映画 「アヒルと鴨のコインロッカー」
アヒルと鴨のコインロッカー 2006年 日本 |
原作小説を読んだときに(レビュー)、これは映画化なんて絶対に不可能だ!と書いた作品ですが、割と映画の評判が良いので、果たしてどのように映画化しているのか、どうせなら、厳しく辛口コメントでもしてしまおうかくらいに思って見てみました。
物語は小説と同じです。
仙台の大学に進学することになり、1人暮らしをするアパートに引っ越してきた椎名は、隣の部屋に住む河崎という男に声をかけられ、なんだか分からないままに、河崎と一緒に本屋強盗をすることになってしまう。河崎のターゲットは広辞苑1冊。突如、謎の事件に巻き込まれてしまった大学生の姿を描く。
いやはや、これがね、なんとね、本を読んだときには絶対に絶対に映像化不可能だと思っていたトリックを見事なまでに完全再現!たまげました。やはり原作通りに進めることは不可能なんですけど、「映画」という媒体で使われる手法をうまく利用してました。
しかもそれだけじゃなくて、映画として見て普通に面白い!見終わった後はディランのCDかけて、一緒に歌ってました。
主人公の椎名を演じた濱田岳といえば、金八先生の第7シリーズで、圧倒的なまでの演技力で狩野君という生徒を見事に演じていましたが、今回は、あのおちゃらけたキャラクターとはまた違った、知らず知らずに事件に巻き込まれてしまうとぼけた青年を熱演。
瑛太は、思ったよりも背が高いんだということを知りました。難しい役でしたが、なかなか好演だったと思います。一方で、麗子、演じている大塚寧々は決して悪くないんだけど、映画の中での扱いがちょっと中途半端だったような気がします。
役者っていう面でいうと、この映画、どの人もみんな歌が良いです。細かいことだけど、こういうのって結構ポイントだと思います。
この物語、本当に胸をぎゅっとつかまれるような切なさがあるんですが、映画で見ていて、隣の部屋からディランを歌う声が聞こえてくる瞬間にはゾクゾクしちゃいました。もしかして、ひょっとして、そんな馬鹿な!と感じてしまったんだろうなと。そして、その直後の会心の笑顔がまた良い。
小説版では、ネタバレがあるのが割と終盤だったのに対して、映画では中盤で早々のネタバレが。この辺りの潔さもよかったんじゃないでしょうか。ま、先に原作読んでたから、最初からネタを知ってみてたんですが・・・。
それにしても、伊坂作品ならではで、台詞の1つ、場面の1つに全く無駄がなくて、全てがどこかでちゃんとつながっているのは、本当に見事だなぁと思います。まさに伊坂マジック。
原作にあった好きな場面がなかったとか、不満点がなかったわけではないですが、それでも「映画」単体でちゃんと完成させて、それでいて原作のイメージを壊さずに楽しませてくれたことに感謝感謝の1本でした。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「天使の分け前」(2013.06.13)
- 映画「屋根裏部屋のマリアたち」(2013.05.29)
- 映画「ハッシュパピー バスタブ島の少女」(2013.05.27)
- 映画「リンカーン弁護士」(2013.05.06)
- 映画「偽りなき者」(2013.05.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんばんは。またお邪魔しました。
これは、瑛太ファンの妹が自主的にDVDを貸してくれたので、
伊坂ファンの娘と一緒に観たのですが、
「こんなことなら、原作を先に読むんだった!!」とどれほど後悔したことか。
これは、小説の中で騙されたかったです。
で、遅れ馳せながら、今片っ端から伊坂作品を読んでいる最中です。
実は今日、『ラッシュライフ』を読み終えたので、ANDREさんも確か読まれてたな、と何気なくお邪魔したら、
この作品のレビューで、大喜びで出てきてしまいました。
わたしにずっと原作を薦めていた娘も、原作ファンとしての物足りなさはあるにはあるけれども、
これだけ頑張って作ってくれたならOK!と喜んでいました。
基本はミステリなんだけど、人間ドラマでもあって、
どんなジャンルにも括られない、本来の意味の「小説」の面白さの伊坂作品の魅力に嵌る一方です。
投稿: 悠雅 | 2008年5月 9日 (金) 00時39分
>悠雅さん
コメント&TBありがとうございます!
自分は小説で見事に騙されてしまったのですが、
そうなると、映画で騙されないのがちょっと残念だなぁなんて気に
なってしまったり(笑)
このところ、爽快に騙されるような映画も少ないですし。
原作ものの映画化はがっかりすることが多いですが、
今回は本当に嬉しい完成度でした。
伊坂作品は、登場人物がみな味があって、
ストーリーも面白いし、ちょっとした遊び心もあって
それでいて浅くないのが良いですよね。
『ラッシュライフ』も大好きな作品です。
投稿: ANDRE | 2008年5月10日 (土) 00時24分