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2008年8月 9日 (土)

映画「ゼロ時間の謎」

ゼロ時間の謎

l'heure zero
(towards zero)

2007年

フランス

原作:アガサ・クリスティ
 「ゼロ時間へ」

パスカル・トマ監督による、フレンチ版アガサ・クリスティ第2弾。前作がそこそこに楽しめたので、今回も気になっていました。

テニスプレイヤーのギョームは新妻のキャロリーヌとともにブルターニュの海辺にある叔母カミーラの別荘を訪れる。別荘にはギョームの前妻であるオードも招待されており、2人が親しげに話をしたりするものだから、キャロリーヌはかなり不機嫌。

別荘には叔母の世話をみているマリや親戚のトマ、キャロリーヌの友人のフレッドなど多くの客人が集りバカンスを楽しんでいたが、ある晩、夕食に招待された弁護士のトレヴォースがその夜、心臓の発作のために亡くなり、さらに、その翌晩、別荘の主人のカミーラが何者かに殺されてしまう。

たまたま休暇で同地を訪れていたバタイユ警視はカミーラの遺産目当てでの犯行ではないかと、調査を始めるのだが・・・。

単に事件を解決するだけじゃなくて、ちょっとしたどんでん返しみたいのがあって、なかなか面白かったです。ま、この辺りは、映画がどうのっていうよりかは原作勝ちなんだろうけど。

パスカル・トマ監督のクリスティは前作のほうが面白かったかなぁ。前作はユーモアの要素のある「おしどり探偵」を選んでいたので、それがフランス映画的なユーモアな空気とよくあっていて面白かったのですが、今回は王道サスペンスで、往年のフレンチサスペンスを感じさせるギラギラした感じはあったのだけれど、淡々とした映画化だったので、面白いには面白いけれど、前作のような魅力にちょっと欠ける気がしました。あまりにオーソドックスというか。

ブルターニュの別荘はかなり良い環境で、自分もあんなところで夏を過ごしてみたいなぁと思ってみたり。

この作品、ちょっと面白いのは、ミステリなんですが、実際に殺人が起こるのがかなり中盤になってから。事件発生以降はひたすら解決に終始する感じで、前半部分で事件前に各キャラクターを丁寧に丁寧に、皆が怪しくなるような雰囲気で描いていくんですが、先に書いたように、淡々とした演出で、ちょっと退屈だったかなぁ。

でも、色恋関係のゴタゴタ具合がちょっとフランスっぽい。

この監督のクリスティは前作もそうだったけれど、英国ミステリの格調高い雰囲気があまりなくて、しっかりとフレンチな雰囲気に変えてしまっているのは上手いなぁと思います。

いきなり登場したおっさんが謎の大活躍をしてしまい、そんな解決の仕方!?と思ってしまったのですが、その辺りもよく捻られていて、伏線もうまく生かされていて、最後の謎解きは、最後の最後まで楽しませてくれました。

てか、犯人、必死すぎ!!

しかしながら、オードはとんでもないね。なんだか、可哀想なんだか、良かったんだが、嫌な奴なのか全くつかめません。犯人やら真相やら、みんなの過去やらを考えても、メインのテニスプレイヤー&新旧妻達のキャラが誰一人として共感できないってのが一風変わった作品ですよね。

てかさ、1つどうしても突っ込みたいのは、普通、フレッドは招待されないだろ!

監督にはフレンチの香るクリスティシリーズをこのまま映画化し続けて欲しいなと思いますが、どちらかというと、前作のような路線を希望。

* * *

参考過去レビュー

映画「アガサ・クリスティの奥さまは名探偵」
同監督によるクリスティ映画化シリーズ第1弾。カトリーヌ・フロがはまり役。

映画「ぼくを葬る」
この作品で美貌のテニスプレイヤーを演じるメルヴィル・ブボー主演作品。

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