« 2008年1月 | トップページ | 2008年3月 »

2008年2月

2008年2月28日 (木)

横山大観展@国立新美術館

Taikan

横山大観 - 新たなる伝説へ

@国立新美術館

公式サイト

友人が招待券をもらったということで、一緒に六本木まで行ってきました。

横山大観、名前も知ってるし、絵も見たことあるけど、彼が昭和まで生きていたということさえ知らないほど日本画に疎い自分なので(じゃぁ、西洋絵画は詳しいのかといわれれば微妙ですが)、教養のためにもとても良い機会になったと思います。

会期終了まで1週間を切っているため、かなりの混雑が予想されるということで、早めに会場入りしたんですが、10時開場のところ、9時50分くらいに到着して、まぁ、混んではいるけど、そこそこのところで入場できたのはラッキーでした。

上述のような有様なので、これだけの数の大観の作品を一度に鑑賞したことはなかったのですが、濃淡の使い方がうまいなぁというのが感想です。墨を薄くした灰色の濃淡が時には岩肌だったり、時には悪天候だったり、海だったり。それがちゃんと分かるんですよね。

逆に日本画を見慣れていないせいか、色彩豊かな作品の、緑や青の色が眼に飛び込んでくる感じにどうも慣れなくて、いまいちピンときませんでした・・・。しかし、売られていたポストカードで見ると、こういった作品はとても良い感じ。生とポストカードは大分印象が変わるなぁというのを再認識。

圧巻は40メートルの巻絵、「生々流転」をどどーんと広げて全部公開していたエリア。この美術館、見た目以上に広いんですね。移り行く景色の様々な表情がとても面白かったです。作品がある反対側の壁に同じく40mを使って、作品の解説パネルがあったんですが、その解説を、作品のほうにつけていただいた方が観ている側としては嬉しかったかなぁと。

続きを読む "横山大観展@国立新美術館"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

映画「g:mt」

g:mt グリニッジ・ミーン・タイム

g:mt

1999年

イギリス

ちょっと前にテレビで放送されたのを録画したものを見ました。いままで全然知らない作品だったんですが、イギリスの音楽を題材にした青春映画ということで、これはやっぱり見なきゃ!でしょ。

標準時の街、グリニッジの高校を卒業した仲良しグループ、それから数年が経過し、それぞれの道を歩んでいた。チャーリーは長年の夢だったプロのカメラマンとして働けるようになり、DJのリックス、トランペットのビーン、ベースのレイチェルの3人は父の遺産で裕福に暮らし、音楽業界にコネのあるサムの家をスタジオ代わりにプロデビューを目指していた。そんなある日、チャーリーが交通事故にあい、脊髄損傷の大怪我をしてしまう。そして、それを機に彼らの友情に少しずつ亀裂が入り始めるのだが・・・、という物語。

↑のDVD写真は明るくてノリがよさそうなイメージなんですが、このイメージで見ると、かなり予想を裏切られるのではないでしょうか。どっちかというと、かなり重い青春映画でした。でもロンドンがいっぱい楽しめたのでその点は満足。

ストーリーはともかく、作中に出てくるバンドの音楽が結構良い感じです。最初はトランペットをメインにしたインストの曲なんだけど、色々とごたごたがあって、ボーカルが入るようになって、そのときは、ボーカルなしのほうが良かったのでは・・・と感じたんですが、一瞬、トランペットとボーカルが掛け合うように歌う場面があって、そのシーンは最高でしたね。

自分がやりたい音楽を貫くか、それともどこかで妥協するかって感じの選択が出てくるんですが、この作品の登場人物たちの最終的な行く末が妙に現実的で、ちょっとやるせない気分になってしまいました。

続きを読む "映画「g:mt」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月26日 (火)

映画「主人公は僕だった」

主人公は僕だった コレクターズ・エディション

stranger than fiction

2006年

アメリカ

世間はアカデミー賞でにぎわってますが、マイペースにDVD鑑賞の映画の感想です。公開時にちょっと話題になってましたが、そのときは、たいして気にも留めてなかったものの、よく見てみたらキャストが良い感じに豪華だったので、見てみようかなと思いました。

主人公ハロルド・クリック(ウィル・ファレル)は規則正しく平凡な日々を送る税務署の職員。ある日、彼は突然謎の声が聞こえるようになる。その声は、彼の行動にあわせて、その様子を描写し、さらには、彼が考えていることまでをも説明するのだが、どうやら他の人々には聞こえない様子。まるで小説のナレーションのような声がずっと聞こえるため、ハロルドは、文学者のヒルバート教授(ダスティン・ホフマン)に相談に行くようになる。

