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2008年1月17日 (木)

「土の中の子供」中村文則

土の中の子供 (新潮文庫 な 56-2)

土の中の子供

中村文則

新潮文庫 2007.12. 

昨日、芥川賞が発表になりましたが、これは2005年の芥川賞受賞作。中村作品を読むは、「銃」(レビューはこちら)に続いて2作目になります。

表題作と「蜘蛛の声」の2作品を収録。

「土の中の子供」は、幼い頃に虐待を受けその後施設で育った青年が主人公。タクシードライバーをしている彼は自ら数々の危険な状況を引き起こしては、その暴力に、恐怖に身をゆだねてしまう。そんな青年を描く中編。

「銃」と同様に、どんよりと重い作品でした。これが中村氏の作風なんだろうけど、軽い気持ちで読もうとすると読後感の重さにノックアウトされてしまうので、ある程度構えてから読んだ方が良いと思います。

虐待のトラウマを抱える青年が、恐怖心とか、暴力とかといかに向き合って生きてくのかということが描かれる作品で、重くて仕方ない作品ではあるんだけれど、読ませる力があって、最後まで一気に読んでしまいました。それでも人間は生きていくんだなぁというのを感じる作品でした。でもなんだか哀しいよね。

ただ、「銃」のときと同様に、中村氏はちょっと饒舌な気がします。親切すぎるというか。それまでの流れと、短い一文だけで十分に表現されていることを、ちゃんと書いてしまうんですよね。個人的にはもうちょっと寡黙なほうが好きかなぁと。

土の中のシーンはなかなか印象深かったんですが、土から出てくるところはちょっと過剰演出かなぁという気も。しかし、恐怖に身を寄せる主人公の思いはなかなか読み応えがあったと思います。そうならざるを得ない人生を歩んだ主人公がとても切なかったです。世の中、大なり小なりの暴力はいたるところに存在していて、大なり小なりの「土の中の子供」が様々なレベルで存在しているんじゃないかなとも思います。

あと、一人称の「私」が持つ、ちょっと一歩引いた感じも上手いなぁと。

同時収録されている「蜘蛛の声」は、橋の下で寝泊りする青年の回想と幻想。どちらが現実でどちらが幻想なのか、若者による犯罪の多い昨今、色々と考えさせられる内容でした。

中村氏の作品を読むと、彼自身は一体どのような人なのだろうかといつも思ってしまいますね。

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