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2008年10月 7日 (火)

映画「パコと魔法の絵本」

パコと魔法の絵本 オリジナル・サウンド・トラック

パコと魔法の絵本

2008年

日本

これは予告編を見たときから、絶対に映画館で観たいと思っていた作品。こういう映像が命の作品はやはり劇場の大スクリーンのほうが見ごたえがあります。

舞台はとある病院。貧しい出身から独りで会社を大きくし、周囲のものを誰も信じない偏屈もの入院患者、大貫(役所広司)は、誰かの記憶に中に自分が残ることを嫌がり、他人に名前を覚えられることさえ、忌み嫌っていた。

ある日、大貫は病院に入院している少女パコ(アヤカ・ウィルソン)と出会う。毎日同じ絵本を声を出して朗読するパコを鬱陶しく感じる大貫だったが、彼女が事故で両親を亡くし、自らもその後遺症で記憶が1日しか持続しないということを知る。

やがて、大貫は、ふとした動作で、パコが前に自分と会っていたことを思い出してくれることに気づき、1日しか記憶の続かない彼女の心の中に、少しでも何かを残してあげようと、ある行動を起こすのだが・・・。

悪魔のような看護婦(土屋アンナ)や、ディズニーのコスプレをする医師(上川隆也)、大貫の遺産を狙う大貫の甥(加瀬亮)の妻である吸血鬼的看護婦(小池栄子)といった風変わりな病院スタッフたちと、チンピラ(山内圭哉)、消防士(劇団ひとり)、おかま(国村準)、謎のハイテンションな男(阿部サダヲ)、自殺志願の役者(妻夫木聡)といった個性豊かな入院患者たちを巻き込んで、大貫とパコの交流をポップな演出で描き出す。

こういうおもちゃ箱をひっくり返したような映画、大好きです。

前半は結構な数いる濃いキャラを1人1人印象付けるために、濃いネタが多く展開されて、観ていてお腹いっぱいになりそうになったんですが、それをちょっと我慢して乗越えた中盤以降、パコと大貫の交流がメインになってからは俄然面白くなりましたね。

なんといっても、ラストのクライマックス、絵本の中の物語をこの豪華キャストたちによる体を張った熱演の演劇とこれまたポップで見事なCGとが本当に神業的に融合されていて、画面を見ながらこんなにワクワクするのもかなり久しぶりでした。自分は割とCG否定派なんですが、こういう使い方なら大歓迎です。てか、邦画でここまでのCGアニメが見られるとは思わなかったよー。

個人的には阿部サダヲのハイテンションなノリは結構好きなので(さすがに「舞妓~」ではお腹いっぱいになってしまいましたが)、要所要所で良い具合に登場してくれるサダヲさんにたっぷりと笑わせてもらいました。

キャストは皆さん本当に芸達者で、国村隼や上川隆也のはじけ具合なんか見ていて本当に気持ち良いくらいなんですが、難を言えば、妻夫木君がちょっと浮いちゃったかなぁって気が。周りがあまりに上手いこと作品世界にフィットしすぎてしまったがために、彼の良くない部分ががっつり出ちゃってた気がします。森山未来とかのほうが良かったのではとか思ったんですが、いかがでしょうか。

あと、キャスティングの話だと、なんといっても、アヤカ・ウィルソン!この映画の成功は彼女の発掘によるところも大きいと思います。棒読み子役は「20世紀少年」みたいな作品だとかなり辛いんですけど、この映画では、それさえも含めて彼女の魅力になってたと思います。「ゲロゲーロ」って声が「ぽーにょ、ぽにょぽにょ」並に頭に残りますね。

物語は、ちょっと泣かせようとする場面があざとかった気もしますが、ウルっと来たところに、小気味良く小ネタが入って、笑わせてくれたりして、笑ったり、感動したりとっても忙しい作品でした。

記憶が1日しか続かない、ってのは最近ではすっかりお馴染みの題材なので、オリジナリティを出すのが難しくなってきてると思うんですけど、この「飛び出す絵本」的世界観のおかげで、マンネリになりそうな題材も気にならないで最後まで観れちゃいました。

やや物足りなかった点をあげるとすれば、大貫がパコに心を開くのが、なんだかんだで同情がきっかけみたいになってたところでしょうか。もうちょっと、パンチのきいたエピソードがあると良かったかなぁと。

ラストは、ちょっと嫌なほうに物語が展開してしまって、そんなところも、「泣かせ」を強要されてる感じを受けてしまったものの、全体に溢れる、ポップな優しさに完全にノックアウトされて、観終わった後はウキウキ気分で映画館を後にしてしまいました。

あと、もとが舞台ということもあってか、全体に舞台を意識した作りになっていたんですけど、舞台版のほうも観てみたいです(どうやらBSで放送があったようで、見逃したのが悔やまれます)。

<参考過去レビュー>

記憶が1日しかない女性を毎日ナンパし続けて、毎日恋に落ちる作品を。
これ、結構隠れた名作だと思ってます。

映画「50回目のファーストキス」

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コメント

こんにちわ。
『カリスマ映画論』の睦月と申します。
TB&コメントありがとうございました。

≫邦画でここまでのCGアニメが見られるとは思わなかったよー。

たしかにそうですね!
この作品のポスターを一見すると、まるで洋画みたいに見えますもの!
私の知り合いでも、「これって洋画だとばかり思ってた」と言う人が
おりました(笑)。

