映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」
every little step 2008年 アメリカ |
ミュージカルの傑作の1つ「コラースライン」が2006年にブロードウェイでリバイバル上演されることになった時の8ヶ月に亘るオーディションの様子を追ったドキュメンタリーということで、とても観たかった作品。これからご覧になられる方は、映画版で良いので一度「コーラスライン」を観てから行かれることを強くオススメします。
06年にコーラスラインがリバイバル上演される際、19の役を手に入れるために集ったのはプロ・アマ含めて3000人。カメラは「コーラスライン」という作品がどのようにして作られたのかという作品誕生の裏側を描きながら、作中に登場するキャラクターたちと、オーディションを受ける候補者たちとの姿を重ねていく・・・。
全体に、「コーラスライン」という作品そのものの誕生秘話も結構しっかりと描かれていて、当時の貴重な資料も数多く出てきたので、単にオーディションを追うだけのドキュメントだけだと思っていた自分はちょっとビックリ。
しかししかししかし、これはとんでもなく良くできたドキュメンタリーだったと思います。ミュージカルが好きな自分は90分間画面に釘付けでしたが、そうでなくとも、恐らく十分楽しめる1本ではないかと。
「コーラスライン」という作品そのものが、「ミュージカルの『その他大勢』(コーラス)の役を得るためにオーディションを受ける人々」を描いた作品なので、ブロードウェイのオーディションの様子を追ったドキュメンタリーとはいえ、この映画そのものが「コーラスライン」の映画化といってもおかしくないような内容になっているのです。
実際、ドキュメンタリー中にミュージカルの曲も数多く使われているのですが、その1つ1つが、候補者達の姿を捉えるのに非常に上手くマッチしていましたし。
いやぁ、ブロードウェイのオーディションってのは本当にすごいですね。熱い!!
でもって最終的に役を射止める候補者たちが、最初の3000人が集る風景の中でもちゃんと「あ、この人は良いな」と印象に残る人たちなんですよね。歌とか踊りとか、全体のオーラとかが明らかに違うというか。最後に残ったメンバーたちを見たときにちゃんと納得できる結果になってるんだもんなぁ。てか、ついつい観ながら自分も審査員の一人みたいな気分になってしまったり・・・。
色々なエピソードの中でもとりわけ印象に残ったものをいくつか。
★ポール役のオーディション。
ジェイソン・タムという役者さんですが、神がかり的なものを感じました。てか泣かされました。
オーディションの審査委員ってその日だけで同じ演技を何十回と見てきているんだと思うんですけど、そんな審査員たちを泣かせてしまったというのは、想像を絶するような力を持っていたんだろうなと。しかも、カメラを通して観ている我々まで泣かせてしまうとは・・・。
彼、きっとポールと何か被るものを持っているんでしょうね。そんなことがなくて、全てが演技だとしたら恐るべき才能だと思います。
★クリスティン役のオーディション。
クリッシー・ホワイトさんがチャーミングすぎて困っちゃいました。あの天然っぽさが忘れられません。しかも彼女、発するオーラみたいのがかなり凄かったと思います。天性の魅力を持った女優さんなんだろうなぁと。
★マイク役のオーディション。
最終的に決まった彼、最初に登場したときから僕は彼の歌と踊りが大好きだったので、とても嬉しい結果でした。
一方負けてしまった方の彼、自分は絶対に賞をとるんだ!という夢を語っていましたが、なんと彼は今、本当に大成功を収めているんですね。強い信念を持って、一度はくじけてもちゃんと夢をつかんだってことが純粋にカッコイイです。
★シーラ役のオーディション
まさに白熱のバトル。
そしてそして、最大のライバルが隣にいる候補者ではなくて、「8ヶ月前の自分」てのはもう観ているこちら側まで彼女の焦りが伝わってきて、ハラハラしてしまいました。
★コニー役のオーディション
高良さんが出演されたということを、06年当時にテレビか何かで観て知っていたので、安心して観ていたのですが、審査員の中に、初代コニーがいて、さらに彼女が反対しているってので手に汗握ってしまいました。
この初代コニーもそうですけど、「コーラスライン」という作品は、フィクションなんだけど、少なくとも初演においては、各キャラクターがそれを演じる役者のリアルエピソードと被っていた部分が多いわけで、その役者が演じる必然性みたいなものがあったんだと思います。しかし、今回のように、2代目以降の役者達は、その役を1つのキャラクターとして「演じる」ことになるわけで、そうなると、初代キャストたちの現実からどんどん離れてキャラクターが一人歩きしていくんだと思います。そういう意味でも、今回のコニー役を彼女が射止めたことは大きな意味を持っているのではないかと。
あと観ていて感じたのは、「コーラスライン」という作品は、たとえ脇役であっても舞台の上で踊りたいというダンサーたちがオーディションを受ける物語で、彼らが受けているのは「その他大勢(コーラス)」のオーディションなんですよね。しかし、このドキュメンタリーが映し出すのは、『コーラスライン』というミュージカルの「主要キャスト」のオーディション。これって結構意味が違うよなぁなんて思ってみたり。でも、それでも、このドキュメンタリで描かれる様子が、『コーラスライン』そのものであると思わせたのは、「舞台に立ちたい!」と思わせる候補者達の熱い気持ちはどんなに小さな役でも変わらないのだということなんだろうなと。
映画版「コーラスライン」は色々と問題も指摘されている作品ですが、「Surprise」意外は結構好きな場面が多くてDVDでも歌を中心によく観るんですが、これを観ちゃうと、やっぱ舞台版を観なきゃ何も語れないんだなぁというのを強く実感。
と、つらつらと書きましたが、このドキュメンタリー、ここまで見せておいて、実際の舞台を観ることができないってのは本当に辛いですよね。06年版キャストの舞台DVDとか出してくれないかなぁと切に願う今日この頃。
でもって、この映画を見せた後で、、来年、ツアーキャストの来日公演がありますという渋谷bukamuraの作戦はあまりにもお見事すぎて、まんまとその罠にはまってしまいそうな自分だったりします。
それにしても来年8月は、来日公演ラッシュですね~。ウェストサイド50周年ツアー、RENT、そして、コーラスライン。お金貯めとかなければ!!
