映画「落下の王国」
関連商品画像が無かったので 劇中にも登場するバリのライステラスを。 昨年の旅行のときに撮影したものです。
|
the fall
2006年
アメリカ |
13の世界遺産を含む世界各地24カ国でロケされた作品ということで、絶景マニアとしてはどうしても観たかった作品。劇場の大画面で見て大正解です。
舞台はサイレント映画全盛時代のアメリカ。主人公はオレンジの木から落ちて骨折をしたために入院をしている5歳の少女アレクサンドリア。ある日、彼女は同じく病院に入院しているロイという青年と出会う。映画のスタントマンをしているロイは撮影中の事故で落下し入院中だったが、恋人を俳優にとられた失恋の痛手を味わっていた。
失意のロイはとある計画をたて、アレクサンドリアの気をひくために、彼女に物語を語って聞かせるようになる。それは残虐な総督オウディアスに復讐するために立ち上がった5人の男たちの物語だったのだが・・・。
オープニングのモノクロ映像からはじまって、とにかく終始、映像がとてつもなく美しい作品でした。これは期待以上です。
世界各地の絶景を舞台に描かれるのは、ロイが語って聞かせる壮大な叙事詩で、この映像は本当に素晴らしかったです。上に写真を載せたバリ島のライステラスが出てきたときには、思わず、「あ!バリだ!!」と声を出しそうになってしまいました。バリの部分は、ケチャまで出てきて、雰囲気たっぷりでしたね~。
他にも、街やら、建造物やら、自然やら、とにかく見ごたえのある絶景が続いて、それを非常に上手く生かした映像には完全に見入ってしまいました。もう、世界各地を旅して回りたい気分になりますよー。
この物語の部分は、「想像の映像」て設定なので、人間のイマジネーションが作り出す世界の美しさを、できる限り映画というメディアで再現しようとしている感じがして、もう、映像美には文句のつけようがありません。
しかしながら、メインの病院を舞台にした少女とスタントマンの物語のほうがちょっと物足りない。てか、この部分も映像や衣装は文句のつけようがないんですが、最後のほうのまとめかたがなんだかよく分からない感じになってしまったんですよねぇ。
どうしても気になったのは、「お前、子供相手に、いつまで続けるんだよ!」ってこと。なんか観ながら、どんどんロイへの嫌悪感がたまっていきました。そんでもって、彼がその過ちに気づくタイミングとか理由とかがどうもはっきりしなかったために、最後のほうがちょっと消化不良気味。
あの、「ニュー・シネマ・パラダイス」ばりの白黒スタント映像祭りのおかげでどこか満足感を感じられちゃうんですが、冷静になると、やはりはっきりしないんですよねぇ。そのために、映像ばっかりの作品っていう印象が強く残ってしまいました。
そんなわけで、特別企画。僕だったらこんな風にまとめたかなぁってのを勝手に描いちゃう、お前、何様なんだ!的なものを。以下、本編のストーリーを自分だったらこういう風にしたいなぁってのを妄想しているため、一部本編のネタバレを含みます。反転してお楽しみください。
ロイが自暴自棄になってひたすら皆が死ぬ話を始めるのは、錠剤を呑んで死ねなかった直後に。でもって、その話を聞いて泣いて悲しんだアレキサンドリアが、自分がモルヒネを持っていけば、ロイがハッピーエンドを聞かせてくれるだろうと思って、薬を取りに行って、落下。
落下したアレクサンドリアは意識を失ったまま目覚めず、彼女の姿を見たロイは幼い少女を相手に自分がなんて愚かなことをしたのかに気づき、眠る彼女の耳元でハッピーエンドの物語を語り始めて、物語が終わるところで彼女が目覚める。
って感じのほうが作品としてスッキリしたような気がするんですけど、どんなもんですかねぇ。
以上勝手に妄想企画でした。
そうそう、映像といえば、この映画、終盤にいきなり、シュヴァンクマイエル並のシュールな人形映像があって、ちょっとビックリしちゃいました。なんか、ちょっと浮いてた気もするけど・・・。
入院してる少女に物語を語って聞かせるってのが、「パコと魔法の絵本」っぽいし、映像が素晴らしいってのも似てるんですけど、作品の方向は全然違っていて、似たような時期に劇場でこの2作品を鑑賞できたのはなかなか面白かったですねー。
パコさんも良かったですが、今回のアレクサンドリアもとても愛らしい子でした。物語の中で無邪気に大活躍する姿はほんとうに可愛かったですね。でもって、泣きも笑いも表情が素晴らしかった!
