映画「地上5センチの恋心」
Odette Toulemonde 2006年 フランス・ベルギー |
ここのところずーっと忙しかったので、かなり久しぶりのDVD鑑賞です。最近注目しているフランスの女優カトリーヌ・フロ主演作品。
主人公オデットは、夫に先立たれ、美容師の息子や娘と娘が連れ込んできた恋人と一緒に暮らすデパートのコスメ店員。彼女の一番の楽しみは、敬愛する作家バルタザール・バルザンの作品を読むこと。
一方バルタザール・バルザンは、テレビにて自らの作品を酷評され、さらには妻の浮気を知り、絶望の淵にたたされる。そんなとき、オデットの書いたファンレターを読み、自分のことを愛してくれている彼女に会おうと、オデットの家を訪れるのだが・・・。
見所はなんいといってもカトリーヌ・フロ演じるオデットが、好きな小説を読んでいるときや、大ファンの作家に会ったときなどに、「天にも昇る心地」になるのを表現する映像ですね。「地上5センチ」のという邦題をつけた人は本編を見たのか?と思うほどに、余裕で数メートルは飛んじゃってました。
さらに彼女は、いつも音楽とともに妄想やら実際やら楽しげに踊っていて、その姿もまたとってもキュート。数あるダンスシーンの中でも、別荘で家族そろって踊る場面は、本当に見ているこちら側まで思わず笑顔になってしまって、かなり好きでしたね~。
うん、愛する子供たちに囲まれて、好きな小説を楽しみ、ささやかながらも幸せな日々をおくっている彼女の姿がとても良かったっす。現題は主人公のフルネームだしね。
面白かった場面は、やはり彼女の心象風景を表すシーンの数々なのですが、フランス(ベルギー?)の人間関係が見え隠れする場面も結構面白かったです。
職場では噂話で盛り上がり、さらには、「出てけ!」コールをまくしたてるような人間関係は、女性ばかりの職場ということもあって、ちょっとした「大奥」的世界でしたね。こういうのって、海外でもあるんですねぇ。
あと、子供の学校も、ちょっとしたイジメ的なものを感じさせて、こういうのも万国共通なのかぁと。
ただ、「海に行く」というと、日本的感覚だと、日帰りでちょっと行く程度だと思うんですけど、余裕の長期滞在だったりするあたり、やっぱりヨーロッパなんだなぁと。
こういう庶民の日常を描く作品は色々と文化の違いやら、共通点やらを観ることができるのも面白いところです。
作品のテーマ的な面白さとしては、いわゆる、「純文学」も良いけれど、大衆向けの娯楽作品を必要としている人々もいるんだよ、というような部分も描かれていて、恐らく、これが、この映画自体が、後者に位置づけされることを考えると、なかなか面白いアプローチだったと思います。
あと、作中で、主人公の心象風景を表す要素として、イエスのような男がチラホラと顔を出すんですけど、イマイチその存在意義がつかみづらかったのは、やはり自分の宗教的知識の薄さによるものなんでしょうかね・・・。
ハリウッドの娯楽作品だったらもっとコメディコメディした感じでパーッと明るく作るんだと思うんですが、題材の割には、そこまで突き抜けたの明るさがあるわけでもないところに、フランス映画っぽさを感じてみたり。ま、そのせいか弱冠のテンポの悪さは否めないんだけど。
ラストの映像は、何万年前のネタだよ!といいたくなるような感じでしたが、フランス人はロマンチックなものが好きなんだろうなぁと勝手に解釈して、微笑ましくなってしまいました。
てか、個人的には、ラストの展開が、あまりに突然すぎて、「え?」と思ってるうちに、あれよあれよと終わってしまった感じだったんですよねぇ。
* * *
参考過去レビュー
これまで観たカトリーヌ・フロ出演作品を。
カトリーヌ・フロはもちろん良いんですけど、作品そのものもとっても興味深い1作。ただし、男性としては観ていて肩身が狭くなってくることこの上なしですが・・・。
初めて観たカトリーヌ・フロ作品。この作品での好演で気になる女優さんになりました。
メインの役ではないけれど、ここでも好演。
そんでもって、これは映画そのものがかなり笑える傑作コメディです。
あと彼女の出演作は、ちょっとシリアスな感じの「譜めくり女」もDVD化されましたね。早く観なくては!
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