映画「崖の上のポニョ」
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崖の上のポニョ 2008年 日本 |
ジブリの宮崎駿最新作です。あのテーマ曲が頭から離れず、ついに劇場まで足を運んでしまいました。もともと観る予定だったけど。久々に記事が激長なので、適当に流しながら読んでください。
主人公はデイサービスで働く母親のリサと貨物船の船長をする耕一を父に持つ5歳の少年、宗介。ある日、町から離れた崖の上に建つ自宅近くの海辺で人のような顔を持つ小さな魚を発見し、彼女にポニョという名前をつける。海底に暮らすポニョの父親のフジモトは地上に出てしまったポニョを海に連れ戻そうとあの手この手で宗介に近づくのだが・・・。
そして、魔法後からで人間になり、宗介のもとにいたいと願うようになるポニョが巻き起こす騒動とは。という物語。
はじめに言いますが、僕は「ジブリ世代」といっても良い世代で、小学校の頃に、「トトロ」~「豚」の5作品が公開され、今でも自己紹介代わりに「好きなジブリ何?」という話題で皆が盛り上がれる環境で育ちました。
で、まぁ、周囲で共通する意見は、「近年のジブリはちょっと・・・」というものなんですが、今回のポニョはどうやら様子が違う感じだということでかなり期待してました。ちなみに一番好きなのは「ラピュタ」&「魔女」がほぼ同率。
しかーし、今回の宮崎監督、80年代を軽く飛び越えて、「パンダコパンダ」時代まで遡ってしまいましたね・・・。でもって、近年のメッセージ性の強さもちらほら見え隠れ。
観ながらストーリーの色々な部分に疑問を感じてしまい、とりわけ、未曾有の大惨事が起きていて、死者さえいるのではないかという状況を、あまりにのほほんと描いているのが気になってしまった自分は、きっと「子供」の視点を持ってないんだろうなぁと思ってしまいました。
ま、小学生時代から僕はそういうのを気にして突っ込むタイプの子供だったけど・・・。「え、水道水?」とか、「あれ、帽子も?」とか確実に突っ込んだだろうね。
でもね、ポニョはとにかく可愛い!ずるいくらいに可愛い。個人的には魚のままでいてほしいけど。キャラとしてはメイとトトロを足して2で割ったような感じだけど、全体に、ポニョのキャラだけで最後まで押し切ってしまったような印象のある作品でした。
あと、キャラとしては宗介が面白い。メイを守ろうとしたサツキでさえ、わんわんと泣いてしまったのに、5歳のこの子は、リサをしっかりとサポートし、母親を助けるために大海原に漕ぎ出す勇気を持って、魔法がなくなってもポニョを守りながら前へ進む力を持っているんですから!でもって、こんな彼が追い詰められたときに、その一筋の光となったのが、ちょっとした誤解を含んでいたとはいえ、トキさんであったというのもなかなか面白かったです。
「子供向けに作りました」なんてわざわざ言う作品は大抵の場合、「子供向け」を履き違えていることが多いんですが、なんとなくこの作品もそんな例な気がします。子供が喜ぶような瞬間瞬間の動きや会話を重視して、浅くなってしまってはいけないんです。
色々な設定も、小難しい話を全部避けてしまったために、なんだかよく分からなことがあまりに多いのも気になるところ。子供向けだからって説明不足はやはり良くない。トンネルが怖いのは単に暗いからってだけなのか?とか。海関係全体の設定とか。
しかもそうしたにもかかわらず子供に分かりづらい箇所が多かったようで、後ろの座席に座っていた小学校低学年くらいの子供は観ている間中、親に「ねぇ、○○って何?」「これ、誰?」を連発。そもそも両親を名前で呼ぶということを理解できず、リサと宗介の関係でさえ把握できてなかったっぽいです。
なんか、パンフを読んだら、フジモトは海底2万里の登場人物という設定だとか。むしろ、フジモトが海で暮らすようになった物語を冒険活劇的に描いて欲しかったなぁとか思ったのは僕だけでしょうか・・・。
あと、この作品はハッピーエンドだと言われているけれど、僕にはそうは思えません。実際問題、5歳の子供なんて、それこそ、将来を見通して返事をすることなんてないはずで、作中で「試練」なんて呼ばれ方をしているものだって、宗介の返事なんて聞かなくても容易に想像できます。しかし、それにしては、彼らの課しているできごとの責任があまりに大きすぎるように思ったのです。