一方その頃、作家カレン(エマ・トンプソン)は新作の執筆が思うように進まず、出版社からやってきた担当のペニー(クイーン・ラティファ)とともに、いかにして作品の最後に主人公ハロルド・クリックを殺せばよいかに試行錯誤していた・・・。という物語。

あとはハロルドと親しくなるお菓子屋さんの女性アナをマギー・ギレンホールが演じていて、とにかく実力派のキャストが勢ぞろいしている作品でした。

主人公が自分が小説の一部であることに気がつくってことで、最初は「トゥルーマン・ショー」みたいな作品なのかと思っていたんですが、そういう感じでもなかったですね。小説の中の話とそれを書いている作者とが現実世界で同居しているという設定になっていて、設定そのものはなかなか面白かったと思います。

出てくる家がいちいち良い感じのインテリアだし、CGを上手い具合に画面に入れたちょっと凝ったスタイリッシュな映像も見ていて面白かったし、決してテンポが悪い作品でもなかったんですが、何かが物足りないという印象です。美術面では素晴らしい作品なんだけどねぇ。

続きを読む "映画「主人公は僕だった」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月24日 (日)

「二十億光年の孤独」 谷川俊太郎

二十億光年の孤独 (集英社文庫 た 18-9) (集英社文庫 た 18-9)

二十億光年の孤独
(two billion light-years of solitude)

谷川俊太郎
(translated by William I. Elliott and Kazuko Kawamura)

集英社文庫 2008.2. 

詩集はあまり持っていないんですが、谷川俊太郎の詩は昔から結構好きで、いくつか持っています。今回、デビュー詩集が文庫化ということで、思わず手に取ってしまいました。

この本の面白いところは、詩集「二十億光年の孤独」に、その英訳版を併録している点。他にもデビュー間もない頃に書いた詩作に関するエッセイや、18歳のときの創作ノートの写真など盛り沢山の1冊でした。

いやはや、詩に関してはもう何も言えませんね。これがデビュー作で、18歳の青年が書いたというのはもう衝撃です。谷川氏の詩の真髄はすでにデビュー作から如何なく発揮されていて、もう天才だとしか思えません。ちょっとSFチックな感じがあるのも好きです。

谷川氏の詩は、1つの詩の中で、同じモチーフを繰り返したり、同じスタイルを繰り返すことが多いんですが、その繰り返しが非常に心地よくて、どっぷり浸かりたくなる不思議な魅力を持っていますよね。

創作ノートの字がとてもかわいらしい書なのが非常に印象的で、詩に表されている、ちょっと斜に構えた若者の雰囲気とのギャップもなかなか面白いです。

英訳版なんですが、やっぱりというか、どうしてもニュアンスが違っているように感じる箇所が結構あって、詩の翻訳の難しさを実感してしまいました。外国の詩を翻訳で読むなんてのは、その詩の良さをほとんど伝えていないんじゃないかと思います。これは文学作品なんかでもそういう部分は多々あるんだろうけど、詩ってのは短いだけに、特に言語との関係が密接なんだなと改めて感じました。

続きを読む "「二十億光年の孤独」 谷川俊太郎"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月20日 (水)

映画「エリザベス ゴールデン・エイジ」

映画「エリザベス ゴールデン・エイジ」オリジナル・サウンドトラック

elizabeth the golden age

2007年

イギリス

公式サイト

98年の傑作映画「エリザベス」のまさかの続編。個人的には前作のラストシーンが素晴らしくきれいにまとめられていたので、同じコンセプトでの続編はどうなるのやらとちょっと期待と不安が入り混じる中、観にいってきました。

舞台は1585年のイングランド、イギリス国教会に属するプロテスタント派の女王エリザベス(ケイト・ブランシェット)の治世。当時ヨーロッパで勢力を誇っていたカトリック国のスペインは、イングランドにも勢力を拡大させようと、とある陰謀を企てていた。それは、軟禁状態にあるカトリック派のスコットランド女王、メアリー・スチュアート(サマンサ・モートン)に接近し、王位継承権を持っている彼女をイングランド王に仕立てようとするものであった。