<参考過去レビュー>
映画「パコと魔法の絵本」
上述の作品。
映画「ウォルター少年と夏の休日」
語られる物語の感じがちょっと似てる。でもこっちの作品のほうが好き。
映画「パンズ・ラビリンス」
ファンタジー世界が常に明るくないってところにちょっと似たものを感じた。
ま、「落下の王国」はロイの語って聞かせる物語なので、また違うんですが。
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 映画「落下の王国」:
» 落下の王国 [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
『君にささげる、 世界にたったひとつの作り話。』
コチラの「落下の王国」は、「ザ・セル」のターセム監督が、13の世界遺産、24カ国以上にロケーションを行い、構想期間26年、撮影期間4年の歳月を費やし、完成させた9/6公開のアーティスティックなアドベンチャー・....... [続きを読む]
受信: 2008年10月 9日 (木) 06時45分
» 落下の王国/The Fall [我想一個人映画美的女人blog]
ジェニファー・ロペス主演の前作『ザ・セル』から4年。
と言ってもこの映画、アメリカでの公開は2006年。日本にとっては実質6年ぶりになるターセム監督の待望の新作!
来月公開を前に試写で観てきた。
『ザ・セル』ではCGによる独特な映像美が話題になって、当時劇場で観たんだけど
今でも明確に覚えてるシーンがあったりして、なかなか強烈なインパクトを残した作品だった。
その監督が長い年月(なんと構想26年!撮影期間は4年!)かけて創り上げた1本、気になって当たり前か。
原題のThe Fallは落下とか... [続きを読む]
受信: 2008年10月 9日 (木) 09時19分
» 映画「落下の王国」 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:THE FALL
CGを一切使わず世界24か国以上世界遺産13か所にロケを敢行、構想26年撮影4年という歳月をかけたという、~愛と復讐の叙事詩が紡ぎだす物語の力~
構想26年の結実は特に映画のオープニングに、凝りに凝ったような、その幻想的な映像に、よく現れている... [続きを読む]
受信: 2008年10月 9日 (木) 12時56分
» 落下の王国 [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
構想26年、撮影期間4年!__映像の魔術師ターセムが、魂を込めて作り上げた生きる力を喚起させるファンタスティック&リリカルな心の旅。
傷ついた青年と純真無垢な少女、それは、落ちて始る物語。
物語:1915年のアメリカ、オレンジの木から落ちて怪我をし、入院中...... [続きを読む]
受信: 2008年10月10日 (金) 10時17分
» 『落下の王国』 試写会鑑賞 [映画な日々。読書な日々。]
1915年のアメリカ、オレンジの木から落ちて怪我をし、入院中の5歳の少女、アレクサンドリア。人懐こい少女は、あどけない笑顔で病院中の人々に可愛がられていた。ある日、足の怪我でベッドから起きられない青年と知り合う。病室に入ってきた利発そうな少女に、青年は自分が作... [続きを読む]
受信: 2008年10月11日 (土) 01時16分
» 『落下の王国』 [めでぃあみっくす]
映像の魔術師ターセム監督。その名を再び痛感した、いやこの監督以上に美しい映像を撮れる人はいないのではないか?と思えた映画でした。個人的には物語に感涙することはなく、ひたすら美しい映像に魅せられていましたが、別にそれだけでも十分映画館で見る価値はあると思い....... [続きを読む]
