「新アラビア夜話」スティーブンスン
新アラビア夜話 ロバート・ルイス・スティーブンスン 光文社古典新訳文庫 2007.9. |
「宝島」や「ジキルとハイド」でおなじみのスティーブンスンの作品です。彼の作品を読むのは中学のときに「ジキルとハイド」を読んで以来だと思います。アラビアンナイトを意識した作品ということで、これまた中学くらいのときにアラビアンナイト好きだったので、古典新訳文庫にこの作品が入ったときからどのような作品なのかとワクワクしていました。
ボヘミアの王子フロリゼルが遭遇する冒険を描いた7つの短編が収録されているのですが、正確には、「自殺クラブ」(全3話)と「ラージャのダイアモンド」(全4話)の2つの連作短編が収録されています。
7つの「短編」というにはちょっとした理由があって、各話で毎回主人公が変わるというちょっと面白い構成になっているんですね。つまりの1つの事件をそれに関わることになる複数の主人公たちに視点を置いて描くというわけです。
ちょっとシャーロックホームズ的な空気が感じられるように思ったのは19世紀ロンドンが舞台になっているかでしょうかね。どちらの話も、主人公を変えていくという手法も手伝って先へ先へと読ませるんですが、なんかちょっと物足りないというか、もう少しパンチがほしいというか・・・。つまらなくはないんだけど、ものすごく面白いわけでもないという印象です。
各話の最後にちょっとつく語り手の口上のような数行のかもし出す雰囲気は結構好きなんですけどね。
「自殺クラブ」
タイトル通り、ちょっと不思議なクラブに迷い込んだボヘミア王子の話。この第1話目の「クリームタルトを持った若者の話」が7話の中で1番面白かったかなぁ。導入部分のエピソードの面白さにはじまって、中盤のドキドキの展開、そしてラストどうなるのかとハラハラさせる持っていきかたが非常に面白かったです。
第2話目でガラリと舞台も主人公も変わって、ちょっと面食らうんですが、それが上手いこと第1話目とつながってくるのに気がつくと、結構楽しくなって、第3話目まで一気に読んでしまいました。
「ラージャのダイアモンド」
「自殺クラブ」の最後でボヘミア王子の冒険をもう1つといって始まるのがこの話なのに、なかなかボヘミア王子が出てこないという、これまた語り手の誘導の仕方が面白い作品。
全体的なストーリー自体は「自殺クラブ」のほうが面白いかなぁと思うんだけど、こちらは物語の展開の仕方が面白かったですね。そして、ラストのオチね。まさかこんなオチで全体を締めくくるとは!!という感じでちょっとビックリでした。
全体に主人公が市井の人なのが良かったかなと思います。彼らの生活が王子の冒険とつながっていくのが面白い。
もっとシリーズ化しても面白いなぁとは思うんですが、残念ながらそうならなかったみたいですね。上手いことシリーズ化されてたら、ホームズとかみたいに良い感じでBBCさんが映像化してくれたんじゃないかと思うんですけどね。単品で映画化しても面白いんじゃないかなと思います。
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