「下北サンデーズ」 石田衣良
下北サンデーズ 石田衣良 幻冬舎文庫 2008.8. |
この8月の幻冬舎文庫は、映像化フェアでもやってるのかと思うくらい、映像原作作品が多く文庫化していたのですが、これもそんな1冊。数年前の上戸彩主演のドラマ版も全部見てました。
主人公の里中ゆいかは長野から上京してきた大学生。一度だけ観た舞台に感動して、上京と同時に、下北沢の小劇団「下北サンデーズ」の門をたたく。
劇団は脚本も書く団長のあくたがわ翼を中心に個性的な仲間たちが在籍しており、ゆいかは、入団早々、新作で重要な役を与えられることになる。ミニミニ劇場からはじまり、下北沢にあるランクの異なる4つの劇場をステップアップしていく「劇場すごろく」の頂点である松多劇場での公演を目指す弱小劇団「下北サンデーズ」を描く青春演劇小説。
ドラマと原作だと、メインのストーリーは大体同じですが、結構違う点も多いですね。特に、上演作品とか。ドラマ版は、今ひとつまとまりに欠けた部分があったと思うんですが、もしかしたら話数が多すぎたのかもしれません。小説の章に合わせて、双六が進むのと連動して全5話くらいにしたほうが引き締まった気がします。
でも、原作の方も、登場人物がかなり多いのに、結構短いページ数でかっとばしていく感じになってしまって、上手く消化しきれてないような印象も。ま、それでも結構面白く読んでしまったんですが。
小説としては、劇団系のコネタが結構多くて、僕なんかはそんなに詳しいわけではないから半分も分かってないんだろうけど、それでも、「お、これは!」と思うネタがちらほら。「おこさま企画」の田中ヤマダとか絶妙すぎ。
全体的にとんとん拍子過ぎなストーリーですが、そんなことよりも、もっともっと気になったのはラストシーン。主人公のとる行動は、個人的には完全に「なし」です。あまりにも、自己中心的というか。
あと、八神君のキャラが結構好きだったんですが、ラストの八神君もかなり淋しかったです・・・。
そんなわけで、結構楽しく読んでたのに、最後の数ページで一気にテンションが下がってしまい、なんともいえない読後感になってしまったのがちょい残念。
あと、ドラマ見てたせいで、キャラクター像が完全に固定化してしまって、主人公は上戸彩になってしまうし、あくたがわは佐々木蔵之助だし、サンボはカンニング竹山だしで、読みながら原作なのに、ドラマのノベライズ本を読んでるような感じになってしまって新鮮さがなかったのもちょっと残念なところ。言い方を変えると、ノベライズっぽい軽い作品だったてことなのかもしれませんが。
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