受信: 2008年10月11日 (土) 15時13分
» 落下の王国◆ターセムが描く「物語」の原点 [好きな映画だけ見ていたい]
「落下の王国」 (2006年・インド/イギリス/アメリカ)
企業コマーシャルの世界から、異色の犯罪映画「ザ・セル」で鮮烈なデビューを飾ったターセム監督の最新作。4年にわたって世界20カ国以上でロケ撮影をしたという映像は、さながら世界遺産の旅と言っていいほど贅沢な景観美に満ちている。同時にそれらの風景は、目の前で今まさに生まれ出る物語の“子宮”として、単なる景観を超えた神話性を宿しているように映る。それは前作「ザ・セル」の、不安をあおる猟奇的なイメージとは異質の、原初的躍動感にみなぎ... [続きを読む]
受信: 2008年10月11日 (土) 15時44分
» 落下の王国/リー・ペイス、カティンカ・ウンタルー [カノンな日々]
シャンテシネで見た予告編に一目惚れした映画です。絵本のような映像の美しさと現実と幻想が入り交じるような寓話の世界観が魅力的。てっきりシャンテシネでの単館上映かと思ってたらTOHOシネマズで上映されてラッキーでした。
出演はその他に、ジャスティン・ワデル、ダ....... [続きを読む]
受信: 2008年10月11日 (土) 21時13分
» 「落下の王国」 [Zooey's Diary]
この映画、予告編やテレビのCMを観た時から、非常に気になっていたのでした。
トルコの、メヴレヴィーの旋回舞踏のシーンが入っていたのです(写真)。
(この映画のHPのトップページにも載っている)
アメリカの映画に何故、イスラム神秘主義の旋回舞踏が入るのか?
私は、どうしてもそれが気になって観に行ったようなものです。
"ザ・セル" のターセム 監督が、構想26年、撮影4年をかけて作り出したという作品。
どこまでも「落ちる」物語です。
映画撮影で陸橋から「落ち」、歩けなくなったスタントマンの... [続きを読む]
受信: 2008年10月11日 (土) 23時54分
» 落下の王国 [カリスマ映画論]
【映画的カリスマ指数】★★★★☆
フォーリン・ライフ
[続きを読む]
受信: 2008年10月12日 (日) 23時59分
» 落下の王国*原題 The Fall [銅版画制作の日々]
君にささげる、世界にたったひとつの作り話。
10月8日、京都シネラリーべにて鑑賞。レディスディーということでか?それとも朝1回上映でなのか?このシアターがこんなに満員になるとは驚き!マニアな人には、やはり人気作品なのかもしれないね。観客の大半が女性だった。男性は2〜3名だったような気がする。私の隣には親子連れで鑑賞しておられた。子どもさんは5歳くらいだろうか?字幕版なのに、大変だろうななんて。
さてこの映画「落下の王国」の原題はいたってシンプル、“The Fall”。今回も邦題のほうが、何とな... [続きを読む]
受信: 2008年10月16日 (木) 18時35分
» 「落下の王国」この世にあるこの世のものとも思えない映像に浸れ [soramove]
「落下の王国」★★★
リー・ペイス、カティンカ・ウンタール出演
ターセム監督、アメリカ イギリス インド、2006年、118分
映画でしか体験できない時間、
人間の想像と創造の形を
現存する様々な場所に
空想と一緒に連れて行ってくれる。
病室で寝たきり...... [続きを読む]
受信: 2008年10月22日 (水) 19時39分
» 落下の王国 [悠雅的生活]
グーグリ・グーグリ。 [続きを読む]
受信: 2009年9月18日 (金) 17時57分
コメント
はじめまして。
この映画、映像が素晴らしく綺麗なのに、ロイの語る物語がどうも冗長で…しかも、最後の方がどうも納得できなかったので、Andreさんの妄想結末の方を、私も買います!w