同じ頃、イングランドに新世界から戻ってきたウォルター・ローリー(クライヴ・オーウェン)が、女王に謁見し、エリザベスは彼の持つ不思議な魅力にひかれるようになっていた。しかし、彼女は生涯独身で国に仕えると心に誓った身。やがて、エリザベスは自分と同じ名を持つ、親しい侍女のベスをウォルターに近づかせるのだが・・・。やがて無敵艦隊との戦闘へと発展するスペインの陰謀を縦糸に、「女性」であることを捨て国家に身を捧げた女王エリザベスの苦悩を横糸にして紡ぎだされる壮大な歴史絵巻。

タイトルに「ゴールデン・エイジ」とあるので、もっと豪華絢爛な世を描くのかと思いきや、前作「エリザベス」が女王になる前の「エピソード0」的内容だったのと同様に、黄金時代を迎える前夜のできごとを描いてる作品でしたね。

主演のケイト・ブランシェットは前作の当たり役に再び挑戦し、今度はカリスマ性あふれる女王を演じつつ、その中に見え隠れする「素」の彼女を見事に演じ切っていて、同じ役でアカデミー賞に再びノミネートされたのも納得です。

ストーリーは前作のようなスピード感やスリリングさはちょっと控え目にしていて、じっくりとエリザベスの心の内側を描いていくという感じで、衣装や音楽の豪華さとは裏腹にしっとりとした人間ドラマで見せる作品でした。まぁ、悪く言ってしまえば、ちょっと地味すぎた気もしますが。

2人のエリザベスが登場するんですが、それが見事に生かされたストーリーで、女王が自分の思いをそっと侍女のベスに重ねる場面なんかはもう圧巻。そして、やがてそれが大きな苦悩となって彼女に返ってくるんですが、そのときのケイト・ブランシェットがまた良いです。侍女ベスを演じたアビー・コーニッシュも見これまで全然知らなかった女優さんですが、それに応える好演だったと思います。

ただ、この作品単独で見た場合には、かなりよく作られているとは思うんですが、前作のラストで、即位の場面にわざわざモーツァルトのレクイエムを流して、エリザベスが過去や俗世と訣別をする様子を描いたにも関わらず、再び彼女に女性としての苦悩が訪れるっていうのはちょっとなぁという気がしないでもなかったです。

続きを読む "映画「エリザベス ゴールデン・エイジ」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月19日 (火)

「死神の精度」伊坂幸太郎

死神の精度 (文春文庫 (い70-1))

死神の精度

伊坂幸太郎

文春文庫 2008.2. 

文庫化が楽しみで仕方のない作家、伊坂幸太郎の作品です。これは、ずーっと読みたかった1冊なので、本当に待ちに待ったという感じ。今度映画化も決まっているということで、なかなかホットな話題作。

内容はミュージックを愛する死神の男「千葉」を主人公にした連作短編集で、誰かが死ぬことが決まると、その1週間前から死神がその人物の周りに、さりげなく近づき、調査して、死なせても構わないかどうかを査定するというお話。全6話で、千葉が査定することになった6人の人物との物語が描かれます。

伊坂節全開な千葉のキャラも良かったんですが、こういう話って、死ぬを「可」にするかどうかってところにドラマを盛り込むのが一般的だと思うんですが、この作品では、基本「可」なのは決まっていて、あとは人間界で音楽を楽しむための時間稼ぎでなんとなく査定を続ける中にちょっとした謎解きを入れて、しかも、それぞれの話の読後感も悪くないというとてもよくできた連作短編だったと思います。

あとは、1つずつできっちりジャンルを区別して読者を飽きさせないサービス精神も素晴らしいっすね。

そして、なんとなくは感じたけれど、伊坂作品ではおなじみの見事な仕掛けっぷりでとても爽やかな読後感だったのも良かったです。うん、期待通りに面白かった!

