「世界は密室でできている。」舞城王太郎
世界は密室でできている。 舞城王太郎 講談社文庫 2007.12. |
2008年は以前から気になっているけどまだ読んだことのない作家を読もう!を1つのテーマに読書をしてみようと思っているんですが、その一環で選んだ1冊。エンタメ系のイメージが強い作家さんですが、芥川賞の候補にもなっていたりして、ちょっと気になっていました。
福井に住む中学生の由紀夫が主人公。ある日、幼馴染の友人ルンババが住む隣の番場家で、ルンババの姉が屋根から飛び降りて自殺する。それからしばらくして、修学旅行で東京に行った由紀夫は個性的な2人の姉妹、エノキとツバキと出会う。名探偵ルンババが様々な密室事件の謎を解きながら、2人の少年の青春時代の物語が描かれる。
うーむ、意外にもあらすじを書くのが難しい。
なんだか、とーっても文体が軽いのがやたらと印象に残る1冊でした。10代の男子による会話調なんですね。改行がなくてものすごく長い段落もあるんですが、あまり気にならずに一気に読めてしまうのはこの文体のおかげでしょう。逆に文体の軽さにわざとらしさを感じたり、内容までもが軽いのではないかと感じてしまいそうになるので、ちょっと良し悪しだなぁと感じました。軽い割りに、驚くほどしっかりと書かれている作品だとは思うんですが・・・。
見た目はミステリなんですが、ミステリ部分は、つまらなくはないけれど、そう面白いものでもないんですが、キャラクタがなかなか面白く練られているし、ミステリというよりも、青春小説として、2人の少年の10代をつづる物語といったほうがこの作品の良さを表しているように思います。
そんなわけで、つまらなくはなかったんですが、もうちょっとスタイリッシュさが感じられるとよかったかなぁと。作品が目指す方向性はとてもスタイリッシュなんですが、伊坂幸太郎のしびれるような台詞回しに慣れてしまっているせいか、ちょっともっさりとした印象の作品になってしまいました。
各章の冒頭にある漫画チックなイラストには何か意味があったのでしょうか・・・。
主人公よりもルンババ少年が魅力的ですね。てか、推理力が半端ないっすよ。そうそう、ミステリ部分そのものは大して面白くないんだけど、事件の真相のバカバカしさは割と毎回楽しかったです。ブラックユーモアたっぷり。
「密室」が事件の「密室」もそうだけど、もっと人生の息が詰まってしまいそうな状況の数々を上手い具合に比喩していて、そこに思春期の閉塞感からの脱出といった要素を感じさせるあたり、とても面白かったです。
さらっと読めてなかなか楽しめるので結構オススメの1冊です。
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