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2008年3月21日 (金)

「泣かない女はいない」 長嶋有

泣かない女はいない (河出文庫 な 23-1)

泣かない女はいない

長嶋有

河出文庫 2007.10  

そういえば発売日に買ったのに読んでなかった1冊。長嶋作品は結構どれも好きなんですが、何でか読むのが遅れてしまいました。

舞台は1999~2000年の大宮。大手電気会社の下請けで伝票整理やら倉庫管理やら物流の中継をする小さな会社に勤めることになった女性を主人公に、会社での人間模様や同棲する恋人とのことなどを描く表題作と、愛人のもとに通う夫が延滞したAVを返しに行くことになった主婦を描く「センスなし」の2作品を収録。

どちらも面白かったのですが、個人的には表題作のほうが好きかなぁ。

ひと言で言うと、「乾いた」という形容詞がとても似合う作品だなぁと。主人公の人を距離をとるような人間関係の築き方、ものの感じ方がとてもドライ。ちょっとダメな雰囲気をかもし出している小さな会社の社員たちは、人間味のある面白い人々だけれど、主人公のフィルタを通して描かれる物語なので、全体的にはとても乾いた印象の物語になっています。この人の作品は、語り手のフィルタを通して世界を見せてくれるのが非常に上手いんですよね。

淡々としているんだけど、小さな描写がとてもスリリングとでも言いましょうか、さらりとした日常のありきたりの風景の中に、ドラマをググッと詰め込むような書き方(しかもそれをそうと感じさせない)がとても上手だなぁと思います。

なんてことない作品な感じがするのに、読後の印象がやたらと強く残るのは「タンノイのエジンバラ」を読んだときと一緒です。

表題作は、ラストの一文が上手いなと思います。描きすぎず、それでいて、しっかりと描いている。タイトルも作中のエピソードと上手く結びついてるし。

「センスなし」は、主人公の置かれた境遇の惨めさと、主人公と友人とのエピソードの微笑ましさとが上手い具合に調和していて、ラッパの音など印象深い描写も多くて、こちらもなかなか面白かったと思います。

長嶋作品は今まで読んだ中だとだんとつで「タンノイのエジンバラ」(レビュー)が好きなんすが、この本はそれに次いで好きな1冊かなぁと。

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コメント

こんばんは。
図書館で単行本を借りて、やっと読みました。
これまで数冊読んだ長嶋作品のなかで、現時点でいちばん好きな作品になりました。
収められている2篇、どちらもいいですね。
主人公の、どうも他人と敢えて距離を取る性格の描写も、違うのに似ている感じ。
説明が難しいですけど、とっても気に入りました。
『タンノイのエジンバラ』、次の長嶋作品はやはりこれにしたいと思います。

投稿: 悠雅 | 2009年1月20日 (火) 23時47分

>悠雅さん

コメントどうもありがとうございます!

自分もこれは長嶋作品の中でも
かなり上位で好きな作品です。

描れているのは日常の風景なのに
確かに何かが起こっている感じが好きです。
派手な事件が連発するような作品とは違って
地味かもしれないけど、しっかりと心に残る作風がいいですよね。

『タンノイのエジンバラ』は短編集なのですが、
芥川賞受賞作の『猛スピードで母は』よりも
こちらに収録されてる作品のほうが好きです。
お読みになられたら是非ご感想をお聞かせください!

投稿: ANDRE | 2009年1月21日 (水) 22時35分

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長嶋 有 著 河出書房新社 [続きを読む]

受信: 2009年1月20日 (火) 23時42分

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