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2008年3月14日 (金)

「夫婦善哉」織田作之助

夫婦善哉 (新潮文庫)

夫婦善哉

織田作之助

新潮文庫  

この前に読んでいたイシグロの「充たされざる者」があまりにハードだったので、今度はサクっと読めるものをと思い、積読されている本を眺めていたところ、オダサクが目に飛び込んできたので、読んでみることに。

収録されているのは「夫婦善哉」、「木の都」、「六白金星」、「アド・バルーン」、「世相」、「競馬」の6作品。短編の名手ということで、どれも読み応えのある作品ばかりです。

どれも大阪を舞台に、昭和前半の人情劇を描いているんですが、驚くべきは、作品の大半が戦時中に書かれているということ。戦争の影を感じる部分がたまに見えることもあるんですが、全体を通して、ほっこりとした感じで、それを感じさせない作風なのが面白いです。

関西弁を使って書かれた文体や(当時の流行言葉なんかも使っていて、現代ではよく意味の分からない言葉もちらほら)、ちょっと洒落っ気のある言い回し、短いながらに波乱万丈なストーリー、憎めないダメ登場人物たちがどれも良い感じでなかなかお気に入りでした。

以下作品ごとにちょこっとコメント。

「夫婦善哉」

表題作。タイトルからなんとなく仲睦まじい夫婦の話かと思っていたんですが、まぁ、睦まじいんですが、とんでもないダメダメ亭主とそれを支える妻のお話でした。

次々と色々な商売に手を出していく様子に当時の世相も垣間見えて、興味深いんですが、なんといっても、柳吉のダメダメっぷりに、「おいおい」と読みながら呆れつ、それをそっと支える妻の蝶子に「本当に良いのか?」と思いつつ、ラストのほんの短いエピソードでしっかりと夫婦の絆を感じられたのが良かったです。

「木の都」

私小説風の作品で、作者自身のような主人公の男が、子供の頃に住んでいた地域を久しぶりに訪れて、そこで出会った家族とのことを書いた作品。

これ、結構好きですよ。作品に出てくる坂がどんな坂なのかなぁと思ってネットで検索したら、なんともレトロで雰囲気のある場所のようですね。訪れてみたいなぁ。

「六白金星」

六白金星の星に生まれた主人公、楢雄の半生を家族との関係を軸に描く。

この短編集の中ではかなりの大作。なんともやるせない気持ちになって物語が終わった感じです。内容よりも、ちょっとした会話がテンポよく面白いのが印象的な作品でした。なんてたって、

「よっしゃ。デカダンでやる。」

ですからね。

「アド・バルーン」

落語家の子として生まれ、里子に出されるなどの波乱の人生を送る男の半生を描く。

この本の中ではこれが一番好きです!語り手が読者に語りかけてくる饒舌っぷりが読んでいて非常に面白いし、空に浮かぶアドバルーンなんかの風景が目に浮かぶし、切なさを感じる物語もなかなか読ませるし、ラストシーンも印象的。

この話は語り口がとても好きで、ついつい付箋つけちゃいました。

しかし、私がもう一度引きかえして見たいといい出す前に、浜子はふたたび明るい方へ戻って行き、植木屋、風鈴、花緒、らんちゅう、暦、扇子、奥州斎川孫太郎虫、河豚の堤燈、花火、びいどろのおはじき・・・・・・良い母親だと思った。

これはお祭で夜店を見て回っている少年時代の主人公と継母の浜子を描いてるんですが、神様みたいな語りじゃなくて、なんだか考えながら喋ってるような語り口なのが非常に面白いなぁと。しかも、夜店を歩いて回ってるイメージもつかみやすい。

この作品では他にも、物語の途中で語り手が

さて、これからがこの話の眼目に入るのですが、考えてみると、話の枕に身を入れすぎて、もうこの先の肝腎の部分を詳しく語りたい熱がなくなってしまいました。

と言ってみたり、自分のことが出ている新聞記事を引用している途中で、

まだこの後十行ばかり書いてありましたが、恥ずかしくなったので省略しましょう。

と言ったりと、語り手に人間味が感じられるのがとても好きな作品でした。アドバルーンというタイトルも好きです。きっと当時は高い建物も少なくて、空高くきれいに浮かんでいたんでしょうね。

「世相」

作家を主人公に、終戦後の大阪を描く自伝的作品。

うーん、これはちょっと苦手かなぁ。

「競馬」

競馬のレースで1番ばかりを買い続ける小心者男に秘められた過去、そして、彼は勝つことができるのか?という物語。

これはかなり面白かったです。途中で主人公が出会う男も印象深かったし。ラストはちょっと一緒になって興奮しちゃいました。

そんなわけで思わず、初めて引用機能を使ってしまうくらいに、オダサクなんていう愛称がついて親しまれているのも納得できる短編集で、他の作品も機会があったら読んでみたいなぁと思います。なんだか大阪に行ってみたくなりました。

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