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2008年3月27日 (木)

「シュリーマン旅行記 清国・日本」 シュリーマン

シュリーマン旅行記清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))

シュリーマン旅行記 清国・日本
(la Chine et le Japon au temps present)

ハインリッヒ・シュリーマン 
Heinrich Schliemann

講談社学術文庫 1998.04

旅行記を読むのは結構好きなんですが、これは、トロイアの発掘で有名なシュリーマンが1865年に清国と幕末の日本を訪れた際のことを書いた作品。

本の内容はタイトルのままなんですが、この本が面白いのは、シュリーマンの滞在目的が純粋な観光であるという点。商業的、政治的意図を持って江戸にやってきたわけではないということもあって、好奇心に満ちた着眼点で、自分の感じたことを素直にそのまま書いていて、容赦ない辛口批評あり、ものすごい勘違いあり、感動のあまり無駄にべた褒めありの無責任な旅行者だからこそ書ける旅行記で、特に、町民の暮らしが生き生きと描写されているのがとても面白い1冊です。

また、江戸に来る前に訪れた清国の印象が極めて悪かったためか、幕末日本をこれでもかというくらいに大絶賛して、褒めちぎっているのも特徴的。清国への厳しい眼差し、てか、もはや不衛生さに不快感を感じたことによる愚痴のオンパレードが前半にあるせいで、なおさら、後半の江戸絶賛っぷりが強調されているように感じます。やや上から目線な感じのコメントがたまにあるのも微笑ましいし。

ただ、ここで書かれている姿から、まだ150年も経っていないにも関わらず、現在の日本にはシュリーマンが絶賛した江戸の姿はカケラも残っていないように感じます。江戸から東京という名前に変わり、単なる欧米のコピーにすぎない街になってしまったのを知ったらシュリーマンはどのように感じるんだろうなぁなんて思いました。

読んでいて面白かった事項メモ。

・中国の演劇

割と厳しい批判の多い清国滞在パートですが、演劇のレベルは絶賛されています。この中で面白いのは、音楽について書いてるところで、不協和音がひどくて、ハーモニーという概念がないのではないかなどと書いてるんですが、これは単に西洋音楽と東洋音楽での調性の概念の違いだと思うんですが、西洋音楽しか知らない人が何の予備知識もなく東洋音楽を聴くと、このように思うのかというのがなかなか面白い箇所でした。

ちなみに清国において数少ない絶賛箇所である演劇ですが、江戸で観た演劇も絶賛しているので、シュリーマンにとって、江戸>清国という印象の良さは決定的だったのではないかと。清国も混迷を極めていた頃のようなので、行った時期が悪かったんだろうね。

・江戸の人は刺青がすごい!らしい。

ふんどし1枚だけの男を、「そもそも服を着る気があるのかどうか、あやしまれるくらいだ」と描写しつつ、彼らは首から足まで刺青があって、それが服の代わりなんだというような描写が。しかも、そんな感じで刺青を入れている人たちが結構いたみたいですね。へぇへぇ。

・日本人は昔からチップをもらわないんだね。

チップを渡そうとしたら、「ニホンムスコ」だからといって断ったそうです。お金をもらうくらいなら切腹をするような勢いだったみたいです。今も昔もチップの文化はないんですね。

・馬が鞋をはいてる!

蹄鉄をつける文化がなかった一方で、なんと馬が鞋をはいていたそうですよ。

・公衆浴場

いたるところで江戸の清潔さが書かれているんですが、町民達が1日1回、公衆浴場に行くということも描写されています。で、この公衆浴場、混浴だったようなんですが、さらには通りから丸見えだったみたいです。しかも、その前をシュリーマンが通ると、西洋人というものめずらしさから、全裸の男女が彼に群がったとか・・・。それを観て、「なんと清らかな素朴さだろう!」と記すシュリーマンも面白い。

・江戸の工芸品は「蒸気機関を使わず達することのできる最高の水準」

日本の手工芸品って確かにすごいですよね。こういうのも今はどんどん失われつつあるのは残念だなぁと思います。だからと言って、自分がそういった文化を大切にしているかと聞かれれば、そうだとは言えないのも残念だなぁと思うのです。

ほかにも日本の玩具は世界一の素晴らしさだとか、みんな園芸大好きだとか、毎日使っていた合言葉をこと細かくメモしてあったりと面白い記述が盛りだくさんで非常に楽しめる一方で、この「江戸」という町は、もはや我々にとってもどこか遠い異国の桃源郷のような感じにすぎないんだなぁということを改めて感じさせる作品でもあり、色々と興味深い1冊でした。

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