続きを読む "「死神の精度」伊坂幸太郎"

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2008年2月17日 (日)

映画「あるスキャンダルの覚え書き」

あるスキャンダルの覚え書き

notes on scandal

2006年

イギリス

ケイト・ブランシェットとジュディ・デンチという2大演技派女優の共演で、昨年のアカデミー賞で見事に2人ともがノミネートされた作品。イギリス映画好きとしては、やはりどうしても見ておきたい1本です。

舞台はロンドン郊外のとある学校。語り手は学校で歴史を教えているオールドミスの老齢のベテラン教員バーバラ(ジュディ・デンチ)。ある日、新しい美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)が赴任し、平凡な中産階級の学校にはにつかわしくない雰囲気を持ったシーバが気にかかり、バーバラは毎晩つけている日記に彼女のことを書くようになる。

ある日、生徒達のいざこざをきっかけに2人は話をする機会を得て、シーバはバーバラを自宅に招くことに。ブルジョワ階級の自由なお嬢さんといった雰囲気のシーバだったが、自宅にて歳の離れた夫と、反抗期の長女、そしてダウン症の息子とともに暮らしている姿に、バーバラは、はじめは戸惑うものの、自身のことを隠さず話してくれる彼女に友情を感じるようになる。ところがそんな折、バーバラは、シーバが15歳の教え子と関係を持っている場面を目撃してしまう・・・。という物語。

なんか思ってたストーリーはもうちょっと硬派なサスペンスだったんですが、実際は、怖いおばちゃんのお話でした。罪を犯すのはシーバのほうなんだけど、精神的にやばいのはバーバラで、彼女が「友情」のためにシーバを追い詰めていく姿は圧巻です。

この2人といえば、2人とも印象深くエリザベス1世を演じていた女優さんなんですが、今回は現代の病んだ女性たちを、お互い一歩も譲らない見事な演技で見せてくれていて、あっという間の90分でした。作品のテンポも良いし、内容が内容なだけに、この短さは気持ちよく見てられるギリギリって感じで丁度良い時間配分。

ストーリーには何も共感できないし、最後もすっきりしないんだけど、2人の熱演にあれよあれよと見せられて、「自業自得だろうに」だとか、「おいおい、ちょっとやばすぎだろ」だとか思いながら、気づいたら終わってたという感じ。てか、バーバラが怖い。

続きを読む "映画「あるスキャンダルの覚え書き」"

| | コメント (2) | トラックバック (2)

映画「初雪の恋 ヴァージン・スノー」

初雪の恋 ~ヴァージン・スノー~ スペシャル・エディション (初回限定生産2枚組)

初雪の恋 ヴァージン・スノー

2007年

日本・韓国

数年前にテレビのドラマで見て以来、宮崎あおいの演技にぞっこんなんですが、彼女が活動の拠点にしている映画作品は実はそれほど観ていません。そんなわけで、何か観てみようと思って選んだ1本。あ、大河にほうも適当に見てますよ。

韓国から日本に滞在することになった陶芸家の父について京都にやってきたミン(イ・ジョンギ)は、偶然立ち寄った神社の境内で出会った少女七重(宮崎あおい)に一目惚れしてしまう。やがて、ミンは日本の高校に通い始めるが、七重が同じ高校に通っていることを知り、彼女に積極的にアプローチしていくのだが・・・。という物語。

えっと、感想書かなきゃダメですかね・・・。

監督が韓国人で、脚本が日本人と、スタッフも日韓合同チームになっているんですが、京都の町の映し方が外国人受けするような、これぞ「JAPAN」だという雰囲気の映像だったのが印象的です。結構京都の色々な場所が出てくるので、観光案内的にはとても良い作品だと思います。

イ・ジョンギは「王の男」での艶っぽい演技が記憶に新しいのですが、今回は韓国の現代っ子ということで、またちょっと違った雰囲気。宮崎あおいは相変わらず色々と上手い。主演2人が強すぎて、結局そればっかりの作品になってしまっていたように思います。

で、ストーリーに関してですが、うん、特に言うことは・・・。これだけの筋で1時間40分描いたことがスゴイなぁと思います。もうちょっと事件とか悲劇とかを盛り込んでくるかと思ったのに、それっぽい要素のところは結局ぼかしちゃって、あまりにストレートに2人話だけだったからなぁ。しかもそれもど真ん中すぎるくらいにストレートな部分だけだし。

続きを読む "映画「初雪の恋 ヴァージン・スノー」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月16日 (土)

「旅をする裸の眼」多和田葉子

旅をする裸の眼 (講談社文庫 た 74-2)

旅をする裸の眼

多和田葉子

講談社文庫 2008.1. 

