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2008年3月15日 (土)

映画「ラスト・キング・オブ・スコットランド」

ラストキング・オブ・スコットランド

the last king of Scotland

2006年

アメリカ

昨年のアカデミー賞で主演男優賞を受賞した作品。原作の小説もちょっと気になっている作品で、ちょっとハードな人間ドラマなのかなぁと思って、観るのをやや躊躇してたんですが、いざ観てみたらあっという間でした。

1970年台初頭、医学校を卒業したばかりのスコットランドの青年ニコラス・ギャリガンは、どこか新しい土地へ行こうとそれとなしに地球儀を回し、ウガンダの田舎町の診療所で働くことになる。折りしもウガンダでは、前政権が倒れ、アミン大統領による軍事政権が発足し、街は新政権への期待でにぎわっていた。

そんなある日、ニコラスは、ひょんなことから、遊説に来ていたアミン大統領の怪我の手当てをすることになり、それをきっかけに大統領の主治医として、彼の側で過ごすようになる。「人食い大統領」として知られるようになり、アフリカ史上でも悪名高い独裁政権を主導した実在の大統領の姿を、彼の側近であったスコットランド青年の視点から描く。

予想以上に面白い作品でした。エンタメとシリアスの度合いも絶妙だし、内容も重厚だし、何より俳優が良い。ラストのほうは痛い場面が多くて、しかも外は雷が酷くて、ちょっと怖かったです・・・。

いやはや、とにかくアミン大統領を演じるフォレスト・ウィッティカーが素晴らしい。人懐っこい表情、独裁者としての恐ろしい表情、孤独を隠し力を見せる表情などがこれでもかというくらいに伝わってきました。しかも、それが表情だけでなく、画面を通して、すさまじいまでのオーラで伝わってくるんです。オスカー獲得も納得。

一方のニコラス青年。もうね、若気の至りというかなんというか。若いってことは怖いですね。70年代初頭の設定ですが、ニコラスの、なーんにも考えてません的な行き当たりばったり、怖いもの知らずで、とりあえず自分が楽しければ良いし、嫌になれば帰れば良いんだし、ってのが見え見えな姿が現代の若者にも共通するなぁと。彼だからこそ、アミンに近づけたんだろうし、彼だからこそ、終盤の悲劇もあったんだろうしで、見ようによってはただのバカな若者でイライラするかもしれませんが、個人的には、彼の若さは理解できるし、やはり彼というキャラがいなければこの作品は成立しないと思います。

アミンに子供だと言い放つ一方で、あなたも十分子供ですからっ!っていう感じで、孤独な独裁者も能天気な若者も同じくらいに怖いなぁと思います。自分のすぐ側に大量虐殺を行っている男がいるのに何も気づかない恐怖。目先の楽しさに溺れるということは非常に怖い。もしかしたら、予測不能ってことで、アミンよりもずっと怖いかもしれません。

冒頭の牛を殺す場面でも、ニコラスの中にある「怖さ」が非常によく出ていて、終盤以降のアミンの姿を合わせて、とても印象に残る場面でした。

独裁者をその側にいた人物の視点で描くというと、「ヒトラー 最期の12日間」(レビュー)がありますが、ニコラスのキャラ設定によって、それともまた違った独特の視点で描かれていたのが面白かったですね。

そうそう、アミンがアジア人追放に関して文句を言いにくる場面の理不尽さは凄かったけど、実際こういうこと言う人結構いますよね・・・。

この映画、こんなにシリアスな内容なのに、意外にもそれほど重くないんですよね。画面も明るいし、なんといっても、音楽が良い。ノリの良いアフリカンとかラウンジ音楽とかを程よく入れてきて、音楽が映画をきゅきゅっとしめていたように思います。

これも、つい30年前のできごとだと思うと、平和ボケな自分は、いつニコラスのような状況になるかも分からないっていう怖さもあるし、自分の生きてきて知っている現代史なんてほんの一部なんだなぁというのを再認識しますね。

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