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2008年9月 3日 (水)

「青春の逆説」 織田作之助

青春の逆説 (角川文庫 お 57-1)

青春の逆説

織田作之助

角川文庫 2008.7. (復刊) 
  

ちょっと前に短編集を読んだオダサクですが、長編作品の文庫が復刊したということで、読んでみました。

主人公は美貌の青年、毛利豹一。生まれてすぐに父を亡くし、5歳の頃には養父となった祖父も他界。やがて母のお君は高利貸しの野瀬と再婚するが、野瀬は豹一には関心がなく、お君は必死に働き豹一を学校へと通わせる

周囲からバカにされまいと虚勢を張る中学時代、友人達と堕落した生活を送ってしまう高校時代、そして、紆余曲折あり、ようやく新聞社に就職し働き始める主人公の姿を描いていく。

オダサクはやっぱり文体が面白いですね。一見すると神の視点の語り手がたまに人間味の感じられる個人的な意見を述べたり、表面的な会話の裏に見え隠れする当事者たちの本音を次々とスポットライトがあたっていくようにテンポよく描き出す書き方が結構好きです。

主人公が美貌の青年という設定なんだけれど、好色家というわけでもなくて、常に葛藤があって、頑張って見栄を張るんだけど、それでも最後の一歩がなかなか踏み出せず、一生懸命なんだけど、どうも上手くいかずに空回ってばかりいる姿が、まさに「青春の逆説」って感じでなかなか面白かったです。

作品としてはじっくりと描く就職編の後半のエピソードがメインなのかもしれないけれど、サクサクと飛ばすところは勢いよく飛ばして進んでいく学時代のエピソードのほうが面白かったかなぁ。中学時代の話なんかとても良いです。

あと前編のラストのカウントする場面もなかなか印象深かったですね~。

でもってこんだけ様々な葛藤があった末に彼がたどり着いた着地点のなんとも平凡というか、結局は父親と一緒の展開というか、運命とはなんとも皮肉なものという感じがしましたね。で、青春ってのは結婚するまでなんですかねぇ。

ところでこの作品、60年以上前の話なんですけど、全然古びたところがなくて、細かな設定含めそっくりそのまま21世紀でも通用するんじゃないかって内容なのも面白かったです。

でも、戦時中は発禁処分になったようで、この程度で発禁とは、かなり厳しい検閲だったんだなぁというのを実感させられる1冊でもありました。

* * *

<参考過去レビュー>

「夫婦善哉」 織田作之助
こちらは短編集。普通に面白い作品が多かったです。

「四畳半神話体系」 森見登美彦
「青春の逆説」の主人公の豹一は現在の京都大学に入学して、個性豊かな仲間たちと堕落した日々を送るんですが、こちらは現代の京大生たちのバカバカしくも真面目な日々を描いた作品。

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