≫森山未来とかのほうが良かったのではとか思ったんですが

言われてみればそうかも・・・と思いました。
室町くんは一瞬「誰!?」って感じでしたけれど、見ていくうちに
やっぱりブッキーって感じが出まくりだったような気もします(苦)。

森山くんなら、そんなにアクも強くなくて、この世界観にスッキリ
馴染めたかもしれないですね♪

とにもかくにも。
最初から最後まで笑って泣いて、存分に楽しめた1作でございました。

それでは今後共どうぞよろしくお願いいたします♪

投稿: 睦月 | 2008年10月 8日 (水) 16時49分

こんばんは♪
如何にも子供向けな宣伝でしたが、
大人にこそ観てもらいたいお話だったと思います。
生後7ヶ月の孫は、わたしの顔をまだ覚えていないものだから、
「あの子の心に残りたい」という大貫の言葉はそのまま
わたしのものでもありました。
心から大好きなのに、
会うたびに綺麗に忘れられている切なさ、ったら…(p_q*)
これ1本に、
いったい何人の主演俳優が出てるんだという豪華な顔ぶれが、
ここまで弾けた演技を見せてくれたのも楽しかったです。

ANDREさん、
ちょっとご連絡があるので、よろしかったらメールください。

投稿: 悠雅 | 2008年10月 8日 (水) 20時09分

こんばんは★
TBありがとうございました。
TB送れないようなのでコメント残しておきます☆

>やや物足りなかった点をあげるとすれば、大貫がパコに心を開くのが、なんだかんだで同情がきっかけみたいになってたところでしょうか。もうちょっと、パンチのきいたエピソードがあると良かったかなぁと。

確かにそこは安易でしたね。まあお伽噺的なお話なので、私はまあ良しとしました。

投稿: dai | 2008年10月 8日 (水) 21時25分

>睦月さん

コメントどうもありがとうございます。

アヤカ・ウィルソンが前面に出ていて、
周囲のキャストがあれだけの特殊メイクで、
あのポップなポスターだと確かに洋画と思う人もいそうですね。

森山未来、ちょっと共感していただけて嬉しいです。
なんとなく妻夫木くんが気になってしまったんですよねぇ。

こちらこそよろしくお願いします☆

>悠雅さん

コメントありがとうございます。

幼いお孫さんと重ね合わせられたのですね。
悠雅さんならではの視点で、またまた心温まってしまいました。

子供向けっぽく宣伝してたり、
親子試写会なんてのが行われてたりしてましたが、
かわいい世界観とは裏腹に大人にこそ味わい深い内容でしたね。
てか、一部ネタが完全に大人世代向けでしたし(笑)

>daiさん

コメントありがとうございます。
TB、やはり上手くいきませんでしたか。
自分が悪いわけではないのですが申し訳ないです。

>同情がきっかけ

この場面の前後で一度現代の場面に戻ったので、
何か決定的なエピソードがあったのを
隠しているのかなとも思ったんですが、
特にそういうわけでもなかったので、ちょっと物足りなかったんですよね。

でも全体的に、期待以上に楽しめた作品だったので大満足でした。

投稿: ANDRE | 2008年10月 8日 (水) 22時27分

TBありがとうございました。

アヤカ・ウィルソンはセリフ棒読みと言う意見が多いですが、
私はあまり気になりませんでした。
子供で感情たっぷりの方が気持ち悪いです。

ところで揚げ足取りのようで申し訳ありませんが、
國村隼は、「準」でなく「隼」です。

投稿: KGR | 2008年10月11日 (土) 17時26分

TBありがとうございます!

子役に限らず棒読みの俳優さんに遭遇するとげんなりします。
でもパコ役のアヤカ・ウィルソンのそれはいわゆる棒読みとはちょっと違うんですよね。発声は悪くないんです。
テレビや映画ではなくむしろ舞台俳優さんの発声に近い気がしました。
これはれっきとした彼女の演技力だと思います。
今後が楽しみですね。

投稿: SOAR | 2008年10月11日 (土) 19時30分

>KGRさん

コメントありがとうございます。

子役は変に棒読みでも気になるし、
感情たっぷりだとやや不気味だしで、
程好いところでバランスをとってくれると嬉しいんですけどね。

その点、アヤカ・ウィルソンはちょっと棒読みなんですが、
それを含めて、パコというキャラクターが完成されてたように思うので、
良かったと思います。

恥ずかしながら誤字脱字の多いブログですので、
ご指摘いただきありがとうございます。
早速訂正しておきます。

>SOARさん

コメントどうもありがとうございます。

アヤカ・ウィルソンはこれまで全く知らなかったのですが、
本当に魅力的な子役だと思います。
今後、ひねた方向に行かないで、
良い女優さんになってくれると嬉しいですね。

投稿: ANDRE | 2008年10月12日 (日) 01時34分

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