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2008年8月 1日 (金)

映画「僕のピアノコンチェルト」

僕のピアノコンチェルト

vitus

2006年

スイス

実在の天才ピアノ少年が出演する映画ということで、ずっと気になっていた1本です。スイス映画というのもちょっと新鮮。

主人公の少年ヴィトスは6歳にして、幼稚園で環境問題を語り、ピアノの難曲を弾きこなす超天才児。息子の才能をもてあまし、上手く接することができずにいる両親であったが、田舎に暮らす祖父はヴィトスのことを1人の少年として扱い、ヴィトスも祖父と過ごす時間を楽しんでいた。

やがて、12歳になったヴィトスは、天才的なピアノの腕前にはますます磨きがかかり、飛び級により高校に通うようになっていた。父は自らが開発した補聴器のヒットにより、会社の重役となり、一家は裕福な暮らしを送っていたが、ヴィトスは、天才であるがゆえの悩みを抱えていて・・・。という物語。予想外に「痛快」な作品。

なんかタイトルから勝手に天才ピアノ少年のサクセスストーリーを期待していたんですが、ピアノはそれほど本編の筋に関わるわけではありませんでした。この邦題、かなりミスリーディング・・・。

この作品が描くのは、計測不可能なほど高いIQを持った少年が、「普通」でありたいと願い悩む姿と、彼を優しく包み込む祖父との交流、そして、あっと驚く天才ならではの大活躍というもので、ピアノがどうこういうよりかは、天才少年のアイデンティティ発見の物語といった感じです。

ただ、主演のテオ・ゲオルギュー君が正真正銘の天才ピアノ少年だということで、彼の見事なピアノ演奏が要所要所で作品に華を添えています。

昔、ジョディ・フォスターが監督した「リトルマン・テイト」という作品も有りましたが、こういう天才少年モノの定番通り、どんなに大人顔負けの頭脳を持っていても、心は年齢相応だというところにアンバランスが生じてしまうというのがこの作品でもよく描かれていて、とりわけ、初恋の下りなんかは、彼のお子様っぷりがとてもよく描かれていたように思います。

ただ、この作品の面白いところは、そういうよくある天才少年モノが割と重いトーンで彼らのアイデンティティに迫っていくのに対して、終盤は痛快ともいえるくらいの意外な展開で進んでいくところ。この「痛快」さは、やはり、彼の「子供っぽさ」からくるものなんだろうね(手段とかもろもろの点においても)。

ただ、ちょいとテンポが悪いかなぁ。という感じは否めませんでしたが。

主演のテオ君が、本人自身が似たような境遇にあるにもかかわらず、嫌味のない子供っぽさを残していて(コックピットで親指をあげるときの表情なんか本当に素晴らしい)、彼のためにある作品という雰囲気に仕上がっていたのも嬉しいところ。

他のキャストは、やはりなんといっても祖父を演じたブルーノ・ガンツ。この人は本当に上手いですねぇ。ヒトラーと同一人物とはとても思えないです。

神童と呼ばれる人たちって、子供時代は結構マスコミに取り上げられますが、その後、大人になってからの活躍っぷりがあまり聞こえてこないのは、やはり、彼らをとりまく周囲の環境が、天才という存在と上手く向き合えないんだろうなというのを感じさせます。この作品の祖父のように、ありのままの「普通の子供」として向き合えればいいんだろうけど、実際、難しいんだろうなぁと。

映画では、普段は斜に構えた感じの天才少年が、祖父の庭で飛行模型を持って無邪気に走り回る姿がとても印象的でした。

ピアニスト、という点でもこの辺りは難しい問題で、どんなにテクニックが大人顔負けでも、音楽というのはテクニックだけではなくて、感情表現なんかもかなり重要な要素だと思うわけです。技巧的な曲を弾きこなせば確かに上手いけれど、たとえば、技術的にはたいしたことなくても、弾きこなすが極めて難しい曲なんてのもあるわけで、この主人公をはじめとして、彼らがそういう曲も弾きこなせるのかどうかというのはいつも気になるところ。

そうそう、スイス映画ということで、英仏独の言葉が入り乱れる会話がなかなか面白いですね。実際、こんな感じでみんな会話してるんですかねぇ。

* * *

<参考過去レビュー>

「奇跡のシンフォニー」
記憶に新しい、「天才音楽少年」の映画。こっちは完全ファンタジー。

「4分間のピアニスト」
同時期に公開されてたドイツのピアノ映画。

「ヒトラー 最期の12日間」
この作品で祖父を演じたブルーノ・ガンツの熱演に釘付け。

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