「溺れる人魚たち」 ジュリー・オリンジャー
溺れる人魚たち ジュリー・オリンジャー ランダムハウス講談社文庫 2008.7. |
現代のアメリカの女流作家による短編集。書店で見かけて面白そうだと思い手にとってみました。
全部で9つの短編が収録されていますが、共通するのは少女が主人公であること。
他にも、病気の母がいたり、親しい人が亡くなっていたりといった共通点があるんですが、これは著者の経歴が反映されているようです。
全般的に多感な思春期の少女たちを、ちょっと重めの空気で描いている作品が多くて、個人的にはちょっと足を踏み入れにくい世界だったかなぁという感じです。全体的に作品に入り込めず、あまり楽しんで読めませんでした。
あとね、この本、訳がちょっと微妙な気が。原書で読むとまた違うのかな。
気になった作品メモ。
「イザベル・フィッシュ」
車の事故で同乗していた兄の恋人が亡くなった少女の話。自分だけが生き残ってしまったことで、兄との関係もギクシャクして・・・という内容なんですが、この関係がどうもつかみづらかったんですが、ずっと続く重たさが話としてはなかなか読ませる内容でした。
「母の恋人」
癌の母が、学生時代の恋人と会うことになり、娘たちは一緒にディズニーランドで1日を過ごすことになるという話。これ、ラストがかなり後味が悪いです。なんとも言えない気持ちになりますが、このラストあってのこの作品ですよねぇ。これは一読の価値ありです。
フロリダのディズニーは行ったことがあるので、情景を浮かべながら読めたのも良かったです。
母親の浮かれ具合と衝撃のラストがディズニーランドという「夢の国」を舞台にして描かれるのもちょっと面白いんですが、この話、ちょっと気になったのは、せめてアトラクション名は日本語があるんだから、新しく妙な日本語訳の名前はつけないで!っていう。「魅惑のチキバード」って・・・。
他にも「子守り」とか「巡礼者」とかが良かったかなぁと思いますが全体的にはやや苦手な短編集でした。
* * *
参考過去レビュー
現代アメリカの女性作家の短編集つながりで
「燃えるスカートの少女」 エイミー・ベンダー
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