One singular sensation every little step she takes♪
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コメント
ANDREさん、はじめまして。
確かに"コーラスダンサー"のオーディションと
"主要キャスト"のオーディション...。
この差はかなり大きいですね。
でも、ダンサーたちが「コーラスライン」に出たがるのは
「コーラスライン」が"自分たち(=ダンサー)の物語"だから。
よって、参加者たちは「俳優」ではなく
あくまで「ダンサー」としてオーディションを受けている。
映画からはそんな印象を受けました。
投稿: moviepad | 2008年11月15日 (土) 00時23分
>moviepadさん
コメントどうもありがとうございます。
ミュージカル=歌+ダンス+演技のイメージが強いので
「ダンサー」として舞台に立ちたちという部分は
自分もなるほどと思いました。
でもって、そう思ってコーラスラインのCDを聞くと、
確かに歌唱力とかはそこまで重視されてないというか、
ある程度はされてても(映画の中でもそういう場面はありましたし)
やはりこの作品の肝はダンスなんだなと感じました。
そうなるとやはり本物の舞台を観たくなってしまいます。
投稿: ANDRE | 2008年11月15日 (土) 16時40分
ANDREさん初めまして!TBありがとうございます♪
ジェイソンさん、スゴかったですよね。私も泣かされてしまいました。
来年の来日公演も、観に行ってみようと思っています♪
投稿: june_h | 2008年11月20日 (木) 20時57分
>june_hさん
コメントいただきましてどうもありがとうございます。
ジェイソン・タムは、
あれが全て演技だとしたらとんでもない逸材ですよね。
カメラを通して映画館で観ると、
ドキュメンタリーとはいえ、やや客観的になってしまうと思うのですが、
それでもググッと泣かせられてしまいました。
来日公演、非常に楽しみですね!!
投稿: ANDRE | 2008年11月21日 (金) 15時28分
亀レスですいません。
コメントしていいものか悩んだのですが、
↑に新旧問わずとあるので、書きこんじゃました。
うちの田舎でもよーやく上映されたので見てきました。
大好きなミュージカルのドキュメンタリーだったので、
冒頭10分で既に感涙してました^^;
マイク役のオーディションは
so you think you can danceで好きになった
タイスを既に過去の話とわかっていても
応援してしまいました。
だけれど、これで役を掴んでいたら、
タイスを知ることはなかったかも、と思うと不思議な感じ。
来日の時にはキャストが変わってるんでしょうけど、
絶対見に行きたいです。
j
une_hさんもお書きになっているように
この夏は色々なミュージカルが来日公演をしますが、
田舎モノは上京費用も加算させるので
すべて見ること叶わず、優先順位つけるのが大変です。
投稿: しゅり | 2009年1月26日 (月) 00時13分
>しゅりさん
お返事が大変おそくなってしまい申し訳ありません。
コメントは記事の新旧に関わらず大歓迎です!
このドキュメンタリーは最初から最後まで
ずっと目が離せませんでしたよね。
タイスがオーディションに落ちた後で、
自分は絶対に成功するんだと熱く語っていて、
それを見事に実現させたのは素直にすごいなぁと思います。
今年の夏はこれでもかというくらいに
来日してくれるので、大忙しですよね。
自分は絶対に見逃せないキャストのRENTを最優先しつつ、
お財布と相談して何を見ようかなと考え中です。
投稿: ANDRE | 2009年1月28日 (水) 19時52分