恐らく、リサとポニョの母が長時間話をしているというのは、割と現実的な大人の問題に関してなんだろうけど、リサは夫を抜きにして、えらく大胆な決断を独りでしてしまったんだなとか。
ま、そもそも、何が「試練」なのかよく分からなかったんですが・・・。しかも最後はポニョのほうから勝手に動いてしまってるので、もはや宗介の覚悟がどうのこうのって話でもないし。
個人的には、宗介にも帰る家があるように、ポニョも家族のもとに帰るというほうがずっと良い話だと思うし、ポニョはなんらかの形で、叱れるような場面があってほしかったなと。わがまま放題な自分の欲求がとがめられることなく最後まで満たされてしまうってのはちょっと・・・。しかもあんな惨事まで引き起こしてるのに。
全体にファンタジーとして見れば良いんだろうけど、それにしては、他のディテールがあまりにも現実的に描かれすぎてるんですよねぇ。
なんか「人魚姫」って、ディズニーの「リトル・マーメイド」もラストが微妙で、やっぱりあの悲しいラストがあってこそ生きてくる話なのかもなぁなんてちょっと思ってみたり。
なので、全体的に後半の展開がちょっと微妙だったのですが(ポンポン船が大きくなるとか、そういうのはかなり楽しめましたよ)、ま、なんだかんだで楽しく最後まで観られたので良かったです。
後半では、ボートに乗った子連れの夫婦と会うシーンが結構印象的。
映画を通して一番好きな場面は父親とライトで通信する場面かなー。でもここは、字幕で表現した上に、ローマ字表記だし、通信の意味も分からないだろうし、最も子供を置いてけぼりにしている場面だってのがちょっと皮肉。
なーんてことをつらつらと書いてると、改めて、お前が子供心を持ってないだけだとか言われそうですが、僕は小学校低学年で観た「トトロ」はものすごく退屈で、20歳をすぎてはじめて面白いと感じたり、小学校時代には劇場鑑賞した「おもひでぽろぽろ」や「紅の豚」が大好きだったりしたので、子供の頃に観ても似たような感想を持った気がします。
あと、キャラとしてはリサの母親像はこれまでのジブリの母親の中では一番好きかも。山口智子の声もよく合っていたと思います。
声といえば、宗介の声は朝ドラ「芋たこなんきん」の隆くんの子でしたね。朝ドラのときから、非常に可愛い子役っぷりが印象的で、たくさんいる子役の中でもとりわけ印象に残る役でしたが、声の演技でも、その存在感は健在でした。
手描きアニメーションの方が良いなんてことは、CGアニメのことを記事で書く際に割とこれまでも触れてきたことなので、今さらどうこう言いませんが、個人的には「魔女の宅急便」や「ラピュタ」みたいな絵のほうが好きかなぁ。ディズニーの手描き復活作品「the princess and the frog」もかなり気になるところです。
同じような作品はたくさんあっても仕方がないというのも分かりますが、「ナウシカ」、「ラピュタ」、「魔女」、「豚」時代のテイストの作品を最後に華々しく作ってもらいたいなぁと思うんですが、宮崎さん、ダメですか??
なんてマイナスなことをたくさん書きつつ、鑑賞後は「ぽーにょ、ぽーにょ、ぽにょ」と歌ってしまう、素晴らしい主題歌を作った久石譲氏にはもう全く脱帽なのでした。僕もパペットを持ちながら歌いたい!!
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コメント
こんばんは。
TBいただき、ありがとうございました。
私は宮崎監督作品では、ナウシカとラピュタが同率くらいですね。オリジナルでなければ、カリオストロも大好きなのですが。
あのころの宮崎監督作品にもメッセージはありましたが、押し付けがましくなく、どちらかと言うとユーモアの方が大きく、本当に見ていて楽しかったですよね。
最近では、ピクサーアニメ(フルCGですが)の方が、ストーリーの中にメッセージと笑いを含んだ形は、むかしの宮崎作品に近い感じがしますね。
投稿: Matthew | 2008年8月14日 (木) 01時36分
>Matthewさん
コメントありがとうございます!
子供の頃に見ていたものが美化されているのかなと思うのですが、
初期のジブリ作品はやはり今観てもワクワクしてしまうんですよね。
カリオストロは文句なしの傑作です☆
ピクサー作品、確かにあのワクワク感はジブリに近いですね。
「wall e」の公開が今から待ち遠しくて仕方ありません。
投稿: ANDRE | 2008年8月14日 (木) 19時01分