「東京奇譚集」 村上春樹
東京奇譚集 村上春樹 新潮文庫 2007.11. |
村上春樹は親が好きだったので、我が家にはたくさんあるのですが、メジャーすぎてなかなか手が伸びない作家です。これまで読んだ作品も2冊くらいで全て短編集。数々の名作長編はまったく読んだことがなく、本当に「読書好き」なのか!?という感じなのですが、この作品は単行本のときからちょっと読みたかった1冊なので、早々に買って読んでしまいました。
ちょっと不思議な要素を含んだ物語が5作品収録されている短編集。
5作品とも面白かったんですが、その中でもとりわけ「ハナレイ・ベイ」という作品が非常に面白かったです。この作品を読めただけで、この本を読んだ価値があったと思えるくらいに、好きな作品です。
以下、各作品にちょこっとずつコメント。
「偶然の旅人」
タイトルどおりに「偶然」がテーマになってる作品で、しばしば村上春樹との共通性が指摘されているポール・オースターを彷彿とさせる短編でした。
ゲイのピアノ調律師と喫茶店の読書と、その姉と。といった感じです。前後のエッセイ的下りをなくして、もっとさらりと偶然だけを書いてくれても良かったかなと思うのはオースターの影響ですかね。
「ハナレイ・ベイ」
サーファーの息子をハワイで亡くした女性が、息子の亡くなった海岸を毎年訪れるようになるという作品。主人公サチの気風の良さと、そこに見え隠れする彼女の思いが非常に上手く描かれていて、とても面白い作品でした。登場人物たちが生きてる!と感じる作品です。ちょっと若者がバカすぎる気もするけど。
他の村上作品も読んでみたいなぁと思わせてしまうくらいに、心に響きました。
この作品も「偶然の旅人」同様に、偶然の出会いがさらりと描かれていましたね。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
でもって、続く3話目も僕はとても楽しめました。
失踪した夫の捜索を頼まれた主人公が、その男が住んでいたマンションの階段をいったりきたりする話。
部分部分が妙に細かい数字や、実在の固有名詞を出してくるのに、全体では、なんとも雲をつかむようなボンヤリ感のある作品で、誰かを探すことで、次第に自己に向き合うというタブッキやらオースターやらの世界に通じてきそうな展開に思わずニヤリ。主人公と住民達の問答も面白かった!
「日々移動する腎臓の形をした石」
「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない」というお話。
ふーむ、なるほど、そうなんですか。
「品川猿」
自分の名前を思い出せなくなってしまう女性と彼女の過去。果てさて、彼女の症状に隠された真の理由とは?
思いがけない展開にちょいとビックリ。もうちょっとリアル路線で話が解決すると思ってましたからね。
そんなわけで、久々に読んだ村上作品はなかなか面白かったので、今度は長編も読んでみようかなと思った次第でした。
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コメント
「東京奇譚集」を読んでいただきましてありがとうございます。
表紙カバーの「猿の絵」も気に入ってもらえると嬉しいです。
これからも宜しく(´・ω・`)ノENOKI
投稿: eno | 2007年12月30日 (日) 10時33分
>enoさん
まさか表紙を担当された方から直々にコメントをいただけるとは!
どうもありがとうございます。
この表紙結構好きで、
今、書店でつけてもらったカバーを外して
机の上に置いてあります。
投稿: ANDRE | 2007年12月30日 (日) 14時03分
こんばんは。
関西ローカルのあるTV番組の1コーナーで
この本が紹介されたのをきっかけに、読んでみようと思ったら、
ANDREさんの記事があったので、楽しみに読んでみました。
わたしも、何故か村上春樹さんは読んでないので、
全部の著作を想像できないですが、
この短編集を読む限り、かなり気に入りました。
短編は読む時間が調整しやすいので、
今年は無理なく読める、まだ読んだことのない方の短編を
読んでみようかと思っています。
またオススメ作品があったら教えてくださいね。
投稿: 悠雅 | 2008年1月 9日 (水) 20時15分
>悠雅さん
コメントとTBありがとうございます。
村上春樹、我が家の本棚にはハードカーバー、文庫ともに
たくさんあるんですけど、
なぜだか避けてきた作家です。
でもいくつか読んだ短編集は実はどれも結構気に入ってるので、
いつか長編をと思うんですが、なかなか手が伸びず・・・。
右欄の本の感想のINDEXで★をつけてる作品は
一般ウケするかどうかという確証は全くないのですが、
個人的には好きな作品ばかりなので
よかったら参考にされてみてください。
また何か良い作品を読まれましたら、
こちらこそ是非教えてください。
投稿: ANDRE | 2008年1月11日 (金) 01時26分