映画「それでも生きる子供たちへ」
all the invisible children 2005年 イタリア・フランス |
「子供たち」をテーマにしたオムニバス映画ということで、公開時から気になっていた1本。
世界の様々な国を舞台に、厳しい環境の中で生きる子供たちの姿を描く7本の短編を集めたオムニバス作品。邦題に「それでも生きる」とあるように、逆境にめげずに力強く生きていく子供たちを描くのが1つのテーマになっています。
こんなことは見る前から分かっていたけれど、自分の暮らしている環境とあまりにかけ離れた世界に生きる子供たちの姿はやっぱり衝撃的で強く心に残ります。7つの作品はどれも個性豊かでそれぞれに映画としてよくできていて見ごたえのあるオムニバス映画でした。
そんなわけで1話ずつ感想を。
「タンザ」 監督:メディ・カレフ (ルワンダ)
ゲリラ部隊に参加する少年タンザは時限爆弾を持ってある建物の中へと入っていくのだが・・・。
1話目から重いです。
最後、ちょっと感傷的になりすぎる演出なんですが、個人的には、このラストシーンよりも、中盤に出てくる彼の宝箱(?)のほうが印象に残りました。ひっそりとおいてあった色鉛筆がなんともいえない。
この少年、字がかけるんですよね。ちらりと垣間見える彼の過去が余計に悲しいです。
「ブルー・ジプシー」 監督:エミール・クストリッツァ (セルビア・モンテネグロ)
少年院から出所することになった少年を家族が迎えに来るのだが・・・。
ユーモアを感じさせる話のまとめかたも上手くて、この話結構好きです。そして主人公の子供の表情がとても魅力的な1本。あと、「動き」の捉え方が好きです。彼が本当に居心地の良い場所を自分で見つけられる日がくることを祈らずにはいられません。
「アメリカのイエスの子ら」 監督:スパイク・リー (アメリカ)
HIVの両親を持ち、学校でいじめられる少女が知る事実・・・。
お、「RENT」にも出てくるスパイク・リーですね。主演の少女が上手です。最後にしっかりと未来を見据える姿が描かれて、見終わった後の余韻も悪くなかったのが良かったです。
「ビルートジョアン」 監督:カティア・ルンド (ブラジル)
廃材を集めては売っている貧民街の兄妹の姿を描く
我々から見れば逆境にあるのは間違いないのだけれど、この兄妹はそれを感じさせず、お互いに支えあいながら毎日を明るく暮らしていて、そんな彼らの姿になんだかこっちが励まされてしまうような作品。
ブラジルが舞台ということで、個人的にはかなりの思い入れがあります。この妹と同じくらいの歳の頃、僕はこの町に住んでいました。もちろん最後に印象的に映る大都会の方ですが。その当時は何も知らずにのほほんと過ごしていたわけですが、そのすぐ隣に彼らのような子供たちが存在していたという事実に色々と考えさせられました。
日本という国ではほとんど感じることができないことですが、自分の住んでいるところから歩いて行ける範囲内に全く違う世界がある。それなのに、そんなことは知らずに(知ってはいたけど特に何も感じずに、といった方が正確かもしれない)、豊かな生活を送っていた自分がいたのだということを、改めて認識させてくれた作品で、個人的にはこの映画の中では1番忘れがたい作品です。
「ジョナサン」 監督:ジョーダン&リドリー・スコット (イギリス)
戦地での光景がトラウマとなった戦場ジャーナリストの主人公。ある日、森を歩いていると、子供たちが現れ、気づけば自分自身も子供の姿に戻っていた・・・。
ここにきていきなりファンタジー。さすがイギリスです。でもちょっと分かりづらい印象が・・・。設定に凝りすぎた感があったように思いました。イギリスを舞台にして戦場を描くというのは、ちょっとした冒険だと思うんですが、もうちょっと長編でしっかりとストーリーを持たせたほうが良かったかなと。
でもイギリスの風景ってのはあいかわらず魅力的です。LOVE英国なもので・・・。
「チロ」 監督:ステファノ・ヴィネルッソ (イタリア)
窃盗団に入りスリをしている少年の願いとは
1つ前の作品で自分のテンションがちょっと中だるみしてしまったため、あまりのれなかったのが残念なんですが、印象的な映像の多い作品でした。
「桑桑と小猫」 監督:ジョン・ウー (中国)
桑桑(ソンソン)は裕福な家庭に育ったものの、父親の不倫が原因で両親は別居。そんなある日、大切にしていたフランス人形を車の窓から投げ捨ててしまう。
その人形を拾ったのは貧しい老人。彼は自分が育てている孤児の小猫(シャオマー)のためにその人形を持ち帰り、投げ捨てられた際に手が壊れてしまったその人形は小猫の大切な宝物となる。
そんなある日、小猫に悲劇が訪れる・・・。
いや、ジョン・ウーってこういう映画撮る人でしたっけ?チャン・イーモウの間違いじゃないのかと一瞬思ってしまいました。
しかも、本当にベタでベタでしょうがないくらいにベタな展開の物語なんですが、ここまでベタにせめられると、もう見ていて辛くて可哀想で、切なくて、泣くなというほうがおかしいです。なんといっても小猫を演じる少女が泣かせます。
* * *
7作品、それぞれに魅力的なオムニバスでしたが、全てがあからさまに逆境にいる子供たちを描いていたので、個人的には、都会のごく普通のありふれた子供を描いて、そこに、他の作品と共通するようなメッセージをこめるような作品があっても面白かったかなと思います。
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