ついでに、「ウォルター少年と夏の休日」と「パンズ・ラビリンス」のレビューも拝見しました。
どちらもとても好きな作品でしたので。
AIのときに天使のように可愛かったオスメント君、トッツァン坊やのような顔になってしまって…ショックでした。
ほのぼのとした、良い話だったのですけどね。
「パンズ・ラビリンス」は、去年の秋、恵比寿ガーデンで観たのですが、あの物悲しい旋律が、哀しい物語と一緒になって、まだ胸の奥に残っています。
突然の長文、失礼致しました。
TBさせて頂きますね。
投稿: zooey | 2008年10月11日 (土) 23時52分
>zooeyさん
はじめまして、TBとコメントどうもありがとうございます。
妄想結末、共感していただき、かなり嬉しいです。
映像は文句なしだったんですけど、
最後のほうのまとめかたがやっぱりちょっと物足りなかったですよねぇ。
オスメント君、どうやら主演作品が2本連続で控えているようで、
久々にスクリーンに登場するのが
ちょっと怖いですが楽しみです。もう普通に大人の役なんですかねぇ。
「ウォルター少年」は映画自体はとてもお気に入りの1本です。
「パンズ・ラビリンス」の音楽、耳に残りますよね。
自分もまだ覚えてます。
恵比寿のガーデンシネマ、良い映画館ですよね。
最近はあまり行かないのですが、
上映作品の選び方が結構お気に入りです。
よろしければまたご訪問ください。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: ANDRE | 2008年10月12日 (日) 01時40分
こちらにも、おじゃまします。
この映画、本当に映像が美しく、衣装も斬新で世界遺産の美しい景色の中で映えてましたね~。
私も映像には目を見張りましたがストーリーは・・・あれれ?っで、ブログに書くのをやめました。
結局彼女に振られて自殺するのに子供を利用して薬をって話?・・・
私もAndre案に1票入れさせていただきます。
アレクサンドラ、ぷくぷくで可愛かった~です!
投稿: ryoko | 2008年10月30日 (木) 14時21分
>ryokoさん
こちらにもコメントいただきまして
ありがとうございます。
そうなんですよねぇ。
映像関係は文句のつけようがないのに
肝心のストーリーがどうしても気になってしまう作品で・・・。
1票いただきましてありがとうございます。
結構嬉しいです♪
ま、でも、世界遺産好きとしては、
映像を堪能できたのでその点では
結構満足しちゃったのも事実なんですが。
投稿: ANDRE | 2008年10月31日 (金) 00時39分
こんにちは~♪
やっとWOWOWで観たんですが、とにかく映像が素晴らしかったですねぇ。
自然の風景も、人間が作った建造物も、そこに紛れる人物たちの出で立ちも、
本当に惚れ惚れと見蕩れてました。
わたしね、このお話の本題はうんと終盤に来ると思ったんです。
にこにこしてるアレクサンドリアに対して、立ち直れないお兄ちゃんが更に落ちてゆくのを、
5歳なのに母性を持ち合わせた女の子が、奈落の底からぐぃ~んと引っ張り上げてくれる、っていうか・・・
怪我が治ってしまえば、もう映画には無縁そうな子が、やっぱりにこにこと遠くから見守り見届けてる感じも、
ラストの一言も好きでした。
投稿: 悠雅 | 2009年9月18日 (金) 18時08分
>悠雅さん
コメント、TBどうもありがとうございます!
この作品、世界遺産モノが好きなこともあって
映像美には圧巻されっぱなしで、
我が家のテレビが薄型液晶でハイビジョン対応になったので
DVDで改めて観ようかなとも思ってます。
ただ、自分は小さな子を相手に何をやっているのか、
と思ってしまい、青年にイライラしてしまったんですよねぇ。
投稿: ANDRE | 2009年9月19日 (土) 00時07分