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2008年10月 6日 (月)

「パレオマニア 大英博物館からの13の旅」 池澤夏樹

パレオマニア―大英博物館からの13の旅 (集英社文庫 い 52-3)

パレオマニア
大英博物館からの13の旅

池澤夏樹

集英社文庫 2008.8.
(original 2004)  

大英博物館は7年ほど前に訪れたことがあるのですが、それはそれは見ごたえたっぷりでとても面白かったのをよく覚えています。でもって、そんな大英博物館をテーマにした池澤氏の旅行記。これはかなり面白そうです。

主人公の「男」が大英博物館で気に留めた品々について、それが元々あった場所に実際に行ってみようと、世界各地を旅する様子を描く全13の旅を収録した、擬似小説風文体の旅行記。

大英博物館といえば、世界の盗品博物館なんていわれることがあるくらいに、大英帝国が世界各地で見つけたものを勝手に持ってきて展示しちゃってる場所ですが、展示品の1つ1つが本当に興味深くて、1日中だって入られちゃう場所です。実際、僕も2日に亘って訪れましたし。

で、そこに展示されてるものが元々はどういう場所にあったのかを実際に見に行ってみようなんてのは、誰もが思うけれど、本当に実行してしまう人はほとんどいないことだと思います。

そんな、「夢」の旅行を集めた旅行記なので、それはそれは面白いだろうと思っていたんですが、期待してたほど旅行記としての面白さはなかったかなぁ。

ただ、そこら辺のお気楽旅行記のような内容の無いものではなくて、知的好奇心に満ち溢れた1冊なので、そういう点では非常に読み応えもあって面白い1冊。文体も固すぎず、軟らか過ぎずで、読みやすいし。

では何が物足りなかったかと言いますと、主人公を「私」ではなくて、「男」にして徹底して貫かれる「3人称」の記述が、旅行記を客観的なものにしてしまって、旅の臨場感がなかなか伝わってこないんですよね。現地の様子はちゃんと書かれているんだけれど、その空気感が感じられないというか。あとはカラーで写真とか載ってると嬉しかったかなぁなんて思います。

13の旅の中で、面白かったのは、イラク編、韓国編、メキシコ編あたりかなぁ。あと、最終章が、大英博物館そのものにスポットをあててたのも良かったです。

なんかこういう本を読むと、自分も旅に出たくなっちゃいますよねぇ。

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