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2008年7月26日 (土)

「好き好き大好き超愛してる。」 舞城王太郎

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫 ま 49-6)

好き好き大好き超愛してる。

舞城王太郎

講談社文庫 2008.6.  

やたらとインパクトのあるタイトルの作品ですが、数年前に芥川賞候補になったときからちょっと気になっていた1冊。舞城作品はこれで2作目です。

作品は連作短編のようになっていて、恋人の柿緒を病気で亡くしてしまった小説家の主人公の物語の間に、SF的、幻想的な色合いの強い短編が挿入されるという形式の作品。

全てに共通するのは「愛する人の死」。

この作品は、世にはびこる、感動を押し売りするためだけに恋人を死なせるようなヒット作品の数々へのアンチテーゼになっているようで、死にゆく恋人を前にして、ただただ「好き好き大好き超愛してる」としか言えない思いをギュギュっと凝縮して、「愛」ということを考察していく1冊でした。

ただ、僕はお子様なので愛がどうのこうのという話題はとんと疎く、作品の意図はくめても、「そうなのだよ!」と言えません・・。そもそも「愛」がどうのって作品そのものが苦手ですからねぇ。

この文庫本、装丁が微妙に凝ってて、紙質も良いし(普通のより白い&200ページもないのにちょっと厚い)、ラメっぽい中表紙もついてて、ちょっと凝った半透明ピンクの帯がついていたりして、こだわりの感じられる1冊です。ただ個人的には紙もめくりづらいし、フォントも改行の仕方もちょっと読みづらかったです・・・。

舞城作品はとにかく一段落が長いですね。テンポの良い文体なので、そこまで気にならないんですが、会話の多さと段落の長さ、そして、面白い擬音語の使い方は相変わらずでした。

この作者の真面目なことを語りたいけど、ちょっと天邪鬼でひねくれた文を書いてしまいましたっぽい感じが、素なのか、狙いなのかがまだちょっとつかみきれてませんけど。

最後のほうで、恋人の死もパンにマーガリンを塗るのも人生において平等にやってくる一瞬であるとして、だからこそ、全ての一瞬が同じ重みを持って、ほんの小さな日常のひとコマが、恋人の死と同じだけの意味を持って小説の題材となりうるのだということを書いている部分があって、そこがとても印象に残りました。

よく「何も起こらない」小説というのがありますが、ドラマティックな事件があるわけでもない些細な日常を描いているだけの作品でも、極上のミステリ小説のようなハラハラや、大作映画のような感動を与えてくれたりする作品があるのは事実で、僕はそのような作品に出会うとなんとも言えずに嬉しくなってしまうので、「そうそう!!」と頷きながら読んでしまいました。自分が何か書くんだったらそういう作品を書きたいんだよね。

メインになっている小説家の話以外の短編が何気に結構面白くて、幻想SFのシュールな設定も楽しませてくれるんですが、ちゃんと作品の主題とリンクしているのも良かったです。「最終兵器彼女」を連想させる「ニオモ」なんか凄く面白かったです。

<参考過去レビュー>

「世界は密室でできている。」 舞城王太郎
僕が読んだ舞城作品1冊目。

「介護入門」 モブノリオ
この作品が候補になったときの芥川賞受賞作品。

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