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2008年2月19日 (火)

「死神の精度」伊坂幸太郎

死神の精度 (文春文庫 (い70-1))

死神の精度

伊坂幸太郎

文春文庫 2008.2. 

文庫化が楽しみで仕方のない作家、伊坂幸太郎の作品です。これは、ずーっと読みたかった1冊なので、本当に待ちに待ったという感じ。今度映画化も決まっているということで、なかなかホットな話題作。

内容はミュージックを愛する死神の男「千葉」を主人公にした連作短編集で、誰かが死ぬことが決まると、その1週間前から死神がその人物の周りに、さりげなく近づき、調査して、死なせても構わないかどうかを査定するというお話。全6話で、千葉が査定することになった6人の人物との物語が描かれます。

伊坂節全開な千葉のキャラも良かったんですが、こういう話って、死ぬを「可」にするかどうかってところにドラマを盛り込むのが一般的だと思うんですが、この作品では、基本「可」なのは決まっていて、あとは人間界で音楽を楽しむための時間稼ぎでなんとなく査定を続ける中にちょっとした謎解きを入れて、しかも、それぞれの話の読後感も悪くないというとてもよくできた連作短編だったと思います。

あとは、1つずつできっちりジャンルを区別して読者を飽きさせないサービス精神も素晴らしいっすね。

そして、なんとなくは感じたけれど、伊坂作品ではおなじみの見事な仕掛けっぷりでとても爽やかな読後感だったのも良かったです。うん、期待通りに面白かった!

連作短編といえば、自分の中では、加納朋子の右に出るものはいないと思っているんですが、「死神の精度」は、加納作品に似た雰囲気の連作っぷりだったのも嬉しかったです。最終話のトリックの日常っぽさも結構好き。

収録されている6話とも面白かったけれど、強いてあげれば、ステレオタイプな設定で遊んでる感じの雪山の話が結構好きです。あとは、中でひっそり(?)とリンクしている話たち。最終話にはやられちゃいました。

で、映画はどんな感じなのかと思い、公式サイトをちょっとのぞいたんですが、いきなりネタバレ!?みたいな感じでちょっと残念。映画も良いけれど、この作品はドラマ化が似合う気がします。テレ朝の金23かNHK土21あたりかねぇ。

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コメント

ANDREさん、こんばんは。
2月3月はあまり自宅を離れられないので、映画はしばらくお休み。
それでもなかなか時間がないのですが、
これは短い時間を惜しんで読んで、大正解!

面白かったですねぇ。
6つのお話がそれぞれにテイストが違って。それでも伊坂ワールドには違いなくて。
『吹雪に死神』では、いわゆる「雪の山荘」ですが、
なるほど、巧い!オチでしたが、本格推理の形態がまた嬉しかったです。
確かに、映画のサイトは「何で」と思う作りだったのと、
お話をシャッフルしていそうなので、やや不安が残るものの、
やっぱり映画も観に行くと思います。

それから。
加納朋子さんというと、デビューの頃数作読んだだけなのですが、
ANDREさんのお墨付きがあるなら、また読んでみたくなりました。

投稿: 悠雅 | 2008年2月24日 (日) 19時18分

>悠雅さん

コメントどうもありがとうございます。
コメントしてませんでしたが、
このたびは本当におめでとうございます。

伊坂幸太郎の作品は読む前にいつも
ワクワクするんですが、
今回はそのワクワクが読んでる間もずっと続いて
とても嬉しい1冊でした。

映画の仕上がりも楽しみです。
と、期待しすぎると痛い目を見ることが多いんですが・・・。

加納朋子さんは、
デビュー作の「ななつのこ」がとても好きなんですが、
他では「レインレイン・ボウ」と「ささらさや」が
面白かったのでオススメです。

投稿: ANDRE | 2008年2月24日 (日) 23時56分

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伊坂幸太郎 著  文藝春秋  [続きを読む]

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