「The Pirates! in an adventure with scientists」 Gideon Deffoe
the pirates! in an adventure with scientists 2004 |
今年のはじめに大きめの書店で洋書フェアがやってたので、日本にまだ紹介されていなさそうな作品でもあったら読んでみようかと思って発掘した1冊。
英国ではすでにシリーズが3冊発売されていて、「ウォレスとグルミット」でおなじみのアードマンスタジオによって映画化も決定している人気作品のようです。自分で検索した限りでは、この作品&作者をネットで日本初紹介するレビューかもです。
舞台は19世紀。船長をはじめとする海賊達はとにかくハムが大好物。そんな彼らは航海の途中でビーグル号に乗船して調査していた科学者のダーウィンとフィッツロイに出会い、やがて彼らと共にロンドンへと向かうことに。ダーウィンは旅で発見した人間並みの能力を持つ驚異の「マン」パンジー、ミスター・ボボを学会にて紹介しようとするのだが、そんな彼らの元に悪徳司教の魔の手が・・・。
海やロンドンを舞台にとぼけた海賊達が大活躍の爆笑必至の冒険活劇コメディです。
この作品、徹底して児童書を模した作りになっているんですが、使われてる単語も小難しいのを選んでいてターゲットはどう考えても大人。海賊ものの「あるある」ネタを随所に散りばめつつ、ブラックジョークを連発し、19世紀という時代設定なのに、「ジェシカおばさんの事件簿」のテーマを奏でるアコーディオン弾きなどやりたい放題の小ネタの数々が非常に面白いです。
しかも巻末には、海外の児童書によく見られる、「学習ガイド」みたいのがついていて、設問が用意されてるんですが、これまた無茶苦茶な質問の数々。
さらに、巻末には「海賊ファンクラブに入ろう!」みたいな記述と共に、「シリーズ大好評発売中」と言わんばかりに100冊ほどのタイトルリストが。ちなみに、この本はシリーズ第1作目な上に、現在までに実際に発売されてるのは3冊だけです。タイトルリストも細かいんだけど、1つ1つ見てみると、結構面白い!
そんなわけで遊び心いっぱいの構成なんですが、ストーリーのほうも、ハラハラドキドキさせる活劇が用意されていて、それなのに、ひたすらボケまくりな海賊たちが良い味だしてます。
未邦訳はもったいない!!!!!普通に売れると思うんですけどね。米アマゾンでは31人がレビューしてて★が4.5なので、かなりの人気作だということがここからもうかがわれます。
ダーウィンとかフィッツロイとか19世紀ネタをはじめとしてある程度の前提知識があるともっと楽しめるようになってますが、そんなの知らなくても十分に楽しめると思います。
ちなみに、ミスター・ボボというサルは単語カードを並べることで会話が可能なんですが、「カード何枚あるんだよ!」みたいな感じで、やたらと難しい単語を普通に使ってるのがかなりツボ。
英国ユーモア小説は近年でいえば「銀河ヒッチハイクガイド」なんかがありますけど、あちらよりもずっと分かりやすい話なので、万人受けするんじゃないかなと思います。
購入したのは「2 in 1」となっていて、1作目と2作目が1つになった本を買ったので、第2作目も読んでみようと思います。2作目のサブタイトルは「adventure with Ahab」となっていて鯨のイラストが。どうやら海賊達がメルヴィルの白鯨の世界で活躍するみたいで、こちらも面白そう。
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