映画「天然コケッコー」
天然コケッコー 2007年 日本 原作:くらもちふさこ 「天然コケッコー」 |
以前、新聞などで大絶賛されているを読んだのを覚えていて、観てみたいなぁと思っていた作品です。原作は同タイトルのコミックですね。
舞台は島根県の海沿いの田舎町。主人公の中学生、右田そよ(夏帆)が通う学校は小学校と一緒になった全校生徒が小中あわせて6人の小さな学校。そこに、東京から大沢広海(岡田将生)という同学年の少年が転校してきて、そよは初めての同級生に喜び、やがて、それは初恋へと変わっていく。という物語。
全体的には主人公の初恋を描く作品なんですが、それよりも田舎での日常をのんびりまったりと静かに描く作品で、「さりげなさ」がとても心地よい作品でした。
普通の映画(って何だ?)だったらもっと劇的に演出しても良さそうな場面も、うっかりと見落としてしまいそうなくらいにさりげなく描く場面がとりわけ前半にはたくさんあって、主人公の恋愛云々よりも、田舎での子供たちの生活をキラキラと丁寧に切取っているのが個人的にはかなり好きな作り方。
ラスト、映画のクライマックスで、恋愛に重点を置かずに、主人公と学校の仲間たちに重点を置いたところもこの作品の描こうとするものが、中学生の素朴な純愛ものではないというのをよく表していたと思います。この少女にとっては、突然やってきたイケメン転校生との初恋も大切だけど、9年間過ごした校舎と仲間たちの思い出や、生まれ育った小さな田舎町での日常の愛おしさも同じくらいに大切なのです。
これは隠れた名作かもしれませんねー。特に前半部のストーリーがあるでもないゆる~い感じがたまらないです。
夏帆はドラマやCMやらでちょこちょこと見かける女優さんですけど、本人も意識して作ったわけではなさそうな素朴さがとても作品と合っていたように思います。変に演技派じゃないところが逆に良いというか。
彼女が演じるそよというキャラクターも、仲間たち間での最上級生ということもあって、常に周りに気を使って自分のことは後回し、それでも、口下手でついつい余計なことを言ってしまったり、でも自分のことは上手く言えないっていう様子も個人的にはかなり好き。2人の恋の行方も、大人的には「付き合ってる」かどうかもよく分からない中学生っぽさが上手い。
ストーリー的には、まず、あんないかにも都会っ子な感じでしかもイケメンな少年がいきなり転校してくるっていう展開がツッコミどころではあるんですが、この作品では、田舎町も桃源郷的に描かれている部分もあって、全体にファンタジー的要素も強いなぁという印象でした。でもって、田舎礼賛てわけでもなくて、大人たちが意外とエグい(でも、その扱いもやっぱりさりげない)のもこの映画の面白いところでした。
てか、個人的に最大のツッコミどころは、主人公達には近い年齢の先輩はいないんですかねぇ。イケメンが転校してきたとなったら、先輩達が見に来るとかそういうこともありそうな気がするんですが。
そんなツッコミはありつつも、1つ1つのシーンがなんだか心に残る良い映画だったなぁと思います。印象的だったのは、スタンドバイミー的な海までの散歩、さっちゃんのお見舞い、いきなりのキス(そのためだけに初キス!?)、祭でさりげなくぬいぐるみを渡す広海(←この場面のさりげなさにしびれた)、ボタンを縫い付けるときの会話あたりでしょうか。
あと、東京への修学旅行で、「東京が苦手だということが分かっただけでも勉強」という台詞がやたら残りました。
くるりの歌う主題歌も良かった!
これは意外な掘り出し物だと思います。派手な事件ばかり起きて、やたらとドラマティックに盛り立てて、人が若くして死んでしまうような純愛ものばかりが流行ってますが、こういう作品こそ、もっとヒットしても良さそうなのにねぇ。
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