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2008年8月14日 (木)

映画「アクロス・ザ・ユニバース」

Across the Universe

across the universe

2007年

アメリカ

ジュリー・テイモア監督がビートルズの楽曲33曲を使って撮影したミュージカル映画というだけで、他の情報は何も得ずに、これは絶対に見なければ!と思った作品。

舞台は1960年代。リヴァプールの造船所で働く主人公ジュードは、未婚の母と2人で暮らしていたが、米兵だった父に会うためにアメリカへと渡る。大学の職員として働く父と再会したジュードは、そこでマックスという学生と知り合い意気投合。やがて、新しい人生を探しにマックスと2人でNYへと向かう。

NYでは若き芸術家たちが集うグリニッジ・ヴィレッジのアパートで、歌手やギタリストたちと共に過ごし、やがて、彼らのアパートにベトナムで恋人が戦死したマックスの妹のルーシーがやってきて一緒に暮らすようになる。ジュードとルーシーは恋に落ちるが、やがて、マックスのもとに徴兵の召集がかかり・・・。

60年代のNYを舞台に、イギリスから来た青年ジュードとルーシーの恋を中心に、アーティスト志望の若者達や、ベトナム戦争という時代に翻弄される若者達の姿をビートルズのナンバーと、圧倒的なビジュアルイメージにのせて描き出すミュージカル映画。

テイモア監督は、ミュージカル「ライオンキング」での驚きの顔出し演出(しかも動物に見える)に度肝を抜かれ、シェイクスピアで最も残酷な悲劇を映画化した「タイタス」では、驚きの時代考証メチャクチャのスタイリッシュ演出に脱帽し、「フリーダ」でのシュール映像の世界と女性画家見つめる眼差しにこれまた驚嘆し、毎度毎度驚かされてばかりですが、今回も、またまたまたやってくれました!

序盤は、何か割と普通の映画にしてるんだなぁと思って見ていたら、中盤以降、強烈なインパクトのあるアート的映像の嵐。見世物小屋ではシュヴァンクマイエルかと見紛うばかりのシュール映像も炸裂してました。それでいて、それらが、シュールな幻想世界ではなくて、映画の中でしっかりと現実世界に足をおろしているという構成がまたまた非常に上手い。

ストーリーは芸術家志望の若者達が集うってこともあって60年代版RENTといった雰囲気もあってなかなか面白かったです。ワイワイガヤガヤする青春ストーリーの楽しさと、辛い現実が程好く描かれたのが良かったなと。

ま、恋人に素晴らしい歌とともに旅立ちを告げた直後に、一目ぼれしちゃうのはどうかとか、「LOVE&PEACE」が現代的感覚だとちょっと今さら感があるかなぁとか、2時間越えるのは長いかなぁとかありましたが。

全曲ビートルズを使ったミュージカルシーンも、出演者達の歌が抜群に上手くて観ていて気持ち良いのだけれど、それ以前に、選曲と、それを使うタイミングがまた絶妙で、さらには、場面に合わせてとても上手いアレンジをしていて、かなり見ごたえのある作品でした。

使われてる曲の中で、主人公がジュードということで、どの場面で使われるのかが一番気になった「Hey Jude」。これが、なかなか意外なところで、意外な人が歌ってました。この場面、かなり好きです。

明るくて楽しかった場面はボーリング場での「I've just seen a face」。カラフルな映像で楽しませてくれました。

「let it be」のゴスペルアレンジが何気にかっこよかったんですが、その前のデトロイトの暴動のシーンは、ミュージカル映画「ドリーム・ガールズ」を思い出させますねー。

演出が面白かったのはなんといっても、「I want you」。軍の入隊の曲にしたてあげるとは思ってませんでしたが、映像がとにかく面白い!!検査してるとことか映像に見入ってしまいました。

「come together」の場面では、NYの町の人たちの群舞がなかなかお気に入り。この作品、ひっそりとダンスシーンがしっかりと作られていて、見ごたえあります。あ、ここは歌も抜群に良いです。

「helter skelter」が何度か出てくるんですが、歌っているセディ役のデイナ・ヒュークスの熱いパフォーマンスが鳥肌モノ。この方、舞台でジャニス・ジョップリンの役を演じたことがあるそうで、なるほど納得。

観始めてちょっとしたくらいで、「あ、ラストのクライマックスは多分あの曲使うんだろうな」と思ったんですが、予想的中。ちょっと安易な選曲&ラストの盛り上げだったような気もしますが、幸せ気分になれる曲なので満足。

