来日舞台 「HAMLET」 ITCL (映画ガイド付)
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来日公演 「HAMLET」 ハムレット International Theater Company London @早稲田大学大隈講堂 (記事の最後に「ハムレット」映画ガイドつけました) |
毎年この時期に来日してシェイクスピアを公演しながら全国を回るイギリスの劇団ITCLが今年も来日公演をするというので、昨年の「夏の夜の夢」に続いて今年も観にいってきました。
早稲田大学での公演は字幕がつかないのですが、その代わりに入場料が無料なんですね。そんなわけで、しっかりと予習をして初大隈講堂でした。余談ですが、早稲田は大学の町っぽい感じがして、自分の学校の周りとは大違いだなといつも思います。
で「ハムレット」。ストーリーはおなじみですが簡単にあらすじを。
舞台はデンマーク。若き王子ハムレットは実父である前王が亡くなり、それからほどなくして母が新王に即位した叔父と結婚したことにショックを受けていた。そんなあるとき、ハムレットは父親の亡霊に出会い、父の死は叔父による策略であったことを知り、復讐を誓う。ハムレットは気のふれたふりをしながら復讐の機会を伺うが、物語は大きな悲劇へと展開していく。
この劇団の舞台は前回もそうだったんですが、役者の数が最小限で、どの役者も1人で2役、3役を平気でこなすのですが、今回はさらに、BGMを舞台上で役者自身が交代で楽器を弾いたり、アカペラコーラスをしながら担当していて、非常にシンプルな舞台装置とあわせて、役者さんたちの活躍っぷりもかなりの見ごたえがありました。
ストーリーのほうが割とカットされていて、まるで登場しない人物もいたんですが、全体的にシンプルでアットホームな感じが心地よい舞台でした。
この舞台、「ハムレット」という悲劇の中に結構笑いを入れていたんですけど、ローゼンクランツとギルデンスターンで笑いをとるのは分かるんですが、ポローニアスが、「おじいちゃん、しっかりして!」と言いたくなるようなキャラになっていてかなり笑いを誘っていたのが個人的には新しかったのでとても面白かったです。
悲劇といえば、今回はフォーティンブラスの下りをまるまるカットしていたので、最後の終わり方が非常にあさっりとしていて、「余韻」を感じさせる間がなかったんですが、それによって、あのちょっと冗長な感じのフォーティンブラスの最後のシーンの意義がなんとなく分かった気がします。
シェイクスピア劇って、演出によって、同じ台詞なのに、受ける印象をまるで変えることができるというのがとても面白くて、舞台を観るたびにその奥深さにはまってしまいます。
ところで、昨年の「夏の夜の夢」の公演は、同じ早稲田が会場で、同じく無料公演だったにもかかわらず、ほとんど客が入ってなくてガラガラだったんですが、今日の公演は満席でした。「ハムレット」ってそんなに人気なんですか?僕は「夏の夜の夢」のほうが好きなんですけどねぇ。
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ハムレットの邦訳はたくさん出ていますが、個人的に好きなのは、岩波文庫から出ている野島秀勝訳。注釈がページの下部についていて参照しやすい&分かりやすいのと、「読む」という点で面白く書かれているように感じます。
原典は、アーデン版とかが良いんだろうけど、僕が持っているのは Floger Library シリーズのもの。これは見開きで、右ページに本文、左ページに注釈的に古い英語表記の部分の現代英語訳を単語帳的に載せていて、ある程度は辞書に頼らずに読めるようになっています。
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ついでなのでこれまでに見たことのある「ハムレット」映画作品紹介コーナー。
1948年 ローレンス・オリヴィエ監督 ハムレット:ローレンス・オリヴィエ |
オリヴィエ版ハムレットは非常にオーソドックスな印象です。白黒なのですが、照明使いやカメラワークをはじめとして全体の雰囲気の作り方も結構重厚な印象。「to be or not to be」の場面がちょっと怖いんですよね。
画像無し | 1990年 フランコ・ゼフィレッリ監督 ハムレット:メル・ギブソン |
メル・ギブソンがハムレットを演じている上にゼフィレッリ監督という豪華さとはうらはらにあまり知られていない1本ではないでしょうか。ちなみにオフィーリアはヘレナ・ボナムカーターだし、ガートルードがグレン・クローズなど結構豪華キャストです。
この映画のメル・ギブソン、実は結構熱演です。うじうじしない熱いハムレット像が印象的。しかしながら、残念なことに、ヘレナ嬢のインパクトある狂気の演技に全てを持っていかれた感が・・・。彼女のオフィーリアは必見!ロケで撮影されている城なんかも見ていて楽しいし、テンポも良くてエンタメとして十分楽しめるハムレット。
1996年 ケネス・ブラナー監督 ハムレット:ケネス・ブラナー |
決定版的雰囲気を持っているブラナー版はなんといっても4時間に及ぶ大作で、完全映画化を果しているのがポイント。しかもキャストが豪華すぎ。ついでに、セットもロケも音楽も何もかもがとにかく絢爛豪華で非常に華やかな作品に仕上がっています。ただ、見ようと思うと、それなりに覚悟を決めないといけない長さなんですよね。
ただブラナーハムレットはちょっと若さがないのが残念。ケイト・ウィンスレットもギブソン版のヘレナ嬢には負けてますし。ブラナーのシェイクスピアはどれも卒なく丁寧に作られていて僕は結構好きです。
2000年 マイケル・アルメレイダ監督 ハムレット:イーサン・ホーク |
イーサン・ホークのハムレットはとにかく若さが売りです。でもって、舞台を現代のニューヨークに持ってきて企業の経営者交代の話にしつつも、台詞は全てシェイクスピアのままという実験的な冒険心にあふれた作品で、演出も現代的かつスタイリッシュな映像を求めているんですけど、ちょっと頑張りすぎて全体的にイマイチな印象です。
ただ、台詞をそのままに、全てを現代劇に変えるにあたって、色々と面白い工夫をしていて、それを見るのは結構楽しい1本でもあります。あと、ハムレットと現代の若者の苦悩てのは意外と自然にマッチするものなんだなというのが感じられます。
1990年 原作・監督・脚本 トム・ストッパード ローゼンクランツ: ゲイリー・オールドマン ギルデンスターン: ティム・ロス ハムレット: イアン・グレン |
最後は正統的な「ハムレット」ではなくて、「ハムレット」を題材に撮った異色作。ハムレットの劇中に出てくる名脇役の2人を主人公に、彼らの視点からハムレットの物語を描くという作品なんですが、これが、非常によくできていて、とても面白い!!ハムレット関連の映画では1番好きです。ボケとツッコミ、天才的な発明・発見のオンパレードの中にひっそりと裏で進行するハムレットの物語。本当によくできた脚本だと思います。
トム・ストッパードは『恋に落ちたシェイクスピア』の脚本も担当してるので、異色シェイクスピア作品を作るのが上手な脚本家さんなんですね。今後もこういう面白い作品を作ってくれるといいなと思います。
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異色といえば、チャン・ツィイー主演の中国映画「女帝」はガートルードの視点で描いているようですが、こちらはまだ未見。近いうちに観てみよっと。
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