「遠別少年 13のストーリーズ」 坂川栄治
遠別少年 13のストーリーズ 坂川栄治 光文社文庫 2007.11. |
書店にて、湯本香樹実さんのコメントのついた帯にひかれて購入した1冊。作者は主に本の装丁で活躍されていて、「ソフィーの世界」や「キャッチャー・イン・ザ・ライ」などの装丁そのものも印象深いベストセラーを手がけた坂川氏。
作者が自分の少年時代を振り返りながら北海道の北部にある遠別という小さな町で過ごした日々を描く13の短編を収録した連作短編集。
短編小説集ではあるけど、極めてエッセイに近い、でも文学的な文体を意識した作品集でした。国語の教科書に載ってそうな感じの作品がたくさんあったのが印象的。
解説で湯本さんも書いているんだけれど、読んでいると、イメージが頭に次から次に湧いてくる不思議な作品。決して文章が上手いとはいえなんだけれど、作者の坂川氏が自分の思い出を丁寧に丁寧に語っていて、親戚の人から聞く昔話にワクワクしてしまうような雰囲気のある1冊でした。
では印象に残った話。
「石ころ」
子供の頃ってこういう自分の中で必要以上に大きくしてしまった罪悪感にさいなまれることってありますよね。
「麦と祖母と飛行機」
7ページと短い作品ながら、1枚の絵画を見ているような圧倒的なイメージのある作品でした。
「オレンジ」
ここで描かれてる状況とは程遠いけど、昔スキー場で吹雪に見舞われたときの恐怖感を思い出しました。ちょっと芥川の「トロッコ」なんかも髣髴とさせる作品ですね。
「赤い雪」
少年がはじめて出会う衝撃の現場。やわな都会っ子の僕は未だこういう場面に遭遇していないので、読むだけで背筋ぞくぞくです。
ほかにも「火の見やぐら」「山おっちゃん」「手」なんかもとても印象的でしたね。
なんとなく手に取った1冊でしたが、思いがけない拾いものでした。
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