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2008年7月12日 (土)

「きみの友だち」 重松清

きみの友だち (新潮文庫 し 43-12)

きみの友だち

重松清

新潮文庫 2008.7.  

今月末から映画が公開される作品が、あわせるようにして文庫化。以前からずっと読みたかった作品なので、早速読んでみました。

雨の日に下校中の事故で足を怪我してしまい、松葉杖が手放せなくなってしまった小学生5年生の少女、恵美。彼女は、その事故がきっかけで、クラスの「みんな」の輪から外れるようになり、同じように体が弱くクラスに馴染めずにいた同級生の由香と親しくなるのだが・・・。

作品は、各話ごとに主人公が変わっていく全9話の連作短編。恵美の小学生時代から中学時代のクラスメートたちが主人公になる話と、恵美の歳の離れた弟のブンの小学校から中学時代のクラスメートたちを主人公にした話が交互に描かれていく。

これはついに重松ベストがきてしまったか!?と思わせるくらいに良い作品でした。

「友だち」というテーマがあまりに身近だということもあるんだろうけど、ここに出てくる物語、恐らく誰にとっても、自分が当事者ではなかったにせよ、これまで生きてきた中で経験したことのあるできごとばかりではないでしょうか。

「友だち」とは一体何か、「みんな」との距離のとり方、本当の正解なんてない問題なだけに、読みながら、自分が生きてきた過去を振り返り、自分自身の「友だち観」を何度も問いただすような作品でした。

この作品、二人称の「きみ」が使われていて、語りかけるようにして物語が展開することもあって、全体的に子供たちを温かなまなざしで見守るような雰囲気があります。そして、その「きみ」が自分ではないかと、読者がギクリと思う効果もあるんだろうなと。

作品の構成として好きだったのは、恵美とブンの物語が交互に語られること。しかも、2人の学年が同じときの物語が交互に出てくるのが面白いなぁと。

これ、映画化したらきっと良い作品になるだろうことは確実なんだけど、全部のエピソードは盛り込めないよねぇ。そうなるんだったら、連続テレビシリーズにしてもらったほうが嬉しいなぁ。

僕の話があるとしたら、どんな感じなのかな。なんてふと思ってみたり。

最後に、各話にちょっと(?)ずつコメント。

・「あいあい傘」

ストーリーは上述のもの。堀田ちゃんの発言にドキドキでした。

僕の通っていた小学校でも縄跳び大会があって、うちのクラス、先生がスパルタ的にやたらとこの縄跳び大会に情熱を燃やし、体育の授業も、休み時間も、全員強制的にずーっと縄跳びばかり。そのおかげで全員がなんとか飛べるようになりました。

しかし当日、一番特訓した運動の苦手な少年が体調不良で欠席。うちのクラスは特訓の甲斐あって、なんと学校で一番長く連続で飛び続け(300回とか)表彰されることに。嬉しいんだけど、どこかしこりが残る思いをしたのを思い出しました。

ちなみに縄を回す係は実は、かなりハードな上に、瞬時の状況把握術が必要なため、運動が得意な子がやったほうが長く続きます。

・「ねじれの位置」

なんでもできるパーフェクト少年のブンちゃん。しかし、何をやらせても彼よりもさらにできてしまうモトくんが転校してきて・・・という話。

このエピソード、ここでブンが味わった「負け」の苦しみが結果的に彼を強くしたんだなと思います。

・「ふらふら」

第1話目で最もインパクトのあった堀田ちゃんが主人公。常に「みんな」の人気者であろうとする少女の話。

うーん、自分なんだか堀田ちゃん絡みのエピソードがやたらと印象に残ります。別にこのタイプの子ではなかったんですけどね。

これ、昨日レビューを書いてる「あしたの私のつくり方」で、主人公がプロデュースしたタイプの子だよね。

このエピソード、最後の場面まで、ずーっと、堀田ちゃんがちゃんと約束守るのかどうかが気になってしまい、かなりやきもきさせられました。

・「ぐりこ」

昔の親友が今は遠くの存在に。

とりわけ小学校時代の友情って、ものすごく仲が良かったのに、クラスが変わってしまっただけで、なんとなく疎遠になってしまうことってよくあったなと。中学くらいになると、全然違うグループに属するようになったりして、小学校のときの友情は一体どこへ?とふと思ってしまうこと、自分にもありましたね。

・「にゃんこの目」

いや、学内でいちゃつくのはどうかと思いますよ。

・「別れの曲」

ちょっとイタイ感じの部活の先輩の話。

佐藤君、がんばれ!!といいたくなるエピソードです。

実際、同じクラスに彼のような人がいたら、きっと僕は1年を通して、事務的な話以外で話すことはないんだろうけど。(御察しの通り、僕は超文化系少年でしたから。)

この話の恵美がとても良い。

・「千羽鶴」

誰のための千羽鶴か。難しい問題ですね。

この主人公、ちょっと自分と似たところがあるなぁなんて思いました。

前話とは打って変わってこの話の恵美はあまり好感が持てないんだよね。

・「かげふみ」

全体の中ではちょっと地味な印象。モトくん、良いキャラなんだけどね。

この2人、ちょっと「ちびまる子ちゃん」の大野君と杉山君みたいだよね。

このエピソード、「ねじれの位置」があったからこそ、とても心に迫ります。

・「花いちもんめ」

最終話よりもこっちのほうで不覚にもウルっと。

しかも、またまた堀田ちゃんにやられました。

「花いちもんめ」、結構シビアな遊びだとは当時から思ってたけど、子供時代の遊びって割とこういうの多いよね。

・「きみの友だち」

この作品全体の構成が見えてなるほど納得。

重松清としては珍しい大団円ですね。すがすがしいラストで、この話を読むと、また最初から読み直して、一人一人の「友だち」に会いたくなります。

「みんな」の輪から飛び出して、「1対1」の関係を持ってくれた子たち。たとえ一瞬でも、忘れられない友達とのエピソードってありますよね。なんか、このまま勢いで、過去の友だちエピソードを語りそうですが、話はつきないので辞めときます(笑)

ちなみに、僕、この作品の語り手、全然違う人を想像して読んでました(←ありがちなパターンです)。

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