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2008年10月 3日 (金)

「魔王」伊坂幸太郎

魔王 (講談社文庫 い 111-2)

魔王

伊坂幸太郎

講談社文庫 2008.9. 

伊坂幸太郎の文庫新刊が出たとなれば、読まないわけにはいきません。

安藤兄弟の兄を描く「魔王」と、その5年後の弟を描く「呼吸」の2作を収録。

「魔王」は、自分の心の中で思った言葉を、目の前にいる人間の口から発することのできる「腹話術」という超能力があることに気づいた主人公の話。世間では犬養という政治家の全体主義的な思想が受け入れられはじめ、「集団」の恐怖を感じ始める主人公が、「腹話術」を使って起こす行動とは・・・。

「呼吸」は、やたらとじゃんけんに勝つ安藤潤也が主人公。犬養が政権を握り、世間が国民投票に揺れる中、自分の「運の強さ」に気づいた主人公がとる行動とは・・・。

なんかこれまでの伊坂作品よりも、社会的なネタが強くてちょっとビックリな作品。でも、アメリカを敵視するくだりは「砂漠」を彷彿とさせますね。

全般的には「集団」の恐怖を描いた作品で、自分も結構、それについて考えることが多いので、テーマとしてはなかなか読み応えのある作品でした。

伊坂作品としては、ちょっと新しいテイストでしたが、個人的には、そこまで好きになれない世界観だったかなぁ。それでも面白いんですけどね。

「魔王」のラストが結構驚愕で、あららと思っているところで5年後を舞台にした「呼吸」がはじまるんですが、割と独立した話だったので、「魔王」のラストのどんより感は拭えず・・・。でも、千葉が出てきたからなぁ。てか、千葉の下りは、珍しく、この作品を読んだだけでは理解できないネタが仕掛けられてましたよねぇ。

ここで描かれている社会的情勢が、2008年現在にかなり合っているところがちょっと怖いです。

ちなみに僕は宮沢賢治がとても好きでして、チラチラと顔をだす賢治ネタはちょっと嬉しかったです。

読み終わった後、勢いで、割と評判の良いコミック版を大人買いして読んでみたんですが、かなりアレンジされてました。グラスホッパーとリミックスされた感じで、「魔王」の世界に殺し屋達が出てくるという内容なんですが、少年誌ということもあって、「ジュブナイル・リミックス」とついている通り、主人公達が高校生になってしまっているのがちょっと残念。てか、そうしたことで、いくつかの設定や台詞にちょっと無理が。でも全体的にはなかなか面白いコミック化だと思います。

ところで僕はたとえ「せせらぎ」という呼び名でも奴らは嫌な存在だと思うんですが、いかがでしょうか。

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コメント

こんにちは~♪お待ちしてました。
政治や思想的なことを描くのか?と最初は面食らったのですが、
テーマが見え初めて、ようやく納得。
二部の雰囲気のお陰で、一見爽やかな読後感なのですけど、
背筋が冷~んやりする怖さが消えないですね。
資材管理部のあの男が登場した時は、
天を仰ぎ、神様をどこかに閉じ込めたいと本気で祈ってしまった。。。

大人買いされたコミック。そんな風なのですか。
グラスホッパーの人物たちなら、この世界に馴染む気がしますが、
なるほど、そんなリミックス、という手もあるんですね。
それよりも、同名のドラマが韓国や日本でもあることを最近知り、
わざわざ韓国でドラマ化されてたのかと思ったのでした(笑)

「せせらぎ」であろうが「そよかぜ」であろうが、嫌なものは嫌です。

投稿: 悠雅 | 2008年10月 3日 (金) 10時50分

>悠雅さん

コメントありがとうございます!

あの男の登場で、
「もしや」と思い、お願いだからと思いつつ読み進めての
あのラストですからねぇ。

コミック版、完全に別物のようでいて、
しっかりと原作に忠実で、
なんだか不思議な漫画化の仕方で面白いです。
こういう小説のコミック化は単にストーリーをなぞるだけのものが
ほとんどだと思うので、ちょっと意外でした。

韓国ドラマをリメイクした日本の「魔王」!
僕も最初はこの作品のドラマ化なのかと思ってました!
なんとも紛らわしいです。

投稿: ANDRE | 2008年10月 4日 (土) 01時13分

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