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2008年4月26日 (土)

「海を失った男」 シオドア・スタージョン

海を失った男 (晶文社ミステリ)

海を失った男
(the man who lost the sea)

シオドア・スタージョン 
Theodore Sturgeon

河出文庫 2008.04
写真は晶文社刊の単行本

幻想的な作品を多く生み出したアメリカの小説家スタージョンの短編集。ちゃんと作品集という形で読むのは初めてです。書籍写真がなかったので単行本のものを載せましたが、文庫版は表紙の絵がなかなか目をひく装丁で良い感じです(河出書房から単行本で出ている他のスタージョン作品にあわせた装丁ですね)。

収録されているのは100ページを越えるやや長めのものから数ページの長さのものまで中編・短編が8編。いずれも、やや哲学的雰囲気を持った幻想SFといった風合の作品ばかりで、詩的で難解な作品からストーリーの面白さでみせる作品まで様々といった印象。

もう少し気軽に楽しめるのかなと思っていたのですが、結構気合を入れて読まないといけない1冊でしたね。

そんなわけで、それぞれの作品に適当にコメント。

「音楽」

非常に短い作品で、散文的な文章が印象的な小品。でもちょっと分かりづらいっすね。雰囲気を楽しむ感じで終わってしまいました。

「ビアンカの手」

白痴の少女のあまりに美しい手に魅せられてしまった男の物語。

これは面白かった!ストーリー的なオチは冒頭で分かってしまったんですが、描写の美しさが印象的で、究極のフェティシズムとでもいいましょうか、そのアンバランスさにぞくぞくっとする作品でした。

「成熟」

未発達な胸腺のために純真で特別な価値観を持っていた青年が手術を受けることになり・・・という物語。

なんだか『アルジャーノンに花束を』を彷彿とさせる物語でしたが、物語は割と深く精神的な部分を掘り下げていましたね。思わぬ方向に展開していってなかなか考えさせる作品でした。

「シジジイじゃない」

1人の女性を愛する青年の試行錯誤の物語。

なんだかひっかかる部分がちらほらとあるんですが、最後でなるほど納得。面白かったです!

「三の法則」

地球滅ぼすかどうかを議論し、地球人の中に侵入した3人の異星人たちの物語。

こちらはなんだか手塚治虫の「W3」を思わせる始まり方の物語。これも「3人」というのを面白く使っていてちょっと独特な方向に進んでいきましたね~。

「そして私のおそれはつのる」

学のない不良少年が不思議な能力を持つ老女に見出され、人生観を学ぶ物語。

この作品集の中では割と正統派な感じの物語でしたね。愛!読後感はあまりすっきりせず。

「墓読み」

墓から埋葬された人物のことを読み取ることのできる男と出会い、主人公は妻の死の謎を知るべく修行に励むのだが・・・。

普通に良いお話でした。長さも手ごろでよくできた短編だと思います。

「海を失った男」

海のことを考える男の話。

えっとえっと、難しいっす・・・。これ、じっくり読んでも気を抜くと完全についていけなくなるし、気を抜かなくても色々と難解でした。これを上手く味わえるだけの能力は自分にはないので、ちょっと置いてけぼりを食らった状態で読み終えてしまいました・・・。

好きなのは「ビアンカの手」「成熟」「シジジイじゃない」「墓読み」あたりでしょうか。やっぱり分かりやすい作品のほうが楽しめますね。

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