、主演2人のかけあいを楽しむ作品でしたね。
ファニー・アルダンは「8人の女たち」や「永遠のマリア・カラス」で印象に残っていた女優さんで、見事な熟女っぷりを披露しています。
マドレーヌ界隈
ここにきていきなりホラーテイスト!
吸血鬼女性を目撃してしまった青年に、彼女が迫る!!という話。スタイリッシュな作品だけど、これだけの作品の中で個性を見せるには、もっとかっこよく決めてほしいなぁと。ちなみに主演はイライジャ・ウッド。
ペール・ラシェーズ墓地 ★
本当に小品といった感じの作品なんだけど、5分という時間で起承転結を見事につけていて、心に残る作品でした。
監督は「スクリーム」や「エルム街の悪夢」などのホラーを得意とするウェス・クレイヴン。でもこの人は「ミュージック・オブ・ハート」も監督してますからね。抽斗の多い人です。今回は、ややファンタジー要素の入ったハートウォームラブロマンスでした。結婚式を来月に控えた2人が婚前旅行でやってきたパリで有名人が多数眠る墓地を訪れて・・・という話。
でさ、とりあえず結婚できても、やっぱりこの後は続かないのでは?とふと思ったんですが。
フォブール・サン・ドニ ★
「ラン・ローラ・ラン」「パフューム」のドイツ人監督トム・ティクヴァ作品。ナタリー・ポートマンが出演してます。
盲目の青年のもとに、彼女から1本の電話が。突如別れを告げられた彼は、彼女との日々を回想する、という話。面白かったんですが、「早回し」を多用するのは、「5分」という時間で多くを語ろうとする際にはやや反則技な気も。途中でオチが読めちゃったしね。てか、詩的すぎるだろ!と思わずつっこんじゃったよ。
カルチェラタン
大人な1本ですが、お子様な僕には2人の気持ちがよく分からなかったです・・・。レストランの人の言葉も「?」って感じで・・・。
離婚することになった年老いた夫婦の会話。主演のジーナ・ローランズは最近観た「きみに読む物語」にも出てましたね。きれいに歳を重ねられてる女優さんです。
14区 ★
最後の1話で描く「愛」は、なるほど、と思わせて、ラストを飾るにふさわしかったですね。
監督は「アバウト・シュミット」のアレクサンダー・ペイン。そう思ってみると、なるほど!って感じがします。パリ大好きなおばちゃんが、一生懸命フランス語を勉強して、念願のパリへの一人旅にくるという話。仏語で話しかけたのに英語でかえされちゃうとか、ボーヴォワールをボリバルって読んだりとか小ネタがきいててなかなか面白い作品でした。「おばちゃん」の描き方が上手!
そんなわけでざっと見返すと、★マークは8つか。ほぼ半分ですね。初めから終わりまで、好きだと思える作品が上手い具合に配置されてたのもよかったかな。
東京を舞台に似たような企画をしてほしいとか思ってみたり。パリのことはあまりよく知らないので、舞台になってる場所の持つ意味とかまで分かりきらなかったのがちょっと残念だったかな。
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