多和田さんの作品は芥川賞受賞の「犬婿入り」を読んで以来、好きで結構読んでいるんですが、ドイツで文学活動をしているということもあって、研ぎ澄まされた日本語の言語感覚やみずみずしい感性が魅力的な作家さんだと思います。

主人公はベトナムの女子高生。1988年、講演のために東ドイツを訪れた彼女は、そこで知り合った男に、西側に連れて行かされる。彼女は、そこで幾ばくかすごした後、大陸横断鉄道に乗り込んで、ベトナムに戻ろうとしたものの、反対方向の列車に乗ってしまい、パリへとたどりつく。

滞在ビザも、パスポートも持たない彼女はやがて、パリに自分の居場所を見つけるが、暇さえ見つけては映画館へ通い、とある女優の出演作ばかりを何度も何度も観続ける。彼女が異国で暮らす12年を、スクリーンの向こうの女優に話しかけるという文体で描いていく作品。

映画がテーマになっているんですが、全13章のタイトルも全て映画のタイトルになっています。で、その共通点はすべてがカトリーヌ・ドヌーヴの出演作であるという点。作中で、主人公が彼女にひかれるという設定になっていて、彼女が観る作品の世界と、そのときの彼女の生活とかが上手い具合にリンクする作品です。

出てくる映画、タイトルになっている全13作品のうち、観たことがあるのはほんの2,3作品な上、記憶もおぼろげだったりするんですが、映画を知らなくても、作中で彼女の眼というフィルターを通して語られる映画のストーリーや各場面の印象から、その作品を頭に思い描いて読むほうが楽しめるかもしれません。実際、内容を知っている映画が出てくる部分よりも、知らない作品の章のほうが、深く楽しめたように思います。

読みやすい作品ではあるものの、共産圏の話だとか、アイデンティティだとか、色々なテーマを盛り込んでいるし、決して分かりやすい作品ではないので、何度も読み返して味わいたい作品です。

続きを読む "「旅をする裸の眼」多和田葉子"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年2月13日 (水)

映画「テラビシアにかける橋」

テラビシアにかける橋 オリジナル・サウンドトラック

bridge to terabithia

2007年

アメリカ

1つ前の記事で原作の感想を書きましたが、原作を読み終えたので早速映画のほうも観にいってきました。原作を読んでいても、がっかりするような映画化ではなくて、なかなか良い感じで映像化されていたと思います。

ストーリーは大枠はかなり原作に忠実。そんなわけでストーリー的な感想は原作のほうでどうぞ。(コチラ

いつもダラダラと自分のことに夢中な2人の姉と、まだまだ幼い2人の妹に挟まれて育ったジェス少年が主人公。ジェスの家は裕福ではなく、一家の男手として様々な仕事を手伝い、学校ではいじめっ子たちにからかわれ、彼の唯一の楽しみは絵を描くことと、かけっこで学年で一番になることであった。

ある日隣の家に、作家夫妻が引っ越してくる。その一人娘のレスリーはジェスと同じ歳で、やがて2人は親友となり、近所の森の中に2人だけの秘密の国、テラビシアを作るのだが・・・。という物語。

非常に丁寧に原作を映画化していて、映像も、音楽も、ちょっとした間も、表情も、非常に上手い。惜しむらくは、予告編の感じだと、これがファンタジーなのか、なんのなかがよく分からない点。

もうね、オープニングのジェスの絵が動いているアニメーションからして、「あ、この映画は期待以上かもしれない」と思わせてくれたんですが、いやぁ、分かってはいたんですが、大号泣しちゃいました。特に序盤の映像化が結構上手くて、最後の展開を知っているだけに、序盤からぐっとくる場面が多かったんです・・・。

主演2人の子役は、ジェスが「ザスーラ」の兄役のジョシュ・ハッチャーソン、レスリーが「チョコレート工場」のキャンディ少女のアナソフィア・ロブとすでに見覚えのある2人だったんですが、彼らが非常に良かった!2人とも本当に良い。この作品の映画化の成功はこの2人によるところもかなり大きいと思う。

原作を多少アレンジしている部分もあったんですが、原作の重要な要素をしっかりと押さえて、短い尺ながら、原作のエピソードの数々をさらりと、しかし、ちゃんと分かるように上手く挿入しているのは見事でした。

で、原作以上にテラビシアのシーンが長いんですよね。原作ではどっちかというと、学園生活や、家でのできごと、つまり、2人にとっての現実世界のできごとが細かく描かれて、テラビシアの部分は割りとさらっと描かれたんですが、映画では、テラビシアを同じくらいじっくりと描くことで2人の絆の深さを印象深いものにしていたように思います。

