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2008年3月 3日 (月)

「てるてるあした」加納朋子

てるてるあした (幻冬舎文庫 か 11-2)

てるてるあした

加納朋子

幻冬舎文庫 2008.2. 

ドラマ化もされた加納朋子さんの長編が文庫化しました。「ささらさや」と同じ街を舞台にして、登場人物も被っているということで、ちょっと楽しみにしていた作品です。まぁ、「ささらさや」自体はそれほど好きな作品でもないのですが・・・。

両親が夜逃げすることになり、ついていくことを拒否した結果、遠い親戚が住んでいるという佐々良という街に1人で暮らすことになった中学生の少女、照代が主人公。照代が暮らすことになった家の主は久代という老女。久代の周りには、彼女の女学校時代からの友人たちや、幼い子供を抱えた未亡人のサヤなど個性豊かでおせっかいな人々が出たり入ったり。孤独な日々を過ごす照代だったが、ある日、彼女は幽霊のような少女を目にし、携帯電話には謎のメールが届き始めて・・・。という物語。

「幽霊」となってますが、決してホラーではなくて、「ささらさや」がそうであったように、心温まるファンタジー風ミステリーになっていました。ただ、読む前は「ささらさや」同様に加納朋子の真骨頂でもある連作短編だとばかり思っていたので、長編だったのはちょっとびっくり。

果してこれがミステリなのかどうかさえ、終盤にならないとはっきりしないんですが、個性豊かな登場人物たちが繰りひろげる人情物語がなかなか面白くて、個人的には「ささらさや」よりもこちらのほうが好きですね。印象的な台詞があちこちに散りばめられていて物語が生きている感じがしました。

キャラクターとしてはエラ子という女子高校生が結構好きでした。エピソードとしては子守する話が良かったかなぁ。

月並みな感想になってしまいますが、「温かさ」とか「ぬくもり」とかが心地よい作品でした。

加納作品はラストが「魔法のように」という言葉が本当に似合うくらいに、上手くまとめていくんですが、この作品も、連作短編のときのように、魔法のような謎ときが待っていたのも嬉しかったです。

ただ「ささらさや」以上に、女性中心の物語だったので、男性読者としてはちょっと入りづらい感じの雰囲気があったのも事実。

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