映画「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」
<画像はサントラから> |
Sweeney Todd 2007年 イギリス、アメリカ |
ミュージカルファンとしては見逃せない作品です。ソンドハイム氏の傑作ミュージカルの映画化。しかもしかも、バートン×ジョニデ!映画化の話が出たときからワクワクしていた1本ということで、さっそく劇場へ!
オリジナルのミュージカル版に関してはDVD鑑賞ですが、こちらをどうぞ(レビュー)
舞台は19世紀ロンドン。15年前、判事のターピンが愛する妻ルーシーに目をつけ、無実の罪をきせられた理髪師ベンジャミン・バーカーはターピンへの復讐を果すため、スウィーニー・トッドと名を改めて、ロンドンの地へと帰って来た。
かつて店を開いていた場所へ戻ってきたトッドは、店のある建物の1階で「ロンドンで1番まずいパイ」を作って売っているラベット夫人から、ルーシーが受けた酷い仕打ちと、当時生まれて間もなかった娘のジョアンナが現在はタービンの家で育てられている事実を知り、ますます復讐の炎を燃え上がらせる。
一方、トッドとともにロンドンに上陸した船乗りのアンソニーは街を歩いているときにタービン判事の家の窓辺にたたずむ姿を目にし、ジョアンナに一目惚れする。果てさて、トッド氏は無事復讐を果すことができるのか、そして、ジョアンナとアンソニーの恋の行方は・・・。という物語。
なんかもっとアレンジされてるのかと思ったら、かなりオリジナルのミュージカルに忠実だったのでちょっとビックリ。ミュージカルとしては異色なホラーな展開も見事に映像化してくれましたね。予告だと、ミュージカル色すら薄いし、実際カットされてる歌もたくさんあったけれど、映画自体はかなりしっかりとミュージカル映画でしたね。
陰も陽も併せて19世紀ロンドンが好きな自分としては、この上ない題材でして、フリート街の暗い感じもバートンカラーとよく合っていて、結構好きな演出でした。
ただし、かなーり、B級テイストあふれるホラー的映像のオンパレードなので、グロいのが苦手な人にはちょっと辛い映画かも。ただ、このB級っぽさは、ちょっとはまってしまうと、「あー、バートンさんが楽しんでる!」と感じられて、目をそむけつつもちょっと楽しくなっちゃったり・・・。イスがバタンてなるの、きっと楽しくて仕方なかったんだろうなってくらいに繰り返してたりとかね。
今回の映画、ラベット夫人の片思いっぷりがかなり強調されて描かれていたように思います。監督の愛があふれてたね。海辺の家のシーンなんかは、そっけないトッド氏と併せて、とても良い場面でした。片思いの相手が自分のことに一生懸命で、全然ふりむいてくれないのに、一途に思い続けるっていう女性像は、バートン作品ではすっかりおなじみですよね。そういう意味でもこのミュージカルは好きな題材だったのではないでしょうか。
あと面白かったのはトビーが子供になった点。この変更はとても上手いと思いました。ラベット夫人へ歌う場面なんかは、子供という設定になったことによって、新しい魅力が引き出されていたように思います。
逆に今回の映画ではターピン判事関連の場面のカットが多くて、ターピン×ジョアンナ×アンソニーの3角関係の物語がちょっと薄かったですね。きっと、復讐、てか、殺人場面をメインに持ってきたかったんだろうなぁと。この3角関係はアンサンブルが良い部分が多いので、ちょいと残念だったかな。
驚くくらいにたくさん人が死ぬし、ミートパイ(なんとか肉まんよりもずっとインパクトが・・・)は正直どうかと思うミュージカルなんですが、ストーリー自体はとてもよくできているんだよね。勧善懲悪もしっかりと守られているし。いやはやソンドハイム氏はスゴイなぁと。映像化したことで、グロい部分がかなり強調されてたけどね。
さてさて、ソンドハイムの名前も出てきたので、ここからはちょっと音楽について。
この映画、何に一番驚いたかって、メインテーマがカットされたことですよ!オリジナルの舞台には「スウィーニー・トッドの話をしてあげよう」といって、コーラスが高らかにトッド氏の伝説を歌うメインテーマがあって、冒頭とラストに流れるんですが、ごっそりカット。正確にはインスト曲になってました。この曲結構好きなので、これが一番残念だったなぁと。
このミュージカルはアンサンブルがとても良くて、複数の登場人物がそれぞれの思いを歌うのが、見事に掛け合いのアンサンブルになっていて、それがまた、同じ歌詞をかぶせてきて、違う思いを表したりしているのが本当に見事だと思います。映画だと分かりやすさを優先してか、アンサンブルは最大で2人だったけれど、舞台だともっと激しく多人数でアンサンブルしていて面白いんですよ。
あと、ソンドハイム作品の特徴なのか、長台詞を歌うような1フレーズが長い曲が多いんだけど、今回の映画はそれをたっぷりと歌い上げるのではなくて、ボソボソと歌うスタイルにしたのは結構成功しているのではないかと思います。たっぷりと歌うのも良いんだけど、この映画全体の作品世界とよく合っていたよね。
ただ、その演出のせいか「歌」の印象がちょっと薄くなってしまったようにも感じます。この作品の音楽はとても良いんです!!!!てことを強調したい。ソンドハイム氏の歌詞の押韻の素晴らしさとか、アンサンブルの見事さとか。ミートパーイの歌とか、グロな曲なのに、歌自体の完成度はすごい高いよね。そして、「ジョアンナ」と「プリティ・ウーマン」は至極のバラード。
そんなわけで、怖い怖い思いつつも、結構楽しんで見てしまった1本でした。
ちなみに舞台版の2005年のリバイバル版のサントラが結構オススメです。僕がこの作品を知ったのはこの年のトニー賞授賞式を見ていて、出演者が自ら楽器を持って演奏するという新演出を再現しているパフォーマンスを見て、すっかりはまってしまったんですね。
あと、以前レビューを書いたコンサート形式のDVDもかなり良いです。コンサート形式とはいいつつ、しっかりと小物を多用してちゃんと1つの舞台になってるし。
あとは本物の舞台を観たいんですよねぇ。映画公開されるから、来日公演とかしないかなぁって思ってたんですけどね・・・。
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