ただテラビシアをちょっと描きすぎちゃったかなぁという気も。

続きを読む "映画「テラビシアにかける橋」"

| | コメント (2) | トラックバック (5)

2008年2月11日 (月)

「Bridge to Terabithia」 Katherine Paterson

Bridge to Terabithia

bridge to terabithia

Katherine Paterson

Harper Collins (paperback)

1977

現在公開中の映画「テラビシアにかける橋」の原作本です。映画を見ようと思っているんですが、児童文学の名作ということで、原作の方も気になっていたのを先に読んでみることにしました。「児童文学」ってことだったので、勉強も兼ねて原書に挑戦です。

舞台はアメリカの田舎町。主人公Jessは4姉妹に挟まれて育った11歳の少年。姉妹たちにうんざりすることも多い中、妹のMay Bellだけは彼のことを慕ってくれている。Jessは学校で一番走るのが速くなることを目指して、日々トレーニングに励みつつ、一方では絵を描くのが大好きな少年だった。

ある日、隣の農場に風変わりな一家が引っ越してくる。一家の一人娘LeslieはJessと同じ歳で、やがて2人は親しくなり、家の近くの森の中に「Terabithia」という名の2人だけの秘密の世界を作り始めるのだが・・・。という物語。

もっと想像の世界Terabithiaがメインの物語だと思っていたんですが、意外にも、登場も遅いし、ストーリーもずっとそこをメインに展開するわけでもなかったです。むしろ、家族との関係、友人達との事件、いじめっ子との話など家や学校でのできごとを通して2人が成長していく姿を描く作品で、そこに、2人の秘密基地であるTerabithiaがからんでくる感じ。

ラスト、児童文学としてはかなり衝撃の展開が待っていて、その唐突すぎる展開におもわず、涙腺がゆるんでしまいました・・・。こんなの映画で見たらボロ泣き間違いなしですね。

1970年代の作品なんですが、1つ1つのエピソードが小学生の日常のなかの出来事として、時代を越えて共感できる内容になっているし、さりげなく深く考えさせるような内容もあ使っていて、1つ1つの扱いがちょっと中途半端な部分も感じられてましたが、全体的に読み応えのある作品だったと思います。

続きを読む "「Bridge to Terabithia」 Katherine Paterson"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 9日 (土)

映画「カッコーの巣の上で」

カッコーの巣の上で

one flew over the cuckoo's nest

1975年

アメリカ

アカデミー賞シーズンということで、過去の受賞作がたくさんテレビで放映されていますが、これもそんな1本。BSで放送していたのを録画してました。多分、小学校くらいのときにチラリとは観たことがあるんですが、子供には難しい作品でほとんど興味を持てず、以来、なんとなく見過ごしてきた作品です。

舞台は精神病院。ラチェット看護婦が中心となり患者達に厳しく徹底した管理を行っていた精神病院に刑務所からマクマーフィという1人の男がやってくる。刑務所から逃れるために精神病のふりをしてやってきたマクマーフィは、病院での厳しい管理に反抗し、患者達を扇動し、様々な事件を起こすのだが・・・、という物語。

最後をどのように終わらせるのかと思っていたら、まさかの衝撃展開。そしてちょっと調べてみたら、当時の治療法の実態に二重で衝撃を受けてしまいました・・・。

マクマーフィによって患者達が生き生きとし、笑顔を取り戻し、自分の気持ちを素直に表現するようになるっていう展開は最初からなんとなくは感じたんですが、このラストは、自由を象徴するようでいて、結局権威には勝てないってのも語ってる感じでなんだか解釈がいろいろ出てきそうですね。

続きを読む "映画「カッコーの巣の上で」"

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2008年2月 8日 (金)

映画「トランスアメリカ」

トランスアメリカ

transamerica

2005年

アメリカ

ちょっと前に、賞レースで話題になっていた作品ですね。主演のフェリシティ・ハフマンが出演している海外ドラマ「デスパレートな妻たち」を毎週見ているんですが、彼女の演技が良いなぁと思っていて、別の出演作品を観てみたいなと思った次第です。

主人公ブリーは性同一性障害を抱え、来週には女性の体を手に入れられるための手術が控えていた。そこに、1本の電話がかかってくる。曰く、NYでブリーの息子が逮捕され、身元引受人を探しているとのこと。どうやら男性だった17年前に一度だけ経験した女性との間に子供が生まれていて、彼女はすでに亡くなっているらしいのだ。