ほかにも歌も映像も印象的なシーンはいっぱいあって、「let it be」ゴスペルアレンジが良かったとか、U2のボノが愉快な役で出演して歌ってたのが面白かったとか(エンディングもボノでしたね!)、苺と爆弾を重ね合わせたりする想像力には完全ノックアウトだったりしたのですが、長くなってしまうので、この辺で。

イギリス好きとしては、主人公の英国青年が喋るたび、歌うたびに、UKな発音にしびれ、リヴァプールの風景にしびれ、なかなかツボの多い作品でもありました。てか、ジム・スタージェスははんぱなく歌声が良い!てか、アメリカ青年マックスを演じたジョー・アンダーソンも英国人で、歌うと英国の風が!

全編ビートルズ曲使用とか、テイモア監督の独特の映像演出とかで人を選びそうな作品ですが、個人的にはDVD化したら購入して何度も音楽シーンを観ることになりそうな1本でした。劇場を出た後、ビートルズの曲を口ずさみながら階段を下りた自分なのでした。

テイモア監督、次回作は、舞台版ミュージカル「スパイダーマン」だそうで、またまた驚愕の演出を見せてくれるんだろうね。楽しみです。

* * *

参考過去レビュー

映画「フリーダ」
テイモア監督の映像美が炸裂する女性画家の伝記映画。

ブログ記事はないけれどテイモア監督は「タイタス」もかなりオススメ。
シェイクスピア好き、ミュージカル好き、洋楽好き、ディズニーも好きな自分としては、
テイモア監督の選ぶ題材が毎回毎回やたらとツボで困ります。

舞台「RENT」
NYの芸術家志望の若者を描くロックミュージカルというとこでちょっと似てる。

映画「ドリーム・ガールズ」
上記の記事内でちょっとだけふれたので。

「フィンガー・ボールの話のつづき」 吉田篤弘
ビートルズがモチーフの短編小説集。

* * *

追記8月21日

サントラ買いました。

輸入盤のデラックス版。映画の曲が31曲全て収録されてます。かなり良いです。ただちょっと残念なのは、「All you need is love」で「She loves you yeah ~」って入る声が抜けてます・・・。

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コメント

コメントありがとうございました!
ビートルズ好きとしては、見逃せないですよね。

デイナ・ヒュークス、ジョプリンを演じてるのですか。なるほどパワフルです。
UK風なのは、巻き舌っぽい歌い方ですか? あの歌い方は、ちょっと気になってたのです。アメリカに来たイギリス人の役ですから、わざとかなーとは思ってたのですが。

テイモア監督、期待を裏切らないですね。(「タイタス」、好きです!)

投稿: ボー | 2008年8月14日 (木) 20時59分

>ボーさん

コメントありがとうございます!

ビートルズ×テイモア監督×ミュージカルということで
とても楽しみにしてた作品です。

自分がUKっぽさを感じたのは
どちらかというと、母音の響きですかねぇ。
ちょっと暗めというか。言葉では表しづらいんですが。
英国発音と米国発音だと母音の種類が大分違うんです。

テイモア監督作品は今後も目が離せません!!

投稿: ANDRE | 2008年8月15日 (金) 01時02分

こんにちは☆はじめまして。
コメントありがとうございます♪

>全曲ビートルズを使ったミュージカルシーンも、出演者達の歌が抜群に上手くて観ていて気持ち良いのだけれど、それ以前に、選曲と、それを使うタイミングがまた絶妙で、さらには、場面に合わせてとても上手いアレンジをしていて、かなり見ごたえのある作品でした。
本当におっしゃる通りだと思います。音楽の使い方、タイミング、アレンジが絶妙なので、飽きずに観れるんですよね。

この作品の監督の次回作は舞台版スパイダーマンなんですか?どんな演出をするんでしょうね。気になります♪

今後ともよろしくお願いします。

投稿: dai | 2008年8月16日 (土) 08時20分

>daiさん

コメントありがとうございます!

2時間、ちょっと長いなぁと思いつつ、
最後まで観られたのはやはり音楽の使い方の上手さなんだと思います。

「スパイダーマン」を舞台化するというだけで
どのようになるのかが気になりますが、
テイモア監督の手にかかるとなると
どれだけ奇想天外な舞台になるのだろうかとワクワクします。
日本でも公演されると良いなー。

こちらこそ、よろしくお願いします♪

投稿: ANDRE | 2008年8月17日 (日) 00時12分

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