ブリーは自分が父親であることを隠し、教会から派遣された女性だとして、息子のトビーを迎えに行く。とりあえず、トビーを義父のもとに届けようと、2人はケンタッキーを目指して車で走り始める。愛を知らず男娼として働き、麻薬に溺れた17歳の少年と、父親であることを隠すブリーの行き先に待っているものとは?というロードムービー。

いやはや、フェリシティ・ハフマンがとにかく凄い!ビックリしました。自分が女性であると自覚している性同一性障害の男性を女優が演じるということ自体が驚きなんですが、どう見ても「女性っぽくしている男性」のようにしか見えない彼女の姿、表情、立ち振る舞いに脱帽です。デス妻のリネットの演技も上手いと思っていたけれど、これだけの女優がテレビドラマに出ているということがもう驚きですよ・

そしてさらに、トビーを演じるケヴィン・ゼガーズも上手いんだよね。主演2人が体当たりで演じていて、脚本も映像もそれをしっかりと支えている作品だったと思います。

ストーリーもとても面白く、シリアスとユーモアの配分も良いし、単に「トランスセクシャル」を描く作品ではなくて、様々な形で色々なコンプレックスが描かれていて、見ごたえのある作品だったと思います。

続きを読む "映画「トランスアメリカ」"

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2008年2月 6日 (水)

「絹」アレッサンドロ・バリッコ

絹 (白水Uブックス 169 海外小説の誘惑)


(seta

アッレサンドロ・バリッコ 
Alessandro Baricco

白水uブックス 2007.12.

現在公開されている映画「シルク」の原作小説です。映画のほうは未見なのですが、ちょっと気になっていたところに、原作が新書化したので、そちらを先に読んでみることにしました。ちなみに原作者はイタリアでは人気のある作家のようで、同じく映画化された「海の上のピアニスト」もこの作者の作品です。

舞台は19世紀。主人公エルヴェ・ジョンクールは、蚕の卵を買ってきて、それを成虫に育てて売っていたが、あるとき、世界的に蚕の病気が流行り、壊滅状態になってしまう。そんななか、鎖国政策により、外界との接触を絶っている日本には病気におかされていない見事な蚕があるという噂を聞きつけ、エルヴェ・ジョンクールは、妻を1人残し、険しい道のりを抜けて、日本へ密入する。彼は山村に導かれ、そこで、権力者のハラ・ケイと出会い、上等な蚕を手に入れるが、そこで、不思議な魅力を持った美女を目にして・・・。という物語。

もっと謎の美女との恋愛模様を描く作品なのかと思ってたんですが、ちょっと方向が違っていて、良い意味で期待を裏切る展開でした。

日本の読者としては、やはり、「日本」の描き方があまりに、現実離れしているのが気になりますが、わざわざ本の冒頭に作者から日本の読者に向けた言い訳がついていて、この作品を楽しむにはやはり、「日本」とはなっているものの、桃源郷的で幻想的なジパングくらいのつもりで読んだほうが良いんだろうね。

で、日本をとりあえず別物だと思えば、作品はとても読みやすく、どこかつかみ所のないストーリーが、まさに「絹」のようで、どこか夢物語のような雰囲気を漂わせていて、なかなか面白かったです。

160ページほどの物語なのに、章が65もあるというのも、この作品の不思議な雰囲気を出すのに上手く使われていたように思います。

続きを読む "「絹」アレッサンドロ・バリッコ"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年2月 4日 (月)

映画「トスカーナの休日」

トスカーナの休日

under the Tuscan sun

2003年

イタリア、アメリカ

どこか忘れてしまったんですが、良い作品だという話をちょっと耳にしたのが残っていて、見てみたかった作品です。

主人公は作家のフランシス(ダイン・レイン)。夫と離婚し失意の彼女に、友人のパティが自分が行く予定だったがいけなくなってしまったイタリアのツアー旅行に代わりに行くように勧め、フランシスはイタリアへと傷心旅行へ出かける。ツアー中訪れたトスカーナで、運命に導かれるように一軒の古い家に魅せられたフランシスは勢いでその家を購入してしまい、1人イタリアで暮らし始めるのだが・・・。という物語。

イタリア男もアメリカ女もステレオタイプなイメージ通りのキャラクターなのが面白い1本でした。

もうちょっとトスカーナに行ってみたい!と思わせるようなワクワク感のある映像を期待していたんですが、普通にヨーロッパの田舎町でした・・・。あ、海辺の景色はよかったですよ~。

ストーリーは、ちょっとパンチに欠ける印象で、いまいち盛り上がりに欠けるというかなんというか。全体的には上手い具合にまとめてるんだけど、登場人物も多いのに、上手く活かしきれてないような感じだったし。連続ドラマで時間をかけてゆっくりと描くほうが似合う題材なのかもしれません。

続きを読む "映画「トスカーナの休日」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 3日 (日)

「世界は密室でできている。」舞城王太郎

世界は密室でできている。―THE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS (講談社文庫)

世界は密室でできている。

舞城王太郎

講談社文庫 2007.12. 

2008年は以前から気になっているけどまだ読んだことのない作家を読もう!を1つのテーマに読書をしてみようと思っているんですが、その一環で選んだ1冊。エンタメ系のイメージが強い作家さんですが、芥川賞の候補にもなっていたりして、ちょっと気になっていました。

福井に住む中学生の由紀夫が主人公。ある日、幼馴染の友人ルンババが住む隣の番場家で、ルンババの姉が屋根から飛び降りて自殺する。それからしばらくして、修学旅行で東京に行った由紀夫は個性的な2人の姉妹、エノキとツバキと出会う。名探偵ルンババが様々な密室事件の謎を解きながら、2人の少年の青春時代の物語が描かれる。

うーむ、意外にもあらすじを書くのが難しい。

なんだか、とーっても文体が軽いのがやたらと印象に残る1冊でした。10代の男子による会話調なんですね。改行がなくてものすごく長い段落もあるんですが、あまり気にならずに一気に読めてしまうのはこの文体のおかげでしょう。逆に文体の軽さにわざとらしさを感じたり、内容までもが軽いのではないかと感じてしまいそうになるので、ちょっと良し悪しだなぁと感じました。軽い割りに、驚くほどしっかりと書かれている作品だとは思うんですが・・・。

見た目はミステリなんですが、ミステリ部分は、つまらなくはないけれど、そう面白いものでもないんですが、キャラクタがなかなか面白く練られているし、ミステリというよりも、青春小説として、2人の少年の10代をつづる物語といったほうがこの作品の良さを表しているように思います。

続きを読む "「世界は密室でできている。」舞城王太郎"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 1日 (金)

映画「微笑みに出逢う街角」

微笑みに出逢う街角 デラックス版

between strangers

2002年

カナダ、イタリア、アメリカ

名女優、ソフィア・ローレンが100本目の出演作に選んだという1本です。以前からちょっと気になっていたのを見てみました。

オリビア(ソフィア・ローレン)は車椅子の夫と暮らし、スーパーでパートの仕事をしているが、何か充たされない思いを抱えながら暮らしている初老の女性。彼女は夫には内緒で絵を描きつづけ、いつの日かフィレンツェを訪れることを夢みていた。

ナタリア(ミラ・ソルヴィーノ)は戦場フォトグラファーとして、アンゴラの戦場で撮影を行い、その写真が雑誌の表紙を飾り、写真家の先輩である父親も大満足していた。しかし、戦場での経験が大きなトラウマとして彼女にのしかかっていた。

キャサリン(デボラ・カーラ・アンガー)は演奏ツアーを終えたあとも、夫と娘の待つ家へと帰れる気になれずにいるチェロ奏者。長い間服役していた父親が出所することになり、彼女は過去のいまわしい事件を引き起こした父親へ復讐する機会をうかがいながら、そっとその後をつけていた。

カナダのトロントを舞台に、人生の岐路に立たされた3人の女性の物語が平行して描かれる作品。

うーん、悪くはないんだけど、主役3人が最後までずーっと笑顔を見せないという作品で、割と崖っぷちのところで葛藤している姿が描かれるので、ちょっと重たい話でした。

あと、3人ともかなりの熱演なだけに、ぐっと引き込まれるんだけど、各エピソードがコマ切れにつながっているので、どうせならオムニバスにしちゃっても良かったのではないかと思わせちゃったのがちょっと残念。その辺り、「めぐりあう時間たち」なんかは非常に上手いよね。

ただ、出てくる家のインテリアがどれも良いのがとても印象的で、ちょっとカナダで暮らしてみるのも良いかななんて思ってしまいました。

続きを読む "映画「微笑みに出逢う街角」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年1月 | トップページ